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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (146)

  • 『病気はなぜ、あるのか』→適応戦略と進化のミスマッチ

    風邪をこじらせたとき、とにかく体温を下げるのはダメで、頭を冷やして安静にしておく。これは知ってた。だが、処方された抗生物質は、症状が治まったとしても「すべて飲み切る」。これがいかに重要かは知らなかった。 なぜなら、半端な服用は、抗生物質に耐性がある細菌の生き残りに手を貸していることになるから。このとき身体は、細菌のサバイバル戦略の最前線になっているのだ。発熱への対処も同様で、細菌にとって不適切な環境を生み出しているのに、解熱剤で下げてしまっては元も子もない。これらは進化医学からの知見で、身体の防御機能と細菌の適応戦略になる。 「病気は、どのように(How)して起きるのか」については臨床医学の世界になる。もちろん病気の原因もそこで追究はされるものの、その病気を引き起こしている至近要因までになる。そもそも、「その病気がなぜ(Why)あるのか」という究極要因まで踏み込むのが、進化医学になる。発熱

    『病気はなぜ、あるのか』→適応戦略と進化のミスマッチ
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    fiblio 2015/11/19
  • 「小中学生にお薦めする○冊」の欺瞞と、それでもオススメする10冊

    「小中学生にお薦めする○冊」を見かけるが、舐めてるだろ。それは大人のエゴイズムの押し付けにすぎぬ。選者のノスタルジックなブックリストであって、今それを手にする人を想像していない。そんな大人の自己満足を、子どもは正しく見抜いてる。 どうしてそんなに言えるのか? わたし自身が薦めてきたから。『モモ』であれ『星の王子さま』であれ、読まない。考えてもみろ、学校だけでいっぱいで、動画やラインやゲームを無理やり詰め込んでいる生活に、『モモ』読む時間があるものか。それな! それこそがエンデが描いたカリカチュアなのだが、気づくためには読むしかないという自家撞着に陥る。 さもなきゃ逆に考えろ、「愛読書はエンデです」なんて言う小学生がいたら気になるだろ。ふだん何してるの? ポーズなの? 気なら、気で親の顔が見たい。どうやって培養したのか知りたい。「愛読書は西村寿行」だったわたしには、得がたい世界だ。 お薦

    「小中学生にお薦めする○冊」の欺瞞と、それでもオススメする10冊
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    fiblio 2015/11/12
  • 『思考の技法』はスゴ本

    哲学するための装備を整え、著者自身の戦歴を踏まえながら自分のモノにする一冊。カタログ的なツール集というよりも、もっと大掛かりで強力な、知の増幅装置に近いイメージ。 「意味」「進化」「意識」「自由意志」といった、手ごわいテーマに対し、手ぶらで対峙しないための装備と考えればいい。オッカムの「かみそり」ではなく「オッカムのほうき」、藁人形論法ではなく「グールドの二段階藁人形」など、一般の思考道具よりも威力のある、77もの装備が手に入る。 たとえば、必要以上に多くの仮説を立てるべきでないとするオッカムの「かみそり」よりも、「ほうき」の方がより凶悪だ。なぜなら、自説に都合が悪いエビデンスや統計情報を掃き出して「なかったことにする」ほうきだから。著者ダニエル・デネットは、暗闇で犬が吠えなかったことが手がかりとなった、シャーロック・ホームズのあの推理を思い出させる。知的に不誠実な人が、不都合な事実を隠し

    『思考の技法』はスゴ本
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    fiblio 2015/09/10
    「知力が欲しいと手にしたが、あまりの力に呑まれそうになる、強力な一冊。」
  • 『絶深海のソラリス』がスゴい

