経済学者のタイラー・コーエンは、自身のポッドキャスト番組に社会心理学者のジョナサン・ハイトを招き、悪化が懸念される子供たちのメンタルヘルスについて議論を交わした。 親の政治的信条が子供に与える影響はあるのか、SNSに人類が適応するのは可能なのか──などコーエンが投げかける話題は多岐に渡る。 米国を代表する知性二人による刺激的な対話から見えてくる私たちの未来とは?
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「脱成長」とは、気候変動や格差を生む資本主義から脱しようという考え方だ。これはフランスの経済哲学者であるセルジュ・ラトゥーシュが提唱した理論だが、同じくフランスで著名な経済学者のオギュスタン・ランディエは、脱成長を唱えすぎるのも問題だと指摘している。仏誌「ル・ポワン」がインタビューした。 「脱成長」は本当にいいものなのか? オギュスタン・ランディエはフランス屈指の経済学者の一人だ。パリ高等師範学校卒業後、数学と哲学の大学教授資格を取得し、その後、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の博士号を取得した。現在はHEC経営大学院(パリ)のファイナンスの教授である。この人が発言するときは、耳を傾けたほうがいい。 そんなランディエが昨今、憂慮するのは、フランスの論壇で「脱成長」を説く論者が幅を利かせていることだ。 ランディエに言わせれば、「脱成長」を論じる自虐的な傾向はフランス独特なものであり
2019年にノーベル経済学賞を受賞した、世界的に著名な経済学者の一人であるエステル・デュフロ。気候変動によって貧困層が受ける被害は、超富裕層や企業への課税によって補償されるべきだ──そんな提案をしている彼女に、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が取材した。 マサチューセッツ工科大学「アブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困行動ラボ」の共同設立者として、エステル・デュフロは主に貧困撲滅に焦点を当ててきた。そのため彼女はいま、世界の貧困層にますます深刻な影響を及ぼしている気候変動の経済的影響に取り組むことを余儀なくされている。 ワシントンで開催された世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合で、デュフロは「企業や超富裕層の課税を重くし、それを低所得国や個人に対する、気候変動に関連した被害の支援に充てる」という新たな提案をした。 私の言いたいことはとてもシンプルです。豊かな国に暮らす裕福な人々が、世界
この記事は、世界的なベストセラーとなった『21世紀の資本』の著者で、フランスの経済学者であるトマ・ピケティによる連載「新しい“眼”で世界を見よう」の最新回です。 最初にはっきり言っておきたい。フランスの日刊紙「ル・モンド」が掲載した見事な調査報道の記事によって、フランスの福祉機関「家族手当金庫(CAF)」の手当受給者数千人が、無節操で理不尽極まりない手続きの対象にされていたことが白日のもとにさらされた。 これはフランスに限らず、欧州や世界の社会保障や公共サービスの未来が根本的な問題に直面していることを示している。ル・モンド紙の記者たちは、隠蔽されていた数千行のプログラミングのコードを調べあげただけではない。 生計が不安定な人たちやひとり親たちに会い、手当の過払いがあったと不当に疑われて追い回された話にも耳を傾けた。記事が示したのは、闇雲にアルゴリズムを使って調査することが、日々の生活に悲劇
Momoko. Aさん(クーリエ・ジャポン読者)からの質問 日本では「無敵の人」という表現がここ数年話題になっています。「無敵の人」とは、社会的に失うものが何もないために、犯罪を起こすことに何の躊躇もない人のことを指します。日本のみならず、世界でもこのような人は多く存在すると思います。 そして、彼らの増減は格差と関係しているように思うのです。格差を減少させるということは治安を維持するということにもつながり、社会全体にメリットがあるという主張があります。これについてどう考えますか。格差によって世界はさらに分断の方向性に向かうのでしょうか? ガブリエル・ズックマンの答え 不平等がひどくなりすぎると、社会契約や社会の一体感が損なわれます。とはいえ、どのくらいの不平等が「ひどすぎる不平等」なのかを見定めるのは簡単ではありません。また、不平等の度合いがどれくらいになったとき、ご質問で挙げられたような
メリッサ・カーニーは社会政策や貧困、不平等を専門とする米経済学者だ。「ふたり親の特権:なぜ米国人は結婚を諦め、後塵を拝することになったのか?」と題した最新論文において、母子家庭で育った子供が貧困にあえぐ確率が高いという研究結果を発表し、物議を醸している。シングルマザーを侮辱していると誤解されることもある彼女は、その真意を米誌「アトランティック」に語っている。 今年初め、貧困撲滅に関するカンファレンスに出席していたとき、聴衆の一人が専門家たちを目に見えて狼狽させる質問を投げかけた。 「家族構成はどうですか?」とその男性は問いかけた。「一人親家庭は二人親家庭よりも貧困に陥りやすいですが、家族構成は貧困に何らかの役割を果たしているのでしょうか?」 問われた学者は苛立たしげな表情を浮かべ、答えに窮した。パネリストたちは椅子の中でモジモジと身動きした。すかさず司会者が割り込んで、貧困は安定した結婚を
