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ブックマーク / user.keio.ac.jp/~rhotta (15)

  • #4134. ''unmummied'' --- 縦棒で綴っていたら大変なことになっていた単語の王者

    前 次 hellog英語史ブログ #4134. unmummied --- 縦棒で綴っていたら大変なことになっていた単語の王者[minim][spelling][orthography][byron] 中世英語の筆記における縦棒 (minim) が当時のスペリングの解読しにくさの元凶であることは,以下の記事で様々に取り上げてきた. ・ 「#91. なぜ一人称単数代名詞 I は大文字で書くか」 ([2009-07-27-1]) ・ 「#1094. <o> の綴字で /u/ の母音を表わす例」 ([2012-04-25-1]) ・ 「#2450. 中英語における <u> の <o> による代用」 ([2016-01-11-1]) ・ 「#2453. 中英語における <u> の <o> による代用 (2)」 ([2016-01-14-1]) ・ 「#3607. 中英語における <u> の <o

  • #2454. 文字体系と表記体系

    「文字体系」「書記体系(書記法)」「表記体系(表記法)」という用語は,論者によって使い方が異なるが,私は以下のように考えたい.現代の日語表記でいえば,そこでは平仮名,片仮名,漢字,ローマ字という独立した「文字体系」が区別される.それぞれの文字体系に関しては独自の「書記法」があり,例えば仮名では仮名遣いが,漢字では常用漢字の使用や熟字訓に関する規範がある.また,文字体系の使い分けや送り仮名の規則など,複数の文字体系の混用に関する標準的な決まりごとがあり,それは日語の「表記体系」と呼びたい. この辺りの問題,特に「文字体系」と「表記法」という用語の問題について,河野・西田 (pp. 179--82) が対談している.以下は,西田の発言である. 日語の文字体系という問題に入りますけれども,まず,文字体系と表記法というのは別の問題だと思うのですね。表記法というのは,どういうふうに日語を書き

  • #3314. 英語史における「言文一致運動」

    言葉は,媒体の観点から大きく「話し言葉」と「書き言葉」に分かれる.書き言葉はさらに,フォーマリティの観点から「口語体」と「文語体」に分かれる.野村 (5) を参照して図示すると次の通り. ┌── 話し言葉 言葉 ──┤ ┌── 口語体 └── 書き言葉 ──┤ └── 文語体 言語史を考察する場合には,しばしば後者の区分について意識的に理解しておくことが肝心である.現在の日語でいえば,書き言葉といえば,通常は口語体のことを指す.この記事の文章もうそうだし,新聞でも教科書でも小説でも,日常的に読んでいるもののほとんどが,日常の話し言葉をもとにした口語体である.しかし,明治時代までは漢文や古典日語に基づいた文語体が普通だった.言文一致運動は,文語体から口語体への移行を狙う運動だったわけだ. 英語史においても,口語体と文語体の区別を意識しておくのがよい.中世から近代初期にかけて,イングランド

  • #3668. なぜ大文字と小文字の字形で異なるものがあるのですか?

    標題は非常によく出される素朴な疑問です.ローマン・アルファベットの大文字・小文字の字形には,<C, c>, <K, k>, <O, o>, <P, p>, <S, s>, <U, u>, <V, v>, <W, w>, <X, x>, <Z, z> のようにほぼ相似形のものがあります.これらは分かりやすく学習も容易です.しかし,一方で <A, a>, <B, b>, <D, d>, <E, e>, <F, f>, <G, g>, <H, h>, <I, i>, <J, j>, <L, l>, <M, m>, <N, n>, <Q, q>, <R, r>, <T, t>, <Y, y> のように相似形でないものもあります.相似形でないばかりか,相当かけ離れているペアもあります.たとえば <D, d> などはループの向きが左右逆です.なぜこのような似ていない大文字・小文字のペアがあるのでしょう

  • #1520. なぜ受動態の「態」が '''voice''' なのか

    英語で受動態を "passive voice",能動態を "active voice" と呼ぶが,なぜ「態」が "voice" と対応するのだろうか.この文法範疇は主語や目的語などの文の要素が動詞の表わす動作とどのように関わるかを表わすものであり,いわば動作の姿や有様(=態)を標示する機能をもっている.このように日語の「態」という用語はかろうじて理解されるかもしれないが,なぜ英語では "voice" と表現されるのかは謎である.そこで,調べてみることにした. まずは,OED から.voice, n. の語義13によると,文法用語としての "voice" の初例は15世紀前半である(大陸の文献では初出が16世紀なので,英語での使用のほうが早いことになる).最初期の用例を2つ挙げよう. c1425 in C. R. Bland Teaching Gram. in Late Medieval