    前半ライト、後半ヘビー、ラスト絶望。帯の「絶望率100%」は伊達じゃない。瞬きどころか、呼吸を忘れて読み耽る。ちがうだろそうじゃないだろ、やめろやめてくれと叫びながら、それでも頁は止まらない。わたしの願いを蹂躙し、物語は容赦なく進む。 ラノベを読むのは、なかった過去やありたい日常を、妄想で塗りつぶすため。だから、指導教官の主人公が、いろいろ問題を抱える訓練生とイチャコラする前半に、ほのぼのする。表紙の女の子は幼なじみで、犬みたいにすりすりしてくる(いい匂いがする)。それとは別に、キャラ紹介で真っ先に出てくる、クロエという女の子が可愛い。ツンデレエリート+隠れマゾで、嗜虐心と悪戯心の両方を快く刺激してくれる。ロリ巨乳、無表情美少女、セクシー先輩を翻弄し翻弄される、典型的なラノベを満喫できる。 しかし、わたしはまちがっていた。予備知識ゼロ、高い評判だけで読み始めたのが、過ちだった。 近未来の日

    『絶深海のソラリス』がスゴい
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    fiblio 2015/08/31
    「『絶深海のソラリス』がスゴい」がスゴかった……。ネタばれせずに絶望を表わす構成の妙。
  • 決して人前では読まないでください『ワンダー Wonder』

    まちがえた、読むんじゃなかった電車の中、ずっと涙が止まらない。 わたしは、ときどき、失敗する。『シュタインズ・ゲート』といい、『さよならを待つふたりのために』といい、琴線ふるわせ涙腺ゆるめる傑作を、車内で読むという間違いだ。朝のラッシュで泣きじゃくるオッサンは、相当キモくて通報レベルだと自分でも思う。 後から振り返ると、『Wonder ワンダー』の帯の惹句の「きっと、ふるえる」を甘く見てた。ええもう、たっぷり震えましたとも。理由は、緊張だったり恐怖だったり、怒りや悲しみもある。この主人公に移入するのは、かなり難しいが、彼や周りの人たちの感情はすぐに、まっすぐに伝わってくる。なかでも、いちばんわたしを震わせたのは、感動、それも「わたしの心の中にあるやさしさ」を見つけた感動なり。 ふつう、「やさしさ」は目に見えない。誰かを思いやる言葉や行動に、わたしが感じるもの。しかし、このを読みながら、登

    決して人前では読まないでください『ワンダー Wonder』
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    fiblio 2015/08/07
    「正しくあるよりも、親切であれ」
  • 90億人が食べていくために『食』

    」の入門書にして総合書、これを最初に読みたかった。 著者はジョン・クレブス、動物行動学の世界的権威であるとともに、英国品基準庁の初代長官を務め、オックスフォード大学の学長でもある。すごい経歴は、読めばすぐ納得できる。いわゆる教養のある人なのだ。「教養のある」とは、難しいことを分かりやすく、分かりやすいことを深く、深いことを面白く書ける人のこと。 書は、「」について、サイエンス、歴史文化、環境の視点から多角的に、かつコンパクトに描き出す(これ重要)。具体的には、ヒトの進化を基礎にした歴史、味覚の成り立ちから文化、発がん性物質やBSEといったに潜むリスクとメリット、そして栄養学の歴史と現代社会の問題を、新書200ページにまとめている。 このテーマは、いくらでも難しく厚くできるのに、簡潔・明快にしているのが凄い。これは、教養のある人が書いた、1冊で知るためのなのだ。だから

    90億人が食べていくために『食』
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    fiblio 2015/08/06
  • 銃は世界を変えてきた『銃の科学』

    実弾を撃ったことがある。ベレッタという拳銃だ。発射のたびに伝わってくる炎とインパクトと熱気から、銃を撃つとは要するにコントロールされた爆発なんだと実感した。この体感を、メカニズムと歴史から説明したのが書になる。 著者は元自衛官で、銃のエキスパートでもある。自身の経験を織り交ぜながら、銃の起源と歴史を紹介し、さまざまなタイプの銃の構造と目的の違いを明らかにし、弾薬、雷管、薬莢など弾丸の話、弾道学の基礎を説明する。いわば銃の入門書ともいうべき一冊で、同著者による『狙撃の科学』や『重火器の科学』そして『拳銃の科学』など、銃のシリーズにつながっている。 いちばん興味深く読めたのは、銃の歴史がそのまま戦術の歴史になっているところ。火竜鎗やマドファといった原始的なものは、とにかく敵の方向に弾を飛ばせばいいというもので、狙って命中させられるような代物ではなかったらしい。銃身や撃鉄、弾込めの方式などの改

