生きていても赦されたい。だから祈る。だから考える。どんなに祈ったところで、わたしはわたしのため以外に生きることができない。わたしがわたしだからだ。 どんなに苦しくても、わたしは切実に、わたしでしかないからだ。 レヴィナスの他者論が好きだ。レヴィナスは生きている人にやさしい。共に生きてきたのに共に死ぬことのない愛する人を失くし、蘇らない死者の肉を前にして、それでも生きている自分を赦してほしい、赦されたい。こういう思いを抱えて、それでも生きていくにはどうすればいいのか。 カルネアデスの舟板という有名な問答があるが、そこでは利己主義と利他主義という2つの倫理について問われている。 人を犠牲にして自分が生き残るか、自分が犠牲になって人を生かすか。 しかし後者の利他主義も、人を助けることで自己満足を得ているから結局利己主義にすぎないじゃないかというのは定説だ。 レヴィナスの倫理において、利己主義は利