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ブックマーク / www.webchikuma.jp (19)

  • 〈1〉富野少年はいかにしてアニメーション監督になったか|富野由悠季論|藤津 亮太|webちくま

    富野由悠季とはどんなアニメーション監督か。「演出の技」と「戯作者としての姿勢」の二つの切り口から迫る徹底評論! 書籍化にさきがけて論の一部を連載します。 今回からはシリーズ「富野由悠季概論」。富野由悠季監督の経歴を時代背景とともに振り返り、アニメーション監督として果たした役割に迫ります。 (バナーデザイン:山田和寛(nipponia)) 宇宙との出会い 現在、アニメーション監督という存在が広く当たり前の存在として世間に認知されている。しかし、このような認知を得るまでには、それなりの長い時間が必要であった。そしてその中で大きな働きを果たしたひとりが、富野由悠季監督である。 富野の経歴を簡単に振り返ってみよう。 アニメーション監督・富野由悠季は1941年11月5日、三人兄弟の長男として神奈川県小田原市に生まれた。名は富野喜幸。富野家は代々「喜」の漢字を継いでおり、喜幸の「喜」の字もそこに由

    〈1〉富野少年はいかにしてアニメーション監督になったか|富野由悠季論|藤津 亮太|webちくま
  • 序 「アニメーション監督」としての富野由悠季を語りたい|富野由悠季論|藤津 亮太|webちくま

    機動戦士ガンダム、伝説巨神イデオン、Gのレコンギスタ……。数々の作品を手がけて熱狂的ファンを生み出してやまない富野由悠季とはどんなアニメーション監督か。「演出の技」と「戯作者としての姿勢」の二つの切り口から迫る徹底評論! 書籍化にさきがけて、論の一部を連載します。  (バナーデザイン:山田和寛(nipponia)) アニメーション監督として語るための2つの切り口 アニメーション監督・富野由悠季について考えたい。ここで重要なのは、この言葉で比重がかかっているのは「アニメーション監督」のほうで、決して「富野由悠季」個人のほうではない、ということだ。富野由悠季という「アニメーション監督」は、その存在感の大きさに比して、十分に語られないうちに長い時間が経ってしまった。 富野は、TVや新聞雑誌などマスメディアに登場することが多いアニメーション監督だ。人気者といってもいいだろう。書籍に関しても、批評

    序 「アニメーション監督」としての富野由悠季を語りたい|富野由悠季論|藤津 亮太|webちくま
  • 「フランス現代思想」以後を読む|ちくま新書|宇野 重規|webちくま

    フーコー、ドゥルーズ、デリダら「現代思想」の巨星なき後に続く、現代フランス哲学の展開を一望する渡名喜庸哲さんの新著『現代フランス哲学』。政治思想史・政治哲学研究者の宇野重規さんによる書評を、PR誌『ちくま』10月号より転載します。 『現代フランス哲学』というタイトルを読んで、何を想像するだろうか。あるいは世代によって違いがあるかもしれない。フランス哲学といえば、サルトルの実存主義を思う人もいるだろう。多いのはレヴィストロースの構造主義から、フーコー・デリダ・ドゥルーズの三人を中心とするポスト構造主義までの、いわゆる「フランス現代思想」ではなかろうか。日においても、これまで多くの優れた解説書が出版されてきた。 しかしながら、そこで当然に生じる疑問があるのではないか。現代フランス思想とは、これらの思想的潮流に尽きるのだろうか。あるいは、これら「現代思想」のさらに後の展開はないのだろうか。評者

    「フランス現代思想」以後を読む|ちくま新書|宇野 重規|webちくま
  • 【第157回】「ジャニーズ問題」が暴き出したもの|世の中ラボ|斎藤 美奈子|webちくま

