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チェリーパイの夜
50年近くひとりで生きてきた私が、自分の家族を持ちたいと思った。 金もなく独り身の私がニナにできるこ... 50年近くひとりで生きてきた私が、自分の家族を持ちたいと思った。 金もなく独り身の私がニナにできることといったら、配偶者ビザを与えることくらいだった。そのお礼と言ってニナは裸になったが、私が彼女を抱くことはなかった。ニナにしてみればこれはビジネスライクな契約だったのだろう。しかし私は対価としての体を拒むことで、そこにビジネスではない情を差し挟もうとしたのだ。それはニナにとって負担だったかもしれない。だが私はわずかでもニナに負い目を感じさせたかったのだ。 ニナは母国に家族がいた。親兄弟、祖父母、叔父叔母、従兄弟。あらゆる血縁が、中には血縁のないものまで、ニナの収入にぶらさがっていた。別にアジアの貧困を憂う気持ちはない。彼らがいたからこそ私はニナと出会い、法律上の夫、そして法律上の父になることができたのだから。 ニナには16歳になる娘がいた。名前はティナ。日本人とのハーフでありもちろん私生児だ
2010/04/09 リンク