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ブックマーク / davitrice.hatenadiary.jp (15)

  • 解釈としての法(読書メモ:『一冊でわかる 法哲学』) - 道徳的動物日記

    法哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者:レイモンド・ワックス 岩波書店 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第四弾。今回は『法哲学』である。 『一冊でわかる』と銘打ってはいるが、内容はなかなか難しい。これはこの自体の問題というよりも、法哲学という学問そのものの難しさ、あるいはわたしの興味関心とか思考パターンが法哲学という学問と相性が悪い、というところに原因があると思う。同じように社会の制度とか規範的な問題を扱う道徳哲学や政治哲学は問題ないのだが、明文化された法律というものを扱っているせいかどうにも議論が細かく些細かつ厳密であったりメタ的であったり抽象的であったりして苦手なのだ。とくに書に第二章でも紹介される「法実証主義」は法哲学のなかでも特に王道かつ流で

    解釈としての法(読書メモ:『一冊でわかる 法哲学』) - 道徳的動物日記
    fumikony
    fumikony 2023/09/21
  • 【翻訳希望!】『資本主義の倫理学』 - 道徳的動物日記

    The Ethics of Capitalism: An Introduction (English Edition) 作者:Halliday, Daniel,Thrasher, John Oxford University Press Amazon さきほどの記事で書いたように、この4月は引越しに伴う作業と会社の仕事とでなかなか読書・執筆の時間が取れなかった。……とはいえ、そんななかで日々の楽しみを提供してくれたのが、The Ethics of Capitalism : An Introduction (『資主義の倫理学:入門』)。 出勤前や会社の仕事が終わった後などに時間を見て1章ずつ読んでおり、まだ11章と12章も読んでいないのだけれど、どの章も議論の内容が実に明晰に整理されていて、読むたびに思考や気持ちがスッと落ち着いていった。常々思うのだが、良質な哲学書や入門書・解説書って鎮静

    【翻訳希望!】『資本主義の倫理学』 - 道徳的動物日記
  • 「普遍的な道徳」は存在するか?(読書メモ:『道徳性の発達と道徳教育』) - 道徳的動物日記

    道徳性の発達と道徳教育 作者:ローレンス・コールバーグ,アン・ヒギンズ 麗澤大学出版会 Amazon 「ケアの倫理」を最初に提唱したキャロル・ギリガンの『もうひとつの声で』の批判対象として有名な……というか、哲学・倫理学界隈では「ギリガンに批判された人」というイメージしか抱かれていないおそれもある、教育心理学者兼哲学者のローレンス・コールバーグさんの。 このには1980年代にコールバーグが廣池学園(モラロジー研究所の関連機関)で行なった講演と、1971年に彼が執筆した代表的な論文(「道徳教育の基盤としての道徳性の発達段階」)などが収められている。講演に関してはモラロジー研究所や廣池千九郎へのヨイショ的な文言も差し挟まっていて、割り引いて読まなければいけない感じがある。また、別々の機械になされた複数の講演と論文とが収められているため、一冊ののなかで同じ話題やトピックが何度も繰り返された

    「普遍的な道徳」は存在するか?(読書メモ:『道徳性の発達と道徳教育』) - 道徳的動物日記
  • 読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記

    現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon 大学生から大学院一年生の頃までのわたしはいっちょまえに「哲学」や「思想」に対する興味を抱いており、哲学書そのものにチャレンジすることはほとんどなかったが、様々な入門書は読み漁っていた。現代思想については難波江和英と内田樹による『現代思想のパフォーマンス』でなされていた紹介をもっとも印象深く覚えており、次点が内田樹の『寝ながら学べる構造主義』や竹田青嗣の『現代思想の冒険』。個別の思想家についてはちくま新書の『〜入門』やNHK出版の『シリーズ 哲学のエッセンス』を読んでいたが、とくに後者についてはあれだけ何冊も読んだのに一ミリも記憶が残っていない。そして、修士論文を書くために英語圏の倫理学や政治哲学のをメインに読むようになってからは現代思想に対する興味はすっかり薄れて、以降ほとんど触れなくなってしまった。 千葉雅也による