    ただいま話題のあのニュースや流行の出来事を、毎月3冊の関連を選んで論じます。書評として読んでもよし、時評として読んでもよし。「を読まないと分からないことがある」ことがよく分かる、目から鱗がはらはら落ちます。PR誌「ちくま」2023年6月号より転載。 四月一二日、元ジャニーズJr.のメンバーだった男性が自らの被害体験を実名で証言。ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏の性的虐待事件が波紋を広げている。 喜多川氏については「週刊文春」が1999年に少年たちへの性的虐待を「セクハラ」と報じ、名誉毀損で訴えられるも、東京高裁は「セクハラ」に関する記事の重要部分は真実と認定した(2004年に判決が確定)。また今年三月には、この件を告発したイギリスBBCのドキュメンタリー番組が放送されている。 同様の事案として想起されるのはカトリック教会の性的虐待事件である。02年にアメリカのボストン・グロ

    【第157回】「ジャニーズ問題」が暴き出したもの|世の中ラボ|斎藤 美奈子|webちくま
  • ふたつの声が交わるところ|ちくま文庫|四元 康祐|webちくま

    PR誌「ちくま」2022年9月号より、山崎佳代子『そこから青い闇がささやき』について四元康祐さんのエッセイを公開いたします。戦時下の旧ユーゴスラヴィアで書かれた書について、戦争について、山崎佳代子さんの詩について。ぜひお読みください。 2004年夏、ドイツからの一時帰国中に立ち寄った池袋の書店。1冊のの表紙に目を奪われた。ふたりの女の、4つの切れ長の目が、1組ずつ縦に並んでこっちを見ていた。それぞれの顔を真横に寝かせ、ぴったりと重ね合わせて。上の女は頭を左に、下の女は右に。ふたつの顔を隔てるように横書きされたタイトルは、 『そこから青い闇がささやき』。 初めて目にする著者名だったが、その表紙だけで十分だった。詩の普遍と未知の異国性、ふたつの相反する力が苛烈に鬩ぎ合っているのを感じとるには。その夏、僕は生れて初めて外国の詩祭に参加することになっていた。旧ユーゴスラビアのマケドニアという国

    ふたつの声が交わるところ|ちくま文庫|四元 康祐|webちくま
  • 『免疫学者が語る パンデミックの「終わり」と、これからの世界』、「はじめに」を全文公開します|単行本|小野 昌弘|webちくま

    「第7波」の感染拡大を受けて、『免疫学者が語る パンデミックの「終わり」と、これからの世界』の「はじめに」を全文公開します。このを書いたのは、免疫学者の小野昌弘さん。「はじめに」には、「ワクチン接種が進めばパンデミックも終わると期待していた人は、なかなか「終わり」が見えてこないこの現実に落胆しているのではないでしょうか」と書かれています。「コロナ感染の再拡大、もう勘弁してくれ」という方にも、おすすめの一冊です。 はじめに 2020年の春に新型コロナウイルスのパンデミックがはじまって以降、世界は淡い期待と失望、楽観と悲観のあいだを行き来してきました。流行が終わるたびに、これでパンデミックも収束するだろうという期待が高まりましたが、ほどなくして新たな変異株が現れ、急速な感染拡大が起きて、多くの人が亡くなってきました。 パンデミックがはじまってからの最大の変化は、新型コロナウイルスのワクチンが

    『免疫学者が語る パンデミックの「終わり」と、これからの世界』、「はじめに」を全文公開します|単行本|小野 昌弘|webちくま
  • 第13回 あなたの人生を阻害(そがい)する親という存在について|十代を生き延びる 安心な僕らのレジスタンス|鳥羽 和久|webちくま(1/2)

