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山口裕之 敷居を越える――都市の形象たちにおける「想起(Eingedenken)」
1.遊歩 ある都市の中を歩くということは、異なる時間や空間が層をなして織り込まれたさまざまな形象を... 1.遊歩 ある都市の中を歩くということは、異なる時間や空間が層をなして織り込まれたさまざまな形象を身体で感じ取り、その記憶や意味連関の重層的なテクスチャーの中へと入り込んでゆくことである。「街道を歩いてゆくか、飛行機でそのうえを飛ぶかによって、街道の発揮する力は異なる。同様に、テクストを読むか、それを書き写すかによって、テクストの発揮する力は異なる。空を飛ぶ者に見えるのは、道が風景のなかを進んでゆくさまだけであり、彼の目には、道はまわりの地勢と同じ法則に従って繰り広げられてゆく。道を歩いてゆく者だけが、道の支配力を知る。そして、飛行者にとっては単に伸べ広がった平野にすぎない、まさにあの地形に、道が号令をかけて、遠景や、見晴らし台や、林間の空き地や、すばらしい眺望を、道の曲がりくねりごとに呼び出すさまは、ちょうど指揮官が兵士たちを前線から召喚するのに似ているが、そうしたさまを経験するのも、歩
2008/09/17 リンク