現在の人はかつてないほど太っている。体長を身長の二乗で割って算出されるボディマス指数での評価では、世界人口の5人に1人が肥満あるいは過剰体重となってしまうほどだ。 1900年以前には肥満者は存在はしていたものの、多くはなかった。1700年代、1800年代のヨーロッパでは肥満者は珍奇なものであり、見世物にする人もいたぐらいだ。受け入れられ方も現在とは大きく異なっていた。平均体重より重いことは豊かさを意味し、病気の際に予備的な体力を有しているものと考えられていた。それが今では肥満は自己抑制の欠如の結果だと捉えられ、むしろ数々の病気を引き起こす悪い現象、不名誉な状態であると考えられている。 それにしてもなぜ、わずか100年でそれ程の変化が起こってしまったのか。人はなぜこれほどまでに容易く太るようになってしまったのか。人の肥満に対する脆弱性はどこから来たのか。本書は、そうした疑問を中心に置き、人が
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