    寺子屋ネット福岡の代表として、小学生から高校生まで多くの十代の子供たちと関わってきた鳥羽和久さんの連載第13回。「あなたのため……」と言ってるけど、親が当に心配しているのは誰のため? この連載は大幅に加筆し構成し直して、『君は君の人生の主役になれ』(ちくまプリマー新書)として刊行されています。 刊行1年を機に、多くの方々に読んでいただきたいと思い、再掲載いたします。 親は自分の不安をあなたのせいにする 受験直前のこの時期に三者面談をしていると、「うちの子がもう心配で、心配で……」と嘆きながら、わざわざ自己評価を下げるような声掛けをして子どもの足を引っ張る親を目の当たりにすることがあり、ほんとに困ったなぁと思います。 それにしても、親って自分のことでもないのに、何がそんなに心配なんでしょうね? あなた自身よりも親の方がずっと、あなたのことを心配しているあの感じって、いったい何なんでしょうか

    第13回 あなたの人生を阻害(そがい)する親という存在について|十代を生き延びる 安心な僕らのレジスタンス|鳥羽 和久|webちくま(1/2)
    florentine
    florentine 2021/12/25
    これ、みんなに読んでほしい! 実体験として凄くよくワカル。
  • マヤ文明の驚くべき天体観測と暦の話|ちくまプリマー新書|渡部 潤一|webちくま(1/4)

    マヤ文明の人たちが考えた宇宙は、天を13階層、地上を9階層に見立てて、大地は四つの神で支えられています。 数字も特殊で、二十進法になっています(図2)。十進法の倍ですから、ある程度、合理的ではあります。 「0」を表す記号は特徴的ですが、1からあとは単純な点と線で表されます。 1から4までは点の数で表され、5になると横棒になり、6から先はその上に点を加えます。10は5の横棒が2です。11からは、この2の横棒の上に点が加えられ、15は横棒が3、16からはその上に点が増え、そして、20は「0」を表す記号の上に点が一つです。 この20の上の点は1つで20を表していますので、30は横棒2(10)の上に点が一つです。そして、40は「0」を表す記号の上に点が二つです。 このように、数が20増えるごとに特徴的な「0」が出てきて数字表記が単純化されるので、二十進法と考えられているわけです。 太陽暦と

    マヤ文明の驚くべき天体観測と暦の話|ちくまプリマー新書|渡部 潤一|webちくま(1/4)
  • 第14回:湯浅年子|彼女たちの戦争|小林 エリカ|webちくま

    PR誌「ちくま」の2020年の表紙を飾り、多くの反響を呼び起こした「彼女たちの戦争」が、場所をwebに移して新たにお目見えします。歴史のなかで、女性であるがゆえに脇に押しやられながら、その才能をたしかに輝かせた女性たちの闘いの軌跡。 物理学を志し、日からフランス、パリへ渡りコレージュ・ド・フランス原子核化学研究所で研究した湯浅年子。女であることに、日人であることに、戦争に、翻弄されながらも、生涯研究を突き詰め続けた彼女。彼女に降りかかる現実はいつも厳しく、そこを生き抜く彼女もまたどこまでも自分に厳しい。 発明家の父(特許庁に勤めていた頃にはスイスでアインシュタインにも会っている)と歌人の橘守部を曾祖父とする母のもとに生まれた彼女。短歌をはじめ多様な文化をたしなみながら東京女子高等師範学校へ進学。自然現象の根源を追究する物理学へとまっすぐに向かってゆく。東京帝国大学理学部物理学科では、日

    第14回:湯浅年子|彼女たちの戦争|小林 エリカ|webちくま
  • 第二回 命綱を失った障害者家庭|弱き者が見殺しにされる国|石井 光太|webちくま(1/3)

    五月中旬、築五十年以上経つ団地の2DKで、七十代の母親と四十代の息子が栄養失調に近い状態で発見された。最初に姿を見つけたのは障害者グループホームの職員。緊急事態宣言の陰で、親子ふたりはなぜ孤立に追い込まれていったのか――。障害者人の陰に隠れ、その家族の抱える問題が取り上げられることはほとんどありません。コロナ禍において当事者だけではなく家族も孤立しないような状況を作っていくには、どういった支援が必要なのでしょうか。「就労支援」の視点から迫ります。 第二回 障害者と就労崩壊(1) 日には、知的障害や精神障害の診断を受けた人が合わせて約五百万人いるとされている(併発している人も含む)。 障害者といっても、軽度から重度まで様々だ。重度の人であれば、自宅や医療施設で介護等を受けることになるが、軽~中度の人の場合は、一日中家に引きこもっていると、ストレスは溜まる一方だし、家族を含めた周囲に負担を

