米本昌平他「優生学と人間社会」(講談社現代新書) 本書については、森山和道氏と加藤弘一氏の書評を続けて読む機会があり、これは面白いかもと思い買ってみたのだが、これは大変な本で、大袈裟に言えば、21世紀を生きる上で踏まえなければならない前提が多く含まれている。本書については、以前からじっくり取り組んだ文章を書きたいと思っていたのだが、どうしても考えをうまくまとめることができないうちに時間ばかりが過ぎてしまうので、とにかく記録として書き留めておく。それだけの価値のある本であることは保証する。 本書の帯にも書いている通り、「優生学」と聞いて誰もがまず思い浮かべるのは、ナチスの優生政策だろう。そして反射的に優生学というものを約半世紀前のナチスの政策と同一視し、タブー視したところで思考停止しがちである。しかし、そんなに単純なものではない。本書はまず、優生学の起源を明らかにすることで、「優生学といえば
2007年01月06日07:00 カテゴリ書評/画評/品評SciTech 書評 - 深海のパイロット 深海は宇宙以上に未知の世界であり、そして宇宙に勝るとも劣らぬほど面白い。 深海のパイロット 藤崎慎吾 / 田代省三 / 藤岡換太郎 そこまでは私も知っていたし、「メタルカラーの時代」のしんかい6500関連の記事などは食い入るように読んだのだが、その上新書フェチの私が本書を今まで見落としていたのは何たる不覚。 本書「深海のパイロット」は、しんかい2000(本書中では"2K")、そしてしんかい6500(同じく"6K")のパイロット--レトリック抜きの深海のパイロットたちが、その経験を通して深海を語った一冊である。三年前に出版された本であるが、今でもその内容は色あせていないし、今こそもっと読まれるべき一冊である。 目次 はじめに 第一部 深海には面白いエピソードがいっぱい (藤崎慎吾) 第一章
2007年03月09日15:30 カテゴリ書評/画評/品評SciTech 書評 - 地球の内部で何が起こっているのか? そのブルーバックスとガチンコな光文社新書の一つが、こちら。 地球の内部で何が起こっているのか? 平朝彦 / 徐垣 / 末廣潔 / 木下肇 404 Blog Not Found:書評 - 春宵十話 光文社新書の「主流化」は著しくて、最近は岩波新書やブルーバックスとガチンコのタイトルも珍しくない。 深海のパイロットが気に入った人は、本書も絶対に気に入るはず。 本書「地球の内部で何が起こっているか?」の主人公は、独立行政法人海洋研究開発機構 JAMSTECの誇る地球深部探査船「ちきゅう」。「深海のパイロット「」の主人公「しんかい6500」が世界一の潜水調査船であるのと同様、「ちきゅう」は世界一の地球深部探査船だ。 目次 http://www.kobunsha.com/book/
何だか一種不思議な感慨の中にいる。 先日朝日カルチャーセンターで 竹内薫と話した時、 竹内が、「学生の時、茂木がしきりに ニーチェとかワーグナーとか言っていたけれども、 それから丸くなって、社会と適合して、 でもまた今日ニーチェとかワーグナーとか 言うようになって、何だか昔に戻った みたいで安心したよ」 などと竹内に言われたが、 確かに、自分でも精神年齢、 というか参照する心の時季がどんどん前に さかのぼっているような気がする。 手元は朝起きてから夜眠るまで一部の 隙もないほど仕事で埋まっているが、シャワーを 浴びたり、歩いたり、ふと空を見上げたり する時に自分の中からわき上がってくる 思念が、ここのところ 思春期からずっと考えてきたことに 連なっている。 それとともに、現代社会で起こっている 様々なことが、まるで影絵のように少し 遠くにあるように見え、 そのようなものと直接関係をもたない
もう1つ、近年気になるのが、社会的格差の問題。書店でも目に入るのは、「下流」だ「負け組」だと、陰鬱な活字ばかり。本書『下流志向』も、あまり景気のいいタイトルとはいえない。 しかし、ちょっと待ってほしい。著者の内田樹さんをご存じだろうか。 いわずと知れた2000年代の超売れっ子であり、フランス現代思想を専門とする元祖・大学教授ブロガー(?)である。そんなウチダ先生による待望の「教育」本が、面白くないわけがない。しかも経営者セミナーでの講演がもとになっているので、昨今の教育問題をビジネスマンの視点から手早く理解するには、格好の1冊だ。 ウチダ先生がまず着目するのが、子供は勉強を、若者は労働を、自らの「意志」によって避けているという点である。それは「逃走」というより、積極的な「自己決定」だとさえいえるほどに。 そこから、サブタイトルの「学ばない子供たち」と「働かない若者たち」には、共通の根がある
書評家〈狐〉の読書遺産 [著]山村修 [掲載]週刊朝日2007年03月09日増大号 [評者]鶴見太郎 ■引き込まれるような読書の精神 良い書評の条件とは、その本の隠れた良さを引き出すことにある。当たり前のことではあるだろうが、いざ、これを実践するとなると、実は意外にむつかしい。思えば、まず良い本を選び出すことから、すでに書評家の仕事は始まっている。良い本を手にした、という感触がそのまま、その本について素直に自分が魅了される素地を作り、それが優れた書評へとつながっていく。 本書の著者は主として「文學界」を活動の場としながら、「狐」のペンネームで凝縮した達意の書評を送り続け、昨年56歳で亡くなった。翻訳・古典を含めた文庫本2点が毎回の軸となる。 死の年に樋口一葉が残した『通俗書簡文』と、高群逸枝のデビュー作となる『娘巡礼記』を対比させた「ふたつの二十四歳」、あるいは博学の天文学者・石田五郎が普
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