    銃は世界を変えてきた『銃の科学』
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    fiblio 2015/07/08
  • 男子は女子に絶対勝てない『からかい上手の高木さん』

    辛いことも、恥ずかしいことも、過ぎてしまえばいい思い出になるというが、あれは嘘だ。未熟ゆえの失敗、若いからと言い訳できない態度、許されない/許せない言葉など、重石をつけて封印してある。今でも触れるだけで血を流す思い出は、アニメや小説で育てた偽の記憶で上書きする。 これが、何かのはずみでうっかり思い出してしまうと、大変なことになる。恥ずかしさと甘酸っぱさにもみくちゃにされ、いたたまれなくなる。後悔に殺されるとはこういうこと。 『からかい上手の高木さん』は不意打ちだった。タイトル通り、好きな子にちょっかいを出すというラブコミなのだが、これが無限にニヤニヤできる。高木さんの「からかい」の手管が絶妙で、隣の席の「からかわれ」るほうの西片くんは掌のナントカ状態となっている。 「放課後ふたりで腕ずもう」とか「体操服を交換する」、「缶ジュースまわし飲み」「なんでもないことを手紙で伝えてくる(しかもハート

    男子は女子に絶対勝てない『からかい上手の高木さん』
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    fiblio 2015/06/25
  • 美は、見る人のなかにある『美しい幾何学』

    これを紹介するのは、とても簡単で、すごく難しい。 というのも、簡単なのは、これは「見る数学」だから。ただ眺めているだけで、その美しさが伝わってくるから。教科書ならモノクロで印刷される定理や図形を、鮮やかなモダンアートにして魅せてくれるから。オイラー線やサイクロイド、シュタイナーの円鎖など、単体でも美しいフォルムをカラフルにリデザインしており、ページを繰るだけで楽しくなる。ひまわりやオウムガイの螺旋に見られる、形のなす必然に心が奪われるだろう(たとえフィボナッチ数の話を知っていたとしても)。 同時にこれは、「知る数学」でもある。だから、伝えるのは難しい。直感だけで受け取った美には、そのパターンを支えるシンプルな定理が存在し、かつそれは、なるべくしてそうなっていることに気づかされる。この必然性を知るためには、やはり定理を解き、式を理解する必要がでてくる。編集方針なのだろう、数式を控えめに、なる

    美は、見る人のなかにある『美しい幾何学』
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    fiblio 2015/06/05
    「数学は美しい、だがその美は、見る人のなかにある。」
  • 医学は科学じゃないんだよ『医学と仮説』

    おもしろい。ツッコミどころはあるが、究極原因にこだわる科学と、因果と相関に注目する医学の違いか。 タバコと肺がん、O-157や水俣病の事例を元に、医学的根拠とな何かを考えさせる一冊。同時に、パンデミックSFによくある、「パニックを避けるという口実で、責任のがれのため公表を伏せる政府」の構造的欠陥が放置されていることも、よく分かる。フィクションではない、かつて起きたことで、これからも大いにありうる未来が見える。 著者が攻撃するのは、要素還元主義だ。いわゆる、「分ければ分かる」というやつ。原因物質を究明し、人体へ影響するメカニズムが解明できる/すべしという立場に、真っ向から勝負する。そして、要素還元主義はしばしば、科学の名において悪用されていると説く。 たとえば、タバコと肺がんの関係。因果関係についてはアメリカ政府の報告書"Smoking and Health (1964)"で証明されているに

