同行者のSさんが、意外にも澄んだその目を爛々と輝かせ、おもちゃをねだるような、物欲しそうな子供のような顔をして、僕にこう切り出した。 「私が仕事や友人関係のことで酷く落ち込み、思い悩み、暗い遠い目をして、日がな一日、ちっとも楽しいと思わない、スマホのゲームに明け暮れていた、無益で怠惰な生産性のない日々を送っていた、あの、毎日が子供の頃の夏休みの最終日のような、絶えず喉元に胃液がこみ上げてきては、自分でもわかる、苦みばしった顔をして、「はぁ、今日も何もしなかった。明日もきっと同じだろう。ずっと繰り返すのだろうか・・・」と、意気消沈、この生きる先に、なんの光明も見いだせずにいた、地の底で蠢いているような辛い辛いあの毎日・・・・・・」 止めてくれるなと、なおもSさんは続ける。 「とりあえず、塞ぎ込んでばかりいないで、自発的に気分を高揚させようと、図書館に行って、普段は読まない小説を借りて読んだり