    第二回 命綱を失った障害者家庭|弱き者が見殺しにされる国|石井 光太|webちくま(1/3)
  • 第一回 新型コロナウイルスの猛威の陰で|弱き者が見殺しにされる国|石井 光太|webちくま

    新型ウイルスの危機に接して、これまで見過ごされがちだった格差・差別の問題が顕在化しています。しわ寄せはまず、力を持たない、犠牲にされやすい人びとの側へと向かっていく――。その背景には「優先して守るべき人」と「守らなくていい人」に分ける、この日社会の暴力的な構造が潜んでいるのではないでしょうか。非常時の下で踏みにじられていく小さな声を、作家の石井光太さんが現場から伝えます(5月は毎週金曜日更新です)。 はじめに 二〇二〇年のゴールデンウィークに入って間もなく、私は都内の某病院で新型コロナウイルスの医療取材を行っていた。医療関係者に治療現場の話を聞いていたのである。 インタビューが終わって携帯電話を見ると、ある六十代の女性から着信履歴が九件もあった。かけてみると、電話口でこう言われた。 「息子が怖くて家から逃げてきました! 住むところがありません! どうしたらいいでしょう!」 この女性とは、

    第一回 新型コロナウイルスの猛威の陰で|弱き者が見殺しにされる国|石井 光太|webちくま
    florentine
    florentine 2020/05/15
    “新型コロナウイルスによる社会の変化は、その時間的余裕を消し去ってしまった。社会が彼らのことを理解してセーフティーネットを堅固にしていく前に、彼らは明日をも知れぬ状況に陥ってしまっている”
  • 【特別掲載】大疫病の年に|特別掲載・大疫病の年に|マイク・デイヴィス,重田 園江|webちくま(1/2)

    2019年末、中国・武漢に発したとされる新型コロナウィルスは、第二次大戦後最悪ともいわれるペースで世界各地に感染を広げています。なぜ現代世界は新種のウィルスにかくも脆弱になってしまったのか。世界でいま何が起こっていて、これから何が私たちを待ち受けているのか。『感染爆発』などの著作があるアメリカの社会学者マイク・デイヴィスがその核心に肉薄した最重要論考を、Jacobin誌の許可を得て特別に掲載します。 コロナウィルスが世界を駆けめぐっている。われわれの治療能力は言うに及ばず、検査能力すら追いつかないスピードで。いつか出現すると危惧されてきたこの怪物ウィルスは、とうとうすぐそこ、玄関口までやってきた[i]。このようなバイオ危機に対してグローバル資主義は全く無力なので、国際的規模のきちんとした公的保健インフラを要求していかなければならない。 コロナウィルスは古い映画のようだ。1994年のリチャ

    【特別掲載】大疫病の年に|特別掲載・大疫病の年に|マイク・デイヴィス,重田 園江|webちくま(1/2)
  • 【第104回】玉城知事誕生。翁長雄志について考えた|世の中ラボ|斎藤 美奈子|webちくま

