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「三体」柳下毅一郎さん書評 壮大で呆れるほど単純、これぞSFの原初のパワー|好書好日
SFは若い文学である。 「SFの黄金期は十二歳である」という言葉は、その幼稚さを示すものだと理解さ... SFは若い文学である。 「SFの黄金期は十二歳である」という言葉は、その幼稚さを示すものだと理解されることが多い。だが、それは同時にSFの魅力を伝える言葉でもある。SFは未来の文学だ。そして未来への無限の想像力を持てるのは若者だけである。日本SFの黄金時代が、日本の高度成長期と重なりあっていたのも偶然ではあるまい。 だから今、中国SFこそが世界でいちばん勢いある存在なのである。 劉慈欣の『三体』の登場は衝撃的だった。それは日本だけのことではない。アメリカでは二〇一五年、アジア人作家として、そもそも翻訳小説としてはじめて、アメリカSF界の最高賞とも言えるヒューゴー賞の長編部門を獲得している。バラク・オバマ前大統領からフェイスブックのザッカーバーグCEOまで、誰もが絶賛した面白さはどこにあるのだろう? ひとつには、シンプルで誰にでもわかるアイデアの力強さである。『三体』の主人公ナノテク研究者の
2020/07/15 リンク