冬は、絵を描くのも寒くてしんどい。作業用のダウンパーカー、擦り切れたニット帽とマフラー、靴下二重履き、ヘッドフォン、花粉症用マスク、黒ブチ眼鏡で完全装備しても足元からの冷気は僕の身体を冷やしていく。水彩画で一番寒さが堪えるのは実際に筆を走らせるときではなくて、「水張り」という下準備のときだ。水張りとは、詳しくは省くけれど紙がボコボコになるのを防ぐための作業で(僕は水を貯めたシンクに紙を浸してから乾かすという男らしい手法を選択している)、水を使う。この時期、暖房もない台所で真夜中にこれをやるとたちまち身体が芯から冷えてしまうのだ。 (ざっくりと鉛筆で下書き) 僕は、高校に入って初めての夏が来る前に、他の部と同様、美術部でも幽霊部員になっていたのだけれど、画材無断拝借と画集、写真集、その他資料を借りるために部室に顔を出したときはこの「水張り」を手伝っていた。部活の終わる時間が近づくと、翌日以降
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