北朝鮮の若き最高指導者は新年の辞でも「人民生活向上」を誓ったはずだ。それがなぜ、中国との関係悪化でさらなる経済苦を招くだけの核実験に踏み切ったのか。遺体を乗せ、相次ぎ日本海岸に漂着した木造漁船にその一端を解く鍵が隠されている。(桜井紀雄) ■ ■ ■ 「水産部門から軍人や人民の生活向上の突破口を開こう」。朝鮮中央通信によると、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は昨年12月28日、朝鮮人民軍の水産部門幹部らを前に演説し、こうはっぱをかけた。 民生向上策として、金第1書記が特に力を入れているのが、水産部門の活性化で、昨年以来、水産事業所などの視察報道が目立つ。 軍の管理の下、外貨につながるイカやタラの漁が奨励され、多くの小型漁船が冬に入る前の荒れ始めた日本海にこぎ出していった。 一方、昨年10月以降、北海道や青森、秋田、新潟、石川、福井各県などの海岸に木造船が流れ着き、船内や周辺で遺体が相次ぎ