→紀伊國屋書店で購入 ネオプラグマティズムの提唱者として知られるリチャード・ローティの文学・思想論である。 ローティが注目すべき思想家であることは堀川哲氏の『エピソードで読む西洋哲学史』で教えられたが、本書を手にとったのはローティに対する関心からではなく、本書におさめられている「カスビームの床屋」というナボコフ論が若島正氏の『ロリータ、ロリータ、ロリータ』で絶賛されていたからである。 最初は「カスビームの床屋」だけ読もうと思ったが、そうはいかなかった。本書に再録するにあたって相当手がくわえられたらしく、もはや独立の論文ではなく『偶然性・アイロニー・連帯』という本の切り離せない一部となっていたからだ。 ローティの語彙体系で語られているので、はじめての読者としては戸惑うことが多かったが、わたしなりに要約すれば本書でローティが問題にしているのは文学が何の役に立つのかという古くて泥臭い問いである。