今週、経済学者のロバート・ソローが99歳で亡くなった。彼はこの分野における巨人であり、彼によってマクロ経済学は無数の方法で再構築され、それを今の僕たちは当たり前のように受け入れている。ソローは多くの重要な分野に携わったんだけど、一番有名な貢献(ノーベル賞の受賞)は、経済成長についてのソロー・モデルだ。なので今回のエントリでは彼を追悼して、ソロー・モデルは、この数十年間――特に中国経済で起こったことを説明するのにどう役立つかについて少し話してみようと思う。 経済はなぜ成長し、成長はなぜ止まるか? この問題は、経済学で一番重要な問題なんじゃないかな。そして、ものすごく難しい問題でもある。成長というのはすごく複雑で、国によって経験は異なっている。比較は本当に難しい。ソロー・モデルは、ものすごくシンプルで、頭の良い中学生なら学ぶことができる。少しだけの変数・パラメーターしかない。こうした単純なモデ
誰の目にも明らかだろう。ガザでの戦争がきっかけでグローバル・ノースとグローバル・サウスの溝がさらに深まるおそれが生じている。 イスラム圏の国々に限らず、グローバル・サウスの国々の多くにとって、イスラエルがパレスチナの飛び地を空爆し、民間人の死者が数千人も出たことは、20年前の米国のイラク攻撃で数十万人の死者が出たときと同じように、西側諸国のダブルスタンダードそのものだと長い間、記憶されるに違いない。 一方、新興国側の主要な集まりであるBRICSは、数ヵ月前にヨハネスブルクで首脳会議を開催し、ますます力を持ちはじめている。2009年から開催されているこの首脳会議は、2011年からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの計5ヵ国が参加してきた。
クーリエ・ジャポンでは、世界的経済学者ガブリエル・ズックマンへのインタビューに際して、読者のみなさまからの質問を募集します。日々の生活でふと抱いた経済や税制、経済的不平等に対する疑問や問題意識などを伝えてみませんか。 対話型AI「ChatGPT」が2022年11月30日に公開されてから1年が経つ。開発元のオープンAIは最近、経営陣や理事会をめぐる“お家騒動”で注目されているようだが、このAIチャットボット自体は、いまも週間アクティブユーザー数が世界全体で1億人超という高さで推移している。 風聞によれば、ChatGPTのおかげで仕事の生産性がどんどん上がる人も各業界に出現しているらしい。英誌「エコノミスト」に載っていた記事では、2024年は企業内での生成AIの利用が実験段階から投資段階に移る1年になると書かれていた。データ管理がしっかりしていない業界で生成AIを利用するとリスクが大きいので、
──いまもなお男女の間に賃金格差が残る根本的な原因は何なのでしょうか? 賃金の額に影響を及ぼす大きな因子は、主に2つあると考えられます。ひとつ目は職場に対する貢献度がどれだけ高いか、2つ目はそれに対してどれだけ金銭的な見返りがあるかです。 たとえば仕事量当たりの報酬額が同一の場合、他者と比べて仕事量が少なければ収入は目減りします。 ここ50~60年間のデータによれば、女性の職場への貢献度は増加しており、男女間の差はかなり縮小しています。にもかかわらず、男女の賃金格差は残っています。なぜそうなのかを完全には説明できませんが、同一の仕事量をこなしているのに、報酬額が男性と比べて少ないと感じている女性もいます。これは、きわめて憂慮すべき問題です。 「グリーディー・ジョブ」が奪うもの 人間は、自分の望みを叶えるためにそれまでとは違った道を選択することで、さまざまな変化を経験します。男女間の賃金に差
これからの世界を描く、注目の学者たちを紹介する「世界の賢人PEDIA」。第1回は、フランスの経済学者であるトマ・ピケティを紹介しよう。 ピケティが書いたベストセラー『21世紀の資本』を聞いたことがある人は多いと思うけど、いったい彼の主張の何が画期的だったんだろう? ピケティは海外メディアの取材に積極的に応じている。インタビュー記事であれば、彼の最新の考えをわかりやすく理解できるはずだ。記者の質問も鋭く、ピケティの思考が端的に見てとれる。 また、ピケティはフランスの日刊紙「ル・モンド」にも毎月コラムを寄稿しているよ。 クーリエ・ジャポンでもピケティのインタビュー記事を多数掲載しているので、彼の“思考の現在地”に興味のある人は、ぜひ読んでみてほしい。
「しあわせに暮らせる場所は,この世に2つだけ.我が家と,パリだ.」――アーネスト・ヘミングウェイ 地上で最高の都市はどこだろう? 「ニューヨーク市」って答える人がいても,笑い飛ばしたりはしない.いまなお名目上は世界最大の経済大国で金融ハブの役回りをしているニューヨーク市は,他のどこの都市でもかなわないほどの経済力を有しているし,地球上の名もなき数百万もの人々にとって,いまでもあそこは夢の都市だ.「上海」って答えが返ってきたら,ぼくとしては懐疑的になってちょっと口を「へ」の字に曲げてしまうかもしれない.とはいえ,富と権力の中心としていずれ中国が先進諸国を圧倒する定めにあると思ってる人にとっては,上海はなるほど論理的な選択だろうね. でも,実のところ,最高の都市といったら東京だ. かくいうぼくは,またまた東京にいくべく支度を調えてるところだ.今年は,これで三度目になる.今度はじめて東京を訪れる