    医学は科学じゃないんだよ『医学と仮説』
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    fiblio 2015/06/03
  • 科学の歩き方『サイエンス・ブック・トラベル』

    何が君の幸せか? それは、何を知って喜ぶかによる。知ることは、世界を拡げること。この喜びを分からないまま終わる、そんなのは嫌だ。 書は、科学の世界を歩くためのブックレビューだ。第一線の30人が選んだ100冊は、眺めるだけで見晴らしが良くなる。まずは、パラパラしながら興味を惹いたを選んだ「人」を探そう。その人こそが、世界を広げ、知る喜びの先達になる(を介して、人を探す)。 ありがちな、「さわりを解説してお茶をにごす」タイプではなく、「なぜこれを選んだのか」について、そのとの関わりも含め赤裸々に語りかけてくる。科学に対し、無味乾燥な数式や研究というイメージを抱いて読んだなら、「知りたい」という熱い思いと、「どうやって伝えよう」というもどかしい思いに揉まれるだろう。 たとえば、講談社ブルーバックスの編集会議。7名の編集者が月1に集まる企画会議なのだが、そこで「通す/通さない」を決めるのは

    科学の歩き方『サイエンス・ブック・トラベル』
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    fiblio 2015/05/29
  • レイプの遺伝子『暴力の解剖学』

    もちろん、レイプの遺伝子なんてものはない。だが、レイプは「遺伝」するのかという問いには、非難と議論の渦中から、様々な応答がなされている。 たとえば、『人はなぜレイプするのか』[レビュー]は進化生物学の観点から解き明かす。結論からいうと、養育の投資量の男女差になる。男は養育の投資量が相対的に少ないため、繁殖のため多数の相手に関心を向ける。一方で女は、妊娠、出産、育児に多大な時間とエネルギーを費やされるため、男選びに慎重になる。このセクシャリティの差が、レイプの究極要因だというのだ。 ただし、レイプそのものが適応かどうかについては判断を保留し、フェミニストの立場からの「学習理論」を紹介することで、バランスを取ろうとする。すなわち、レイプとは男性位の歪んだ文化によってもたらされたという立場だ。挑発的な表紙とタイトルとは異なり、慎重にロジカルに議論を整理している。 一方、『暴力の解剖学』は大幅に

    レイプの遺伝子『暴力の解剖学』
  • 『ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう』はスゴ本

    意識は科学で説明可能か? このとんでもなくハードな問題に突入する。ギリギリ捻られる読書体験を請け合う。 著者は現役の哲学者、意識という現象を自然科学的な枠組みのもとで理解するという問題(意識のハード・プロブレム)に、真っ向から取り組んでいる。「物理主義」や「クオリア」、「哲学的ゾンビ」「意識の表象理論」を駆使して、科学・哲学の両方に跨がる難問に挑戦する。[wikipedia:意識のハード・プロブレム]に興味がある方は、ぜひ手にして欲しい。深く遠いところまで連れて行かれるぞ。 ハードがあるなら、イージーもある。流行りの認知科学にありがちな、MRIやCT、電気パルスを用いて、脳状態と意識経験の相関を明らかにする研究だ。例えば赤い色を見たとき、脳のどの部位がどのような状態になっているかを解明する問題で、これが意識のイージー・プロブレムになる。怪しげな脳科学者が、「脳はここまで解明された!」と宣っ

    『ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう』はスゴ本
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    fiblio 2015/05/18
  • 人生を面白くする一冊『人生ドラクエ化マニュアル』