    読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記
  • 『「社会正義」はいつも正しい』についての、いくつかの雑感 - 道徳的動物日記

    「社会正義」はいつも正しい 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて 作者:ヘレン プラックローズ,ジェームズ リンゼイ 早川書房 Amazon 早川書房から翻訳が出版された作家のヘレン・プラックローズと数学者のジェームズ・リンゼイの共著『「社会正義」はいつも正しい』に関して、出版とほぼ同じタイミングで山形浩生による「訳者解説」が公開された。 しかし、公開当初から訳者解説が差別的であるとしてTwitterなどで炎上。そして、公開から数週間が経過した先日に、公開停止が早川書房からアナウンスされた。 11月15日に弊社noteに掲載した記事「差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説!」につきまして、読者の皆様から様々なご意見を頂いております。出版社がなんらかの差別に加担するようなことがあってはならず、ご指摘を重く受

    『「社会正義」はいつも正しい』についての、いくつかの雑感 - 道徳的動物日記
  • 「ハッピーエンド」を唱える議論には警戒せよ(『資本主義が嫌いな人のための経済学』読書メモ①) - 道徳的動物日記

    主義が嫌いな人のための経済学 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版社 Amazon まずは「エピローグ」から引用。 若かりしころの私は、社会正義の問題など簡単だと考えていた。世界には二種類の人間がーー根っから利己的な人間と、もっと寛大で思いやりのある人間がいるように思われた。世界に不正や苦難があるのは、利己的なやつが自分の利害にかなうように仕組んだせいなのだ。したがって、この問題の解決法は、もっと思いやりをもつように人々を説得することだ。それがダメなら、思いやりのある人が政治権力を手にできると保証することだ。そのうえ、例の「見えざる手」のレトリックのせいで、資主義とは、利己的な人間が自分の利益を増やすためにこしらえたシステムであり、右派の政党がこの作戦にイデオロギーの隠れみのを与えるために存在しているのは明白だと私には思えた。だから反資主義は、率直な道徳的要請のような気がした。政府は

    「ハッピーエンド」を唱える議論には警戒せよ(『資本主義が嫌いな人のための経済学』読書メモ①) - 道徳的動物日記
  • 「共通善」で問題が解決できるなら苦労はしないよ(読書メモ:『実力も運のうち』①) - 道徳的動物日記

    実力も運のうち 能力主義は正義か? 作者:マイケル サンデル 発売日: 2021/04/14 メディア: Kindle版 「能力主義」に対する批判には、二つのパターンが考えられる。「不徹底な能力主義」に対する批判と、「能力主義」そのものに対する批判だ。 学問的なものにせよインターネットなどにおける世俗的なものにせよ、能力主義に関する昨今の議論でなされている批判の大半は、「不徹底な能力主義」に対する批判である。 この批判は、「能力主義は出自や属性に縛られずに自分の意志と努力と才能で自分の人生を決定するチャンスを人々に与えるのであり、機会の平等を保証して、社会の流動性を高めるものだ」という主張に対して、「実際には能力主義の社会でも人々は出自や属性に縛られており、生まれ落ちた環境や場所によって人々の人生はあらかた決定されている」、という事実を突きつけるものだ。 たとえば、アメリカでは大学受験は階

    「共通善」で問題が解決できるなら苦労はしないよ(読書メモ:『実力も運のうち』①) - 道徳的動物日記
  • 「人生の意味」の進化心理学 - 道徳的動物日記

    野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎 作者:ダグラス・ケンリック 発売日: 2014/07/18 メディア: 単行 ダグラス・ケンリックの『野蛮な進化心理学:殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎』の白眉は、やはり、第七章の「マズローと新しいピラミッド」だろう。 このについて紹介している他のブログの記事やTogetterまとめでも、この章がメインとして扱われている*1。 画像もいろいろとネットに転がっているので、貼り付けてしまおう。上が「マズローのピラミッド」で、下が「ケンリックのピラミッド」だ。 なお、「ケンリックのピラミッド」は「生活史理論」によって補強されるものである、ということには言及しておくべきだろう。 生活史理論は、「どんな動物の生涯も二つないし三つの段階に分けられ、それぞれで投資におけるトレードオフが異なる」 (p.237)という発想に基づく。人間の場

