長身の締まった体躯、さっそうとして精悍(せいかん)な面持ち。市民ランナーとして、いかにも歴戦のつわものといった雰囲気を漂わせている。まもなく54歳を迎えるが、年に3回はフルマラソン(42.195キロメートル)に出場。今も自己記録更新に挑み続ける。 しかし肺の3分の1は機能していない。腹部からは50個近いリンパ節が摘出されている。11年前に骨折した右足首も、リハビリテーションが不十分だったために万全ではない。そして、右側の睾丸(こうがん)も失われている。 大久保淳一(おおくぼ じゅんいち)は2007年、外資系の証券マンとして公私共に満ち足りていた42歳のとき、精巣がん(ステージ3の重症)を患い、そのがんは全身に転移していた。のみならず、その治療の副作用で間質性肺炎を発症。この病気になると、スポンジのように柔軟だった肺組織が線維化して発泡スチロールのようになり、その部分は酸素を取り込めなくなる