コンテンツをまだ用意していないので2年ほど前に「文化通信」に寄稿した雑文を流用してみた。格調高く前田愛なんぞを引用。 「読書」をテーマにしたあるシンポジウム録を、その登壇者の一人がしきりに活字離れを嘆いている様子にいささか違和感をもちながら読んだ。活字離れなんて本当におこっているのだろうか、と。 もっとも字義通りの「活字」離れであれば、活版印刷から電算写植に移行した1980年代に始まっている。いまでは活版の印刷物を探すほうが難しい。だが、この場合の活字離れとはいうまでもなく「活版の文字」離れではない。 では、「文字」離れのことか。しかし、わたしたちは溢れんばかりの文字情報に日々さらされている。WWWや携帯メールなどの普及によって文字に接する時間はむしろ増えているのではないか。そう考えれば単なる「文字」離れでもない。 では「良書」離れか。専門書が売れなくなった。古典が売れなくなった。たしかに