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ブックマーク / ameblo.jp/idealtone (8)

  • 『「良いヴァイオリンが欲しい」という欲を捨てること』

    こんにちはガリッポです。 ヴァイオリンがどういう物かということを知っているのがよく知っている事であり、具体的な作者について知っていることは重要なことではありません。私は作者については熱心な読者の方よりも知らないでしょう。私が20年以上働いて来て学んできたことを無料で教えましょう。 ①ヴァイオリンというのは作り方を習えば誰にでも作ることができる ②意味が分かっていなくてもヴァイオリンのようなものを作るとヴァイオリンのような音がする ③そのように作られたヴァイオリンはみな微妙に音が違う ④音は主観で客観的に評価することはできない ⑤このためどこの誰の作ったものが自分にとって良いヴァイオリンなのかは分からない 「神様のような職人がいて意図的に音を作り出し、専門家に評価され高い値段になっている」というのは現実からは全くかけ離れたものです。そのような知識は捨ててください。たまたま音が気に入れば、作者

  • 『弦を張り替えるときの注意事項、チェロの話など』

    前回はメンテナンスの話でしたが、今回は弦の交換についてです。 チェロの話もあります。 こんにちは、ガリッポです。 弦楽器というのは奥が深いと思いがちなのですが意外と浅いということを知ってもらいたいですね。奥が浅いものはそれが良いものであるということに気づきにくいです。入門者にとってはっきりしないものはわかりにくいのです。それが奥の浅いものの良さが分かるようになるのです。「良さ」ですらないかもしれません。強く良さを求めてしまう時点で未熟だということも言えます。 世界的に評価の高い楽器というようなことよりも今ここで良い音だと分かるかどうかなのです。 世界的な評価なんて幻想ですから。 製作学校の学生の頃、加工の手を見せた先生に対して一人の生徒が「こんなんでいいんですか?」と言いました。先生はひどくショックを受けたみたいで気にしていました。 生徒には悪気は無くて言葉のチョイスがまずかっただけです

    『弦を張り替えるときの注意事項、チェロの話など』
  • 『テールピースの材質と音について実験です。』

    今回はテールピースによって音は違うのか?という疑問に取り組んでみたいと思います。 こんにちは、ガリッポです。 前回、板の厚い楽器は手を抜いて作られたものに多いと説明しました。 たまたま修理で手元にある楽器でもそんなものばかりです。 チェコ製の量産品です。 3.5mm以上で厚い方だと言いましたからかなり厚いですね。 オールドなら2.5mm前後でも普通です。 エッジも現代の楽器は3.0~3.5mmと言いましたがまさにそれです。オールドでは2.5mm以下が少なくありません。 外観は悪いものではなく、カーブもf字孔もきれいで設計した人はセンスがあるなあと思います。しかし量産品は違う人が分業で作っていたのかもしれません。厚いにもかかわらず割れています。多少厚くても耐久性はそんなに変わらないのに音へのマイナスは大きいのです。厚くても弾力が無いためにパキッとわれてしまうのです。 裏板も厚いです。音の好み

    『テールピースの材質と音について実験です。』
  • 『オールド楽器とモダン楽器、ナイフの話』

    こんにちはガリッポです。 オールドヴァイオリンというのは考古学みたいなもので説明が難しいものです。 単に中古品をオールドと言って売ってる悪質な業者もありますが、どれだけ古ければオールドなのかというと、私は作風で言っているのでフランス式のモダン楽器になる前のものがオールド楽器で時代には地域差がありますす。 各地に伝わっていたオールドの作風も次第に時代遅れの古臭いものと考えられるようになり1800年代になるとフランス風のモダンヴァイオリンが最新の優れたものだと考えられ、オールドの作風は途絶えてしまいました。 近代になって信じられるようになった最大の常識は「ストラディバリウスが最高のヴァイオリンである」という考えです。これによって、ストラディバリが研究され、その特徴を解釈したものがモダンヴァイオリンになります。特にフランスで組織的に製法が研究されたため、今日でも常識として残っています。現在のヴァ