    人生を難しくしているのは私なのだから、面白くするのも私だ。限界を決めているのは自分だから、破るのも自分だ。そのやり方を指南するのがこれ。 しがらみ・ローン・世間体に挟まれて、溶けかかった人生にとって、いい電撃になった。さらっと読めるくせに、忘れていた情熱を盛大に煽ってくれる、しかもドラクエを燃料にして。 よくある「人生で大切なことはゲームで学んだ」的なライフハックのコピペ集かと思いきや、より構造化されたマニュアルとなっている。「人生=ドラクエ」に喩えるだけでなく、その喩えからのズレこそが、人生をより面白くさせていることに気づかせてくれる。現実逃避のためのゲームが、人生をブーストしてくれるのだ。 たとえば、人生(という名の)ゲームにおける敵は、目標(=夢)を設定した瞬間、自動生成されるという。この「敵」とは、目標の前に立ちはだかる障害となる人になる。面白いのは、ただ「たたかう」ことで倒すだけ

    人生を面白くする一冊『人生ドラクエ化マニュアル』
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    fiblio 2015/05/12
    出版することさえドラクエ化してて、しかも元エニックス社員のヒトが書いているというところも良いよね。「覚醒せよ! 人生は命がけのドラゴンクエストだ!」
  • 夏目漱石『こころ』の次に読むべき一冊

    とある女子高生が、国語の授業をきっかけに『こころ』を読んだとする。拒絶から同化まで、彼女の反応は想像にお任せするとして、次にお薦めする一冊は何だろう? ……というテーマが、次回のスゴオフ。「スゴオフ」とは、を持ち寄ってお薦めしあうオフ会なのだが、詳しいことはfacebook[スゴオフ]をご覧くだされ。もちろん、お薦めする作品は、に限らない。映画音楽、コミック、ゲーム何でもござれ。 現国(なのか最早?)のお伴として、読書感想文の定番として、『こころ』は有名になりすぎた作品だ。いまだに「Kが自殺した当の理由」とか「実は先生は死んでない」「あんなの、そもそも恋じゃない」といった挑戦的なネタが定期的に上がってくるのはその証左。映画漫画で扱われたことで、未読でもなんとなく知っているという方も多いのではないだろうか。おかげで、ストーリーを語ってもネタバレ扱いされない、珍しい小説でもある

    夏目漱石『こころ』の次に読むべき一冊
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    fiblio 2015/05/08
    「作品そのものよりも、それを読んでいる(知っている)前提で語れるって、より深く広く豊かな土壌があるようなもの。」
  • おもわず惹き込まれる一行目から、深々と突き刺さる一句まで「決めの一行」のスゴ本オフ

    好きなを持ちよって、まったり熱く語り合う、それがスゴオフ。他の読書会と比べると、収穫高がケタ違い。を介して人を知り、人を介してに会うオフ会なり。もりもり積読山が殖えるだけでなく、既読も再読したくなる。気になる方は、[facebookスゴオフ]をチェックしてね。 いつもは、「歴史」とか「と犬」といったテーマを予め決めておき、それに沿ったお薦めをプレゼンするのだが、今回は趣を変え、「決めの一行」でやってみた。すなわち、「この出だしにハマった」とか、「この決めゼリフに撃たれた」など、紹介したい一行(一句、ワンパラグラフ、一言、隻句、いちフレーズ)が最初にあって、それを基点に紹介をするという仕掛け。実況tweetまとめは、[好きなの心の残った1行を紹介する「キメの1行」のスゴオフまとめ]をどうぞ。ここでは、画像+コメント+一覧の形でご紹介。 せっかくだから張り出してみたら、壮観壮観

    おもわず惹き込まれる一行目から、深々と突き刺さる一句まで「決めの一行」のスゴ本オフ
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    fiblio 2015/04/26
  • 読むほどに酔うほどに『不穏の書、断章』

    読むほどに酔うほどに、あの日の夢が重なってくる。 わたしの一番ダメなところに潜り込んでくるのが、フェルナンド・ペソア。試みに、どこかの頁をあけてみるがいい。どの頁でもいい、簡潔に記された片言にワシ掴みにされる。 文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけで十分でないことの告白である 私はひたすらやり直すことで人生を過ごしている だが、どこからやり直すのか 凡俗の人間は、たとえ人生が辛くても、少なくとも人生を考えないから幸せだ。人生を外から生きること、ただ日々を生きること、犬やがしているように、これが普通の人がしていることだ。そして、人生とはこのように生きるべきなのだ。や犬と同じように満足して生きたかったならば。考えると壊れてしまう。考えることは、解体することだからだ。 世界の虚構性に気づき、自分の中の空白を自覚したことはあるだろう。リアルタイムに現実を更新することで、ようやく認識してるフリ

