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寺子屋師匠 菊池三之亟事件控え 第三話 泥棒村その2 - 多摩川 健・・リタイアシニアのつれずれ・・時代小説
「兄上。何か!」その翌日の宵遅く、三乃丞が厠を使って井戸端から部屋へ戻ろうとする。木戸から入って... 「兄上。何か!」その翌日の宵遅く、三乃丞が厠を使って井戸端から部屋へ戻ろうとする。木戸から入ってくるあの男にまた出会った。顔を背け、奥の方向に行こうとする。間違いない。あの時お助けいただいた方徳様だ。思い切って三之丞は声をかけた。 「川越でお助けいただいた方徳様ではありませぬか」 男は、はっとしたように顔を上げた。間違いなかった。 「あの折はありがとうございました。川越在の友人を訪ねた帰り道に腹痛で。お助けいただいた菊池でございます」 三之丞の礼に、男はとぼけ顔で答える。 「おうおう。あの時の吾人か。確か寺子屋の師匠とか。ここであったか。旅の途中難儀をしておられる方を助けるのは、医師として当然ですよ」 眉の濃い角張った目の方徳。 「誰かお知り合いがこの横丁長屋に・・」 「はい。時々薬草の仕入れに江戸に参りますが、今日は飯能河原の村の、家族からの届け物を、ついでにおいとさんに置いて帰るところ
2024/04/01 リンク