    『オールド楽器とモダン楽器、ナイフの話』
  • 『弦楽器の真髄について語ります』

    チェロの話の予定でしたが弦楽器について一番わかってもらいたいことを書きます。 後半チェロの話も始まります。 これまでに誤解を招くようなことを書いてしまったことを反省しています。 http://ameblo.jp/idealtone/entry-11967076092.html 私もヴァイオリン職人の勉強を始めて、初めの数年くらいはイタリアの有名な作者の楽器の音が良いのだと信じていました。しかし経験を積むことでそれが事実ではないことに気づきました。 一般の人が弦楽器について勉強してもプロの職人を目指す人が数年間みっちり勉強するレベルには届きません。下手な知識なら無い方がましです。 モダンイタリアの楽器があっても私はそれほど興味を示しませんが、特別嫌っているわけではありません。 取り立ててその楽器に注目しないだけで、100万円の楽器と同じように興味を示しているだけです。モダンイタリアの楽器があ

  • 『昔の高級品と今の高級品』

    こんにちはガリッポです。 楽器作りは時間を忘れてしまいます。すぐに一週間が過ぎてしまいました。 およそ工業製品を作っていると思えないような作業です。 ピエトロ・グァルネリはとても美しい楽器を作った人でビジネスライクでは同じような物を作ることはできません。ストラディバリと同じ時代に楽器を作っていましたが、ストラディバリの影響はなくアマティの弟子の父親アンドレアが基礎となっているでしょう。アンドレアは仕事は綺麗ではなくグァルネリ家らしいものですが、ピエトロだけは完成度の高いものを作っていました。 現代の工業製品とは全く発想が違います。 そのため何年経っても価値が落ちません。これも現代の発想と違うからこそです。 弦楽器を作るのがほかの職人の作るものと違って面白いのは、手の込んだ高価な品を飾っておく、箱に入れて大事にしまっておくものではないことです。道具として使用できること、それも音楽という芸術を

  • ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

    ヴァイオリン、ビオラ、チェロなど弦楽器の良し悪しを見分けるには、値段とメーカー名を伏せて試奏し、最も気に入ったものを選ぶのが最良の方法です。 しかしながら、よほどの自信家でもない限り不安になってしまいますよね? そのため知識を集めるわけですが、我々弦楽器業界は数百年に渡って楽器を高く売りつけるため、怪しげなウンチクを広めてきてしまいました。 弦楽器の製作に人生をかけたものとして皆さんはもちろん、自分を騙すことにも納得がいきません。 そこで、クラシックの場ヨーロッパで働いている技術者の視点で弦楽器を解明していきたいと思います。 とはいえ、あくまで一人の専門家、一人の製作者としての「哲学」ですから信じるかどうかは記事をよく読んでご自身で判断してください。 お問い合わせはこちらから こんにちはガリッポです。 この前は楽器の手入れの話をしてきました。今回は応用編です。 指板が薄くなってくるとこれ

  • 『中国製の5万円のヴァイオリンで十分? 音と値段の話』

    こんにちはガリッポです。 弦楽器について理解するのに一番大事なのは先入観を無くすことでしょう。偉そうなことは言えません。職人には職人特有の思い込みがあり現実を直視できないものです。 先週はこんなことがありました。 ペグの具合が悪いので見て欲しいとヴァイオリンが持ち込まれました。見ると中国製のとても安価なヴァイオリンであることが一瞬で分かります。ケースと弓とセットで10万円もしないようなものです。オンラインショップなど店によってはもっと安い値段で売られているかもしれません。 仮に「中国の5万円のヴァイオリン」と呼ぶことにしましょう。 ペグの材質や加工、取り付けが悪いのでうまく機能しないのはいつものことです。うちの店では量産楽器を仕入れる時には、ペグもついていない状態で仕入れてうちでペグを取り付けています。工場で仕上げたものでまともなものは無いからです。 ペグを削りなおしたり穴を削りなおせばま

    『中国製の5万円のヴァイオリンで十分? 音と値段の話』
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