イナミアの子猫／石岡琉衣

――事実は小説よりも奇なり。 この言葉は19世紀の詩人バイロンによる、『ドン・ジュアン』の作中の一文がもとになっている。 ミスターバイロンよ、そんな言葉を思いついたからには、あなたの人生はどれほど奇なるものだったのか、ぜひ聞かせてくれないか。フィクションを語りながら、「私の現実世界の出来事のほうがよっぽどスリリングだ……」などと苦々しい顔で執筆していたのか？ 「私、恐山のイタコのように降霊とかできないから。なんかあったの？」 ああ、クゥ先生は知らないのか。そういえば不眠、徹夜状態が続いていたから、幻覚を見る暇すらなかった。あれ？ 新入りの黒メガネ、久米ひろしはどこに行った。 「イナミアって場所を探しに取材に行かせたじゃない」 そうだった。ではクゥ先生だけには聞いてもらおうか。僕の身に起きた、頭がおかしくなりそうなある一週間の出来事を。残念ながら、面白おかしく脚色して伝えるだけの

[emiladamas]

「振り込め詐欺から強盗の範囲のどこかに今います。」の後編。