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四十二客酔至理
昔,ある邑あり。その民は皆逸楽を好み,無事を営まず。 邑の中の人々,昼夜市に集まりて談義をなせども... 昔,ある邑あり。その民は皆逸楽を好み,無事を営まず。 邑の中の人々,昼夜市に集まりて談義をなせども,語るところは酒肴舞楽に偏り,世事を論ずることなし。 或る日,張甲という者,邑の中央に立ちて大言せり。 天地の理,何ぞこれを求むるに及ばん。酒を傾け,快楽に浸るこそ至道なりと。 衆人これを褒め讃えて手を鳴らし,皆曰く, まことに尤もなり。 かくて皆還りて臥し,何事をもなさざりけり。 また李乙という士あり。座に安んじて衆を招き,曰く, 人生は短し深慮遠謀に耽るは愚かの極みなり。ただ今日を歓び,明日もまた楽しむべしと。 往来の者どもその詞を称え合い,共に杯を交わす。されども彼らが交わす言の葉は常に空しく,実を伴うことなかりけり。 或る時,外つ国より一客ありて邑に至る。邑の様を巡りて窺い,何事か深遠なる理を見出さんと欲す。 客,心中に思えらく, この邑,何ぞ遊興にのみ耽り,理を尋ね求めざるか。 遂に