  • #3102. 「キリスト教伝来と英語」のまとめスライド

    英語史におけるキリスト教伝来の意義について,まとめスライド (HTML) を作ったので公開する.こちらからどうぞ.大きな話題ですが,キリスト教伝来は英語に (1) ローマン・アルファベットによる格的な文字文化を導入し,(2) ラテン語からの借用語を多くもたらし,(3) 聖書翻訳の伝統を開始した,という3つの点において,英語史上に計り知れない意義をもつと結論づけました. 1. キリスト教伝来と英語 2. 要点 3. ブリテン諸島へのキリスト教伝来 (#2871) 4. 1. ローマン・アルファベットの導入 5. ルーン文字とは? 6. 現存する最古の英文はルーン文字で書かれていた 7. 古英語アルファベット 8. 古英語の文学 (#2526) 9. 2. ラテン語の英語語彙への影響 10. 外来宗教が英語と日語に与えた言語的影響の比較 (#206) 11. 3. 聖書翻訳の伝統の開始 1

  • #2997. 1800年を境に印刷から消えた long <s>

    18世紀の印刷のテキストを読んでいると,中世から続く <s> の異字体 (allograph) である <<ʃ>> がいまだ頻繁に現われることに気づく.この字体は "long <s>" と呼ばれており,現代までに廃れてしまったものの,英語史の長きにわたって活躍してきた異字体だった.Tieken-Boon van Ostade (40) に引かれている ECCO からの例文により,<<ʃ>> の使われ方を見てみよう. . . . WHEREIN / THE CHAPTERS are ʃumm'd up in Contents; the Sacred Text inʃerted at large, in Paragraphs, or Verʃes; and each Paragraph, or Verʃe, reduc'd to its proper Heads; the Senʃe giv

  • #2998. 18世紀まで印刷と手書きの綴字は異なる世界にあった

    昨日の記事「#2997. 1800年を境に印刷から消えた long <s>」 ([2017-07-11-1]) の最後に触れたように,十分に現代英語に近いと感じられる18世紀でも(そして部分的に19世紀ですら),印刷と手書きは,文字や綴字の規範に関して,2つの異なる世界を構成していたといってよい.換言すれば,2つの正書法が存在していた(しかも,各々は現代的な意味での水も漏らさぬ強固な規範というわけではなかった).印刷はおよそ「公」であり,手書きは「私」であるから,正書法は公私で使い分けるべき二重基準となっていたのである. この差異が最も印象的に見られるのは,Johnson の辞書での綴字と,Johnson の私的書簡での綴字である.例えば,Johnson は辞書での綴字とは異なり,書簡では companiable, enervaiting, Fryday, obviateing, occu

  • hellog〜英語史ブログ

    お知らせ 2024年5月13日に khelf による『英語史新聞』第9号がウェブ上に一般公開されました.こちらからPDFでご覧になれます.hellog でもこちらの記事で第9号公開についてお知らせしています.公開後も khelf の X (旧ツイッター)アカウント @khelf_keio より関連情報を日々お伝えしますので,ぜひフォローをお願いします.2024/05/15(Wed) お知らせ 2024年度,白水社の月刊誌『ふらんす』に「英語史で眺めるフランス語」というシリーズタイトルで連載記事を寄稿しています.5月23日に刊行された6月号に連載第3弾が掲載されています.詳しくは hellog の関連記事「#5509. 英語に借用された最初期の仏単語 --- 月刊『ふらんす』の連載記事第3弾」を書いています.2024/06/15(Sat) お知らせ 2024年4月27日(土)17:30--1

  • #775. 大母音推移は,発音と綴字の乖離の最大の元凶か

    現代英語の発音と綴字の対応関係が理想的な1対1から大きく逸脱している事実については,spelling_pronunciation_gap の諸記事で話題にしてきた.この状況の歴史的な背景については[2009-06-28-2]の記事「なぜ綴りと発音は乖離してゆくのか」で述べたが,とりわけ大母音推移 ( Great Vowel Shift; see [2009-11-18-1] ) が綴字と発音の不一致をもたらした最大の元凶であと,多くの英語史概説書で主張されている. しかし,この主張の真の意味を理解するには,もう少し深く少し考えなければならない.というのは,例えば name の発音が /nɑːm/ から /neɪm/ ( GVS の直接の出力は /nɛːm/ )へ変化したということ自体が発音と綴字の乖離を生み出したとは考えられないからだ.[2009-11-19-1], [2009-11-20

