現状を痛烈に批判した『第二の性』は、1949年に発表されると即座にベストセラーとなり、論争を巻き起こした。本書の中でシモーヌ・ド・ボーヴォワールは、歴史的な例を用いて社会がどのように変化して女性を第二級の市民にしたのかを示した。 この本が出版される5年前までフランスでは女性に投票権が与えられていなかったことを考えると、ボーヴォワールの主張を裏付けるものはたくさんある。論争がないわけではなかったが、ボーヴォワールは、確固たる自分を持った女性だった。哲学者のジャン・ポール・サルトルのパートナーであったが、二人が結婚したり同居することはなく、ボーヴォワールはレズビアンとしての恋愛も秘密にしなかった。 しかし何より、ボーヴォワールの『第二の性』が画期的な作品とされる所以は、ジェンダーアイデンティティを探求したことにある。男と女は、成長するにつれて女らしくまたは男らしく行動するようになっていくのだと