    「人生の意味」の進化心理学 - 道徳的動物日記
  • 「攻めの倫理」と「守りの倫理」(『ふだんづかいの倫理学』読書メモ) - 道徳的動物日記

    ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab) 作者: 平尾昌宏 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2019/03/12 メディア: 単行 この商品を含むブログを見る 前回の記事でも言及した内容とはまた別口で、『ふだんづかいの倫理学』を読んで考えたことについて書く。 このの後半の特徴は、倫理学の内容を「守りの倫理(消極的倫理)」と「攻めの倫理(積極的倫理)」に分別していること。義務論的な倫理や社会の調整を行ってマイナスを減らすための「正義」に関する倫理は守りの倫理に、目的論な倫理や個人がより善く生きるための「自律」に関する倫理は積極的倫理に分類される。 倫理というものを「正しさ」に関わるものとイメージしている人は、倫理は人を縛る法のようなものだと感じるでしょう。一方、倫理を「善さ」のためのものだとする人にとっては、倫理は単なる法じゃありません。それ以上のものを倫

    「攻めの倫理」と「守りの倫理」(『ふだんづかいの倫理学』読書メモ) - 道徳的動物日記
  • 「動物の苦痛の道徳的重要性」 by ロジャー・クリスプ - 道徳的動物日記

    昨日に引き続き、オックスフォードのPractical Ethicsのブログから、2015年6月に公開された、倫理学者のロジャー・クリスプ(Roger Crisp)の記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「動物の苦痛の道徳的重要性」 by ロジャー・クリスプ 最近、私はシェリー・ケイガン(Shelly Kagan)が「応用倫理協会」にて行った、「生物種主義の何が問題か?( ‘What’s Wrong with Speciesism?’)」と題された素晴らしいレクチャーに参加した。レクチャーの冒頭でケイガンは、人間以外の動物に関するピーター・シンガーのいくつかの著作を教材とした授業を教えているうちに、シンガーが擁護しているような「他の条件が同じであれば、動物の苦しみは人間の苦しみと同等に問題となる」という主張に自分は疑念を抱くようになった、ということを

    「動物の苦痛の道徳的重要性」 by ロジャー・クリスプ - 道徳的動物日記
  • 「才能遺伝子の倫理:『ガタカ』の世界への道のりか?」 by ジュリアン・サバレスキュ - 道徳的動物日記

    オーストラリアの Conversation 誌に掲載された、倫理学者のジュリアン・サバレスキュ(Julian Savulescu)の記事。知能に関する遺伝子に関する研究結果について紹介しながら、生まれてくる子供に対する遺伝的な介入の是非について論じた記事である。特徴的なのは、遺伝的な介入を必ずしも否定していないどころか、むしろ肯定しているところだろう。日では遺伝子介入や出生前診断を肯定する議論はなかなか紹介されないので、紹介することにした。 「才能遺伝子の倫理:『ガタカ』の世界への道のりか?」 by ジュリアン・サバレスキュ 2015年7月にイギリスで発表された研究は、遺伝的な"一般学業達成因子(general academic achievement factor)"を特定したものである*1。一卵性双生児を用いて行われたこの研究は、学業に関する広範囲な題材の成績が、双生児たちが持つ多く