  • #2872. 舌打ち音とホモ・サピエンス

    舌打ち音あるいは吸着音 (click) という特殊な言語音をもつ言語が,主としてアフリカ南部に集中して分布しているという事実は,言語学者のみならず人類学者や民族学者の関心を引きつけてきた.舌打ち音の音声学的な記述について「#1672. 気流機構」 ([2013-11-24-1]) で,地理的な分布について「#1314. 言語圏」 ([2012-12-01-1]) で部分的に扱ってきたが,今回はその起源についての言及を集めてみた.いずれも必ずしも専門的な観点とは言えないかもしれないが,1つの洞察として示しておきたい. 一般向けの宇宙史を著わしたロイド (130) は,現在のタンザニア奥地に住む狩猟採集民ハザ族の言語について,専門家による次のような意見を参照している. 一部の専門家は,ハザ族の言語,少なくともその形態は,石器時代の初期の言語に近いのではないかと考えている.ハザ族の言語はほとんど

  • #2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート

    英語の綴字と発音の関係,ひいては言語における書き言葉と話し言葉の関係について長らく考察しているうちに,頭のなかで標題のイメージが固まったきた. まず,大前提として発音(話し言葉)と綴字(書き言葉)が,原則としてそれぞれ独立した媒体であり,体系であるということだ.これについては,「#1928. Smith による言語レベルの階層モデルと動的モデル」 ([2014-08-07-1]) における Transmission や,「#1665. 話しことばと書きことば (4)」 ([2013-11-17-1]) も参照されたい.それぞれの媒体を,時間という川を流れる独立したボートに喩えよう. さて,発音と綴字は確かに原則として独立してはいるが,一方で互いに依存し合う部分も少なくないのは事実である.この緩い関係を,2艘のボートをつなぐロープで表現する.かなりの程度に伸縮自在な,ゴムでできたロープに喩え

    #2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート
  • #2417. 文字の保守性と秘匿性

    文字を利用する書き言葉という媒体は,話し言葉に対して保守的である.このことは,これまでの文字や書き言葉に関する記事において前提としてきた.これについては,例えば「#15. Bernard Shaw が言ったかどうかは "ghotiy" ?」 ([2009-05-13-1]),「#753. なぜ宗教の言語は古めかしいか」 ([2011-05-20-1]),「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1]),「#2405. 綴字と発音の乖離 --- 英語綴字の不規則性の種類と歴史的要因の整理」 ([2015-11-27-1]) を参照されたい. 文字には,保守性に加えて,特に古代においては秘匿性があった.文字の読み書き能力は,特権階級にのみ習得の認められた秘密の技能であり,それは権力や威信の保持にもあずかって大きかった.また,世俗的な権力と宗教的な威

  • #2405. 綴字と発音の乖離 --- 英語綴字の不規則性の種類と歴史的要因の整理

    前 次 hellog英語史ブログ #2405. 綴字と発音の乖離 --- 英語綴字の不規則性の種類と歴史的要因の整理[spelling_pronunciation_gap][spelling][pronunciation][writing][orthography][hel_education][alphabet][link][grahotactics] 現代英語における綴字と発音の乖離の問題については,spelling_pronunciation_gap の多くの記事で取り上げてきた.とりわけその歴史的要因については,「#62. なぜ綴りと発音は乖離してゆくのか」 ([2009-06-28-2]) でまとめた.今回は英語綴字について言われる不規則性の種類と,それが生じた歴史的要因に注目し,改めて関連する事情を箇条書きで整理したい.各項の説明は,関連する記事のリンクにて代える. [ 不規

  • #2408. エジプト聖刻文字にみられる字形の変異と字体の不変化

    英語や日語の字体や字形について,共時的な変異と通時的な変化に関心をもっている.ここでいう字体とは emic な単位,字形とは etic な単位を指し,それぞれ音韻論でいう音素 (phoneme) と異音 (allophone) に相当するものである.「#2401. 音素と文字素」 ([2015-11-23-1]) の用語を用いれば,文字素 (grapheme) と異文字体 (allograph) といってもよい. 歴史的にみて,ローマン・アルファベット,漢字,仮名などの文字体系における字形や字体の変異や変化は少なくなかった.文字単位の出入りは激しくみられたし,新たな書体や書風の分化や発達もしばしば生じてきた,ところが,加藤一郎(著)『象形文字入門』を読んでいて,エジプト聖刻文字 (hieroglyph) の変異と変化の様式(変化についてはその欠如の様式というべきか)に驚いた. まず,字形

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