連載第1回で簡単に紹介したとおり、夏目漱石の東京帝国大学での講義は逆風のなかで始まった。抗議のため、受講ボイコットや、所属学科の変更を行なった学生までいたほどだ。しかし、ほどなくして漱石の講義は「満員御礼」と言われるまでに、英文学科内外の学生達の支持を集めていく。一体どのように、夏目先生はピンチを切り抜けていったのだろうか。学生側からみた大学の雰囲気を、当時の学生の日記を通して味わってみよう。 図 1 1900年頃の東京帝国大学文科大学が入っていた校舎内観 (図の出典は末尾にまとめて記載) ヘルン先生の、夏目先生の、三四郎のいたキャンパス 学生にクロースアップする前に、キャンパスの様子を具体的に思い描いていきたい。まずは筆者の『はじまりの漱石』(新曜社、2019)のカバー・表紙の話から始めよう。カバー・表紙に用いた写真(図1)は、ゲーム「文豪とアルケミスト」をプレイしたことがある方には学校