【今週はこれを読め! SF編】21世紀の「ゴルディアスの結び目」、イーガン経由でアップデートされた『神狩り』 文=牧眞司 コウモリの群れがブラックホールにアタックを仕掛けている。 すべてを。 ブラックホールの深深深部(トリプル・ディープ)に。 狂気の深淵に。 飢えた漏斗(じょうご)に。 地獄の竈(かまど)に。 投げ込む。 歌え! 踊れ! 突入せよ! 突入せよ! 圧倒的なイメージ。山田正紀のSFについて語るうえで、斬新なアイデア、くっきりとしたテーマ、巧みなストーリーテリングにふれないわけにいかないが、それらはすべて事後的なことで、元にあるのは「見たことのない光景」ではないか。この作品集の表題作「バットランド」を読みながら、そう思った。山田さんは一枚の絵を成立させるため、アタリ線となる物語を組み立て、素材としてアイデアを盛りこみ、それがテーマを惹起する。そんな順番で作品ができているのかもしれ