    ただいま話題のあのニュースや流行の出来事を、毎月3冊の関連を選んで論じます。書評として読んでもよし、時評として読んでもよし。「を読まないと分からないことがある」ことがよく分かる、目から鱗がはらはら落ちます。PR誌「ちくま」2018年12月号より転載。 ろくでもないニュースばかりの昨今だけど、今年の快挙というべき明るいニュースは、9月30日の沖縄県知事選で辺野古の新基地建設に反対する玉城デニー氏が大勝したことだろう。玉城氏自身の主張や魅力もさることながら、彼が当選した背景には、8月8日に死去した翁長雄志前知事の後継者という側面も大きい。 翁長前知事はいま思うと、やはり不世出の政治家だった。 翁長氏が沖縄知事選に勝利したのは2014年11月。2000年から四期一四年務めた那覇市長の職を辞しての出馬。それもかつては自身が選対部長まで務めた現職の仲井真弘多知事と、バックにつく自民党を敵に回し

    【第104回】玉城知事誕生。翁長雄志について考えた|世の中ラボ|斎藤 美奈子|webちくま
  • 第1回:多民族社会というスタジアムで、「きみはマスコット」と宣言されること|悪いキツネをおさえつけることはできない|丸屋 九兵衛|webちくま

    オタク的カテゴリーから学術的分野までカバーする才人にして怪人・丸屋九兵衛が、日々流れる世界中のニュースから注目トピックを取り上げ、独自の切り口で解説。人種問題から宗教、音楽歴史学までジャンルの境界をなぎ倒し、多様化する世界を読むための補助線を引くのだ。 わたしのような(ほどほどに伝統的な)黒人音楽ファンにとって、ある種の憧憬なくしては語れない土地。それがアメリカ中西部(ミッドウェスト)だ。 もちろん「南部こそが米黒人音楽のルーツだろ」という声もあろう。だが、ブルースにしろソウルにしろファンクにしろ、ミッドウェストという土壌なしには、ここまで熟成しえなかったのではないか。 特にオハイオ州。それはファンクというジャンルの揺りかごとして機能した土地であり、わたしにとってはまだ見ぬ(そして、見ないまま死ぬ可能性大の)魂の故郷でもある。 騒ぎが起こったのは、そんなオハイオ州を代表する都市の一つ、ク

    第1回:多民族社会というスタジアムで、「きみはマスコット」と宣言されること|悪いキツネをおさえつけることはできない|丸屋 九兵衛|webちくま
    florentine
    florentine 2018/02/14
    「「高貴なる野蛮人」幻想は、なかなかしぶといのである。  妄想を膨らませ他民族を勝手に崇め奉るのは、勝者の特権でしかないのに」
  • 定家、そして子規・茂吉|ちくま学芸文庫|久保田 淳|webちくま

    ちくま学芸文庫『藤原定家全歌集 上・下』の校訂・訳を手がけた久保田淳氏が全歌集ならではの面白みに触れられた一文をPR誌『ちくま』9月号より転載します。 藤原定家の名とともに多くの人々が直ちに思い出す歌はどれだろうか。百人一首のかるたで聞きなれた「こぬ人をまつほのうらのゆふなぎにやくやもしほの身もこがれつゝ」だろうか、それとも新古今集の代表歌のように言われる「春の夜の夢のうきはしとだえして峯にわかるゝよこぐものそら」だろうか。この集には三夕の歌の一つとされる彼の「見わたせば花も紅葉もなかりけり浦のとまやの秋の夕暮」もある。 「貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之(これあり)候」(「再び歌よみに与ふる書」)と、和歌の改革をめざして大鉈をふるった正岡子規は、定家についても「こまとめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮」と「見わたせば花も紅葉も」などがもてはやされる程度だと評し

