〇高木久史『撰銭とビタ一文の戦国史』(中世から近世へ) 平凡社 2018.8 『貨幣が語るローマ帝国史』を読み終えたところで、引き続き貨幣の歴史を読む。「はじめに」にいう。本書は、銭を主人公とし、銭が英雄たちをどう振り回したのか、英雄たちが動かした歴史ではなく、英雄たちを動かした現実にアプローチする。最後まで読み終えて再びこのページに戻ると、納得できて味わい深い宣言である。 なお、銭(ぜに)とは金属製の、円形で中央に方孔のある塊をいう。銭の貨幣単位は「文(もん)」で、金貨銀貨に比べて少額の貨幣であるから、銭の流通具合を見ることで、庶民経済の発展を知ることができる。 日本では13世紀後半から14世紀にかけて銭が不足したため、民間で中国の銭が模造されるようになった。これを「偽造」と表現するのは適切でない。政府による供給が十分でない場合、民間が不足する交換手段を自律的につくりだすことは、しばしば