    「才能遺伝子の倫理:『ガタカ』の世界への道のりか?」 by ジュリアン・サバレスキュ - 道徳的動物日記
  • ポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した記事の雑なまとめ - 道徳的動物日記

    jbpress.ismedia.jp 当ブログでは、ポリティカル・コレクトネスについて批判的であったりポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した英語記事をいくつか訳してきた。上記記事と上記記事に付いたコメントを見て思ったのが、ポリティカル・コレクトネスに対しては具体的にはどのような批判がなされているかということはまだあまり知られていないようなので、私が今まで訳してきた記事を紹介していこう。ついでに、まだ訳されていないが有意義な英語記事へのリンクも貼っておく。 davitrice.hatenadiary.jp ↑ 憲法学者のグレッグ・ルキアノフと社会心理学者のジョナサン・ハイトによる「アメリカン・マインドの甘やかし:トリガー警告はいかにキャンパスの精神的健康を傷付けいるか」は昨年の9月に書かれた記事で、英語圏ではこの記事をきっかけにポリティカル・コレクトネス批判に勢いが付いた感もある。 「

    ポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した記事の雑なまとめ - 道徳的動物日記
  • 「私たちは道徳的に賢くなっているのか?:IQの上昇、暴力の減少、経済的リベラリズムの関係」 by マイケル・シャーマー - 道徳的動物日記

    reason.com 今回紹介するのは、心理学者で疑似科学批判者で無神論者のマイケル・シャーマー(Michael Shermer)が Reason.com というサイトに掲載した「Are We Becoming Morally Smarter?」という記事。 シャーマーは昨年に『 The Moral Arc: How Science and Reason Lead Humanity toward Truth, Justice, and Freedom (道徳の弧:科学と理性はいかにして私たちを真実と正義と自由に導くか)』というを出版している*1。副題の通り、人々が科学的・理性的な思考方法を身に付けるにつれて、他人に配慮した道徳的な思考もするようになったり、正義などの抽象的な概念を理解したり、宗教の権威を否定したり、民主主義などが普及したりして、暴力が減少してより多くの人々に権利や自由が認

    「私たちは道徳的に賢くなっているのか?:IQの上昇、暴力の減少、経済的リベラリズムの関係」 by マイケル・シャーマー - 道徳的動物日記
  • 「植物は痛みを感じるか? 生物学者に訊いてみた。」 - 道徳的動物日記

    アメリカのVICEというwebページに掲載された、植物学者のダニエル・チャモヴィッツ氏へのインタビュー記事を私訳。 チャモヴィッツ氏の著書は翻訳もされており、植物が痛みを感じるかということや植物への倫理的配慮などの論点は160ー164ページにて触れられている。 www.vice.com 植物は痛みを感じるか?生物学者に訊いてみた。 (訳注: 記事の冒頭では、アメリカの中絶論争と、胎児が痛みを感じるかどうかという議論について軽く触れられている) …しかし、感じることが確実にできる存在とは何なのか、私たちは知っているのだろうか?少なくとも、植物学者のダニエル・チャモヴィッツ氏によると、植物は感じることができるらしい。チャモヴィッツ氏はイスラエルのテル・アビブ大学の生命科学部の学部長で、『植物はそこまで知っている』というを書いている。 私たちは、植物が感じることができるもののなかに痛みが含まれ

    「植物は痛みを感じるか? 生物学者に訊いてみた。」 - 道徳的動物日記
  • 倫理学における、動物の「知能による線引き」について、雑に説明してみた - 道徳的動物日記

    anond.hatelabo.jp 「おれのアタマじゃ結論出ないので、倫理学の専門家に説明してほしいなあ。」 私も専門家ではないし、時間がないので雑になるが、前半の「知能による線引き」について、とりあえず説明してみる。 基的に、倫理学で「動物は道徳的に配慮されるべきだ」「人間には、動物を倫理的に取り扱う義務がある」といった主張がされる場合には、その根拠は「動物が苦痛や幸福を感じるから」であることが多い。 「人間が苦痛を受けること」や「人間の幸福が奪われること」が「悪いこと」であるのと同じように、「動物が苦痛を受けること」や「動物の幸福が奪われること」も「悪いこと」である、という訳である。 「悪いこと」であるから絶対にやってはいけない、という主張もあるが、多くの倫理学の主張では「正当な理由」がある場合には「動物が苦痛を受けること」などの「悪いこと」を行ってもよい、としている。 極端な例では

    倫理学における、動物の「知能による線引き」について、雑に説明してみた - 道徳的動物日記
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