    読むほどに酔うほどに『不穏の書、断章』
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    fiblio 2015/04/05
  • 駅を見る目が一変する『駅をデザインする』

    出口は黄色、入口は緑、丸の内線は赤い○。何気なく目にしている駅案内をデザインしたのが、この著者だ。 著者は、地下鉄の初乗り30円だった1972年から、駅の公共空間における問題解決のデザインを進めてきた。書は、その豊富な事例とともに、彼自身の熱い思いを受け取るだろう。 そのデザイン思想は、「サインとはメディアである」の一言にまとめられる。そして、このメディアを、「案内サイン」と「空間構成」の2つの方向性から説明する。すなわち、パブリックな空間における、提供者と利用者のコミュニケーションを図る際、「言葉」に相当するのが案内サインであり、「場面」に相当するのが空間構成だというのだ。 「案内サイン」の事例は、営団地下鉄(今は東京メトロ)での改善になる。まず、多様な形式の案内表示を統一し、シンプルな記号体系にまとめる。その上で、乗車系・降車系のそれぞれの利用者動線に沿った組み合わせで提示する「サイ

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    fiblio 2015/03/31
  • 死を効率化せよ『医師の一分』

    「死を効率化すべき」という世になるのかも。 命には値段がある(一人一年、一千百万円)。「優先すべき命」とそうでない命がある(子供・労災を優先、自殺未遂・暴走族は後)。こうした音は、トリアージのような切迫した状況だと見えやすいが、普通は病院の壁の向こうにある。ひたすら死を先送りにしようとする現場では、「もう爺さん寿命だから諦めなよ」という言葉が喉元まで迫ったとしても、口に出すことは許されない。 だから、これを書いたのだろう。がんの専門医として沢山の臨終に立ち会ってきた著者が、現代医療の偽善を批判する。自己決定という風潮を幸いに判断を丸投げする医師を嘲笑い、90過ぎの老衰患者に、点滴+抗生物質+透析+ペースメーカーまで入れるのは、当に「救う」ことなのか?と疑問を突きつける。 毒舌を衒ってはいるものの、ナマの、辛辣で強烈な批判は、わたしが死ぬ際の参考になる。他人に振りかざしたなら「不謹慎」で

    死を効率化せよ『医師の一分』
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    fiblio 2015/03/07
  • 古典は、頭を鍛え、社会を学ぶ、最強の格闘場だ『闘うための哲学書』

    手に汗握る、言葉による殴り合い。 哲学書をダシに、理想主義と現実主義が、足を留めて殴りあう。丁々発止が凄まじく、知的興奮は否が応でも漲ってくる。哲学とは対話を通じて考え抜く、動的な行為である。静的な書物とは、薪であり、燃料であり、知的な土俵なのである。なかでも古典は、時代のフィルターを経て結晶化されている。現代の価値観から裁定するのではなく、現代の問題に引き付けて、どこまで説明原理が可能かを模索することにより、古典は、最高の爆薬になる。 ブックガイドとしても優秀だ。二人の現役哲学者が、プラトンから和辻哲郎まで、22人22冊の哲学書を引用し、「いま」「ここ」の問題に実践的に適用する。非常に面白いのは、理想主義の小川仁志と、現実主義の萱野稔人とで読みが異なってくるところ。アクチュアルに読む、とはどういうことか、実例をもって示してくれる。 たとえば、カント『永遠平和のために』を俎上に乗せ、「平和

    古典は、頭を鍛え、社会を学ぶ、最強の格闘場だ『闘うための哲学書』
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    fiblio 2015/01/28