巧みな「コラージュ」で浮かびあがる、芥川の人生の闇 デイヴィッド・ピースさん「Ｘと云う患者 龍之介幻想」｜好書好日

文：朝宮運河 写真：有村蓮 デイヴィッド・ピース作家 1967年、イギリス生まれ。94年、東京に移住。仕事のかたわら執筆した『1974 ジョーカー』で99年、作家デビュー。同作に始まる「ヨークシャー四部作」でノワール（暗黒小説）の旗手として注目を集める。敗戦直後の東京を舞台した犯罪小説『TOKYO YEAR ZERO』『占領都市 TOKYO YEAR ZERO Ⅱ』も話題を呼んだ。現在「下山事件」をモチーフにした「東京三部作」完結編を執筆中。2011年より東京大学文学部で教鞭を執る。 ――ピースさんは1994年から日本在住だそうですね。そもそも芥川とその文学に興味を持たれたきっかけは？ 新宿紀伊國屋の洋書売り場で、英訳版『羅生門』を見つけたのがきっかけです。とても面白くて、とりわけ「藪の中」に感銘を受けました。作家としてデビューする前の話です。その後『河童』の英訳本も手に入れて、そこに掲載