50代半ばの由香は立ち寄ったカフェで、昔の恋人・拓と再会する。一瞬にして蘇る30年以上前の記憶。ふたりが過ごした時代は、学園紛争、ジャズ喫茶、三島由紀夫の自殺、反戦フォーク……そんなキーワードが並ぶ時代だった。 多感な10代後半にふたりは出会い、恋をし、大学受験へ。トランジスタラジオから聴こえてくる曲に夢中になり、会えない時は、便箋やレポート用紙に詩を書き、ポストに投函する。インターネットも携帯電話もない時代のふたりの日々を、現在の若い読者はどう感じるのだろうか? 過ぎ去った日々を美化することも否定することも、感傷過多になることもなく、受け入れるふたり。そこに現在のふたりの会話が交差する。これからを予感させる終わり方は鮮やかだ。50代の男女にとって希望の物語だと感じた。 ※週刊朝日 2016年6月24日号
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