    定家、そして子規・茂吉|ちくま学芸文庫|久保田 淳|webちくま
  • 遅配された伝説の書|『終わりなき対話』全訳刊行記念|澤田 直|webちくま

    20世紀文学史上最大の問題作。原著刊行から半世紀をへてようやくその全貌を日語で読めるようになった。その魅力と奥深さとは──。 モーリス・ブランショの『終わりなき対話』が刊行されたのは一九六九年。ほぼ半世紀の時を経て、この伝説の書の邦訳がいま私たちの元に届けられるのを目の当たりにして、深い感慨に耽るのは私だけではないはずだ。『文学空間』や『来るべき書物』がいち早く刊行されていたにもかかわらず、翻訳大国である日で、この主著がこれまで訳されなかったことは驚きだが、この遅配には幾つかの理由がある。 単線的に進むことのないテクスト群の内容はきわめて明晰でありながら、いざ翻訳を試みれば、その内容の豊穣さに比例するように、多くの困難に遭遇するのは必至だ。文学的センスはもとより、ギリシャから現代哲学までの該博な知識なしには歯が立たないからだ。フランスで研鑽を積み、文学と哲学の両分野に通暁した新しい世代

    遅配された伝説の書|『終わりなき対話』全訳刊行記念|澤田 直|webちくま
  • 大日本帝国憲法はどこから来たのか|加藤陽子☓長谷部恭男 記念対談「憲法と歴史の交差点」|webちくま

    大日帝国憲法は、究極の押しつけ憲法? 加藤  先生は『論究ジュリスト』(有斐閣)2016年春号に掲載されている「大日帝国憲法の制定――君主制原理の生成と展開」で、明治憲法の制定の時点から書き始めておられる。憲法の理論一般ではなく、明治憲法についてのご論文なのでいささか驚きました。これは歴史家的な勘ぐりなんですが、今年の5月2日、憲政記念館で改憲を目指す人々による集会が開かれまして、そこには来賓として渡部昇一さんが出席され、報道によれば、「明治憲法に返れ」というようなご主張を展開されたといいます。長谷部先生は、このご論文のなかで、改憲派も護憲派も、大日帝国憲法について考えるのであれば、君主制原理を認めなかった美濃部の国家法人理論について、改めてちゃんと検討してみましょうと書かれていますが、これは単に学説的に面白いからではなく、改憲論者に対して、有効な学問的な反論を完璧に書いてしまおう、

    大日本帝国憲法はどこから来たのか|加藤陽子☓長谷部恭男 記念対談「憲法と歴史の交差点」|webちくま
  • 「中間領域」の思索と創作|ちくま学芸文庫|岡田 温司|webちくま

    岡田温司さん(京都大学大学院教授)は、クレーの『造形思考』をどう読んだのか。5月刊のちくま学芸文庫より解説を公開します。 「芸術家は多分、そうなろうと欲しないで,哲学者であります。」 クレー 描くことばかりか書くことにも長けた画家は,けっして少ないわけではない。過去にはレオナルド・ダ・ヴィンチという偉大な先達がいたし,20世紀にもカンディンスキーらの名前を挙げることができる。なかでもクレーは別格だろう。とりわけ絵画をめぐる思索の広がりと深さにおいて,書『造形思考』は,レオナルドの数々の『手稿』に匹敵するといっても,おそらく誇張にはならないだろう。 ことによると,クレーはどこかでこのルネサンスの万能の天才のことをそれとなく意識していたのかもしれない。というのも,バウハウスでの講義に基づくこの『造形思考』には,美術にかかわるさまざまな問題はもちろんのこと,自然の観察や実験,博物学,光学,解剖

    「中間領域」の思索と創作|ちくま学芸文庫|岡田 温司|webちくま
    florentine
    florentine 2016/06/05
    「まさしく「線を散歩に連れて行った」成果が,これらの天使たちなのである」すごい面白かった!
  • webちくま「1995年 国際情勢」速水健朗

    書評 2024/7/4 小熊 英二 「挑戦的」に社会の基礎を問いなおす 玉野和志『町内会―コミュニティからみる日近代』書評

    webちくま「1995年 国際情勢」速水健朗
    florentine
    florentine 2015/11/29
    「自国を飢えさせないために、他国や他人種を飢えさせる。あの時代にあったこんなシンプルな野蛮に正しく衝撃を受ける感性を私たちはまだ失ってはならない、とスナイダーは言っている」
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