ユヌス氏は1970年代から、銀行が融資しない農村部の貧しい人々を対象に担保なしで少額を貸し出し、自立のための起業を促す取り組みを続けてきた。83年設立の「グラミン銀行」は今や先進国にも広がる。慈善活動やボランティアではなく、ビジネスとして採算を確保しながら社会的な課題に取り組む「ソーシャルビジネス」を一貫して提唱している。 ムハマド・ユヌスさん コロナ前の世界は瀕死(ひんし)の状態でした。地球温暖化や経済格差は悪化する一方で、人工知能(AI)によって失業した人々が職を求めて列をなしていた。 私たちはコロナ前の誤った世界に戻してはならず、新しい世界をつくらなければなりません。政治指導者がまずやるべきは、コロナ前の世界に決して戻さないと誓い合うことです。今は変化に向かうまたとない好機です。 ――コロナの影響が貧しい人に重くのしかかる中、どんな活動をしていますか。 バングラデシュ国内では、グラミ