「メアリー」と呼ばれた少年 1956年9月下旬のある日、ジョン・ホートン・コンウェイは大きなカバンを背負い、家を出発した。18歳の彼はやせ気味で、ボサボサの長髪。まるで「ヒッピーのはしり」のようだった。普段は裸足で歩き回っていたが、この日は一応ストラップサンダルを履いている。 コンウェイは汽車に乗り込み、リバプールからケンブリッジへ向かった。ケンブリッジ大学の学部生としての生活が待っているのだ。クルーを経由し、ブレッチリーで汽車を乗り換えた。移動時間は5時間ほどだった。 大学進学は自分を作り替える絶好のチャンスだ──。旅の途中、彼はふとそう思いついたという。 コンウェイは小学校時代、先生から「メアリー」というあだ名をつけられた。繊細で女性的なところが多い子供だったのだ。このあだ名のせいで、彼の学校生活は地獄同然となったらしい。 しかし、リバプールのホルト男子中等学校に進学すると、状況は変わ