昨年11月、ドナルド・トランプの当選をきっかけに、音楽ジャーナリズム一筋だった筆者は、これまで無視してきたヘヴィメタルの世界に飛び込んだ。そしてもう、後戻りするつもりはない。 時代の思想や出来事というのは、まるで天気のように音楽に影を落としたり、光を差し込んだりする。1967年の夏の盛り――サンフランシスコのHaight-Ashburyでは“サマー・オブ・ラブ”が花開き、ビートルズは『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』でサイケデリック文化を総括し、ほとんど神のような位置にまで押し上げていた。 まさにその頃、私は一枚のアルバムに出会った。『The Velvet Underground & Nico』。今でもおそらく、私の人生でいちばん好きなレコードだ。悲惨な喪失、凍てついた心、ハードドラッグ、荒々しいセックス。そんなテーマが次々と飛び出してくる。私は