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2020年からのインフレを正しく理解したのは誰だろう? パンデミック後に高まったインフレを鎮める戦いは着々と進んでいる.FRB が実際に目標に見据えているものにとても近い数値であるコアインフレ率は,前月との比較で 2% にまで下がっている: コアインフレ率は少しばかり上げもどすだろうけれど,それでも,他のどのインフレ指標を見ても,正しい方向に向かっている.というか,モノは先月よりも安くなってるし,サービス価格のインフレ率も下降傾向にある.最新の賃料を示す各種の数値を見ても,サービス価格は先月より下がってきてる.インフレをはかる各種の数値のなかでも外れ値に比較的に影響されにくい数値を見ても,そのすべてが同じ傾向を示している.基本的にすべてのインフレ数値が下に向かっているのを示す表を載せておこう.どの数値も,FRB の 2% インフレ目標に近づいてきている: 2020年以前のような低インフレで
インフレは格差を広げたのか? ノーベル経済学者ポール・クルーグマン「景気がそれほど減速しなかったことに驚いている」 ノーベル経済学者クルーグマンは欧州経済をどう見ているのか Photo by Ricardo Rubio/Europa Press via Getty Images クルーグマンはこの夏最初の熱波のうだるような暑さに耐えながら、スペイン北部ビーゴのコンベンションセンターの一室に座る。「まったく、なんて世界だ」と気候変動についてぼやいてから「マドリードはもっと暑いんですよね」と付け加えた。 だがノーベル賞受賞者で米国の著名なコラムニストである彼は、経済については、それほど悲観していない。ビーゴ自由貿易区コンソーシアム主催の「ビーゴ・グローバル・サミット2023」におけるプレゼンテーションで、「このインフレ危機の経済への打撃は大きくないだろう」と言い、またインフレ自体、すでに収束に
トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」 欧州が地球の役に立ちたいなら、自らを刷新するしか選択肢はない 社会や気候変動、地政学などで新しい課題に直面しているいま、欧州が欧州市民や地球の役に立ちたいなら、自らを刷新するしか選択肢はない。2022年に創設された新しい連合体「欧州政治共同体」の首脳会議がモルドバで6月1日に開かれたが、この会議にもそのような認識があった。この欧州政治共同体の取り組みは、称賛されるべきだろう。 首脳会議に集結したのは47ヵ国。英国もウクライナもノルウェーもスイスもセルビアも顔を並べた。これらの国々が参加すると、EUの加盟国の数が永久に27で固定されているわけではないということも意識できる。対話と協力の関係はますます深まっており、それは欧州大陸全体とその周囲の地域にも及ぶべきなのである。 この欧州政治共同体のなかで、政治に関する最低限の共通ルールや原則を掲げられる
『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』などで知られる、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学教授ダロン・アセモグル。トルコ出身の彼は、新たな共著『パワー・アンド・プログレス』(未邦訳)で、数多くの技術革新が多くの人を苦しめてきたことを明らかにした。 生成AIという新たな技術の出現で、仕事を失う人が増えることが想定されるいま、父親がトルコ系という、英紙「フィナンシャル・タイムズ」の記者が、アセモグルと一緒に昼食をとりながら話を聞いた。 午前11時というのは、ランチには早すぎる時間だ。しかし、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学教授、ダロン・アセモグルは効率性を追求する人物だ。 彼のオフィス近くで、私たちは早めに会うことになった。そうすれば、ランチ後すぐに彼が新著に関するポッドキャストの録音に出かけられるからだ。私たちがランチを取った中国・湖南料理のレストラン「スミナ
社会の少子高齢化に対応すべく海外から移民を受け入れたらいいのではないかという議論がある。だが、議論しているあいだに手遅れになるかもしれない。これから先、移民誘致をめぐる熾烈な競争が諸国のあいだで起きるだろうからだ。その新しい世界を、米国の著名な経済学者タイラー・コーエンがスケッチする。 出生率が世界中、ことに裕福な国々で低下し続けており、世界的な移民政策の見直しが必要になっている。 公的年金の財源確保がますます喫緊の課題となるなかで、諸国の政府は移民を排除するより、むしろ呼び込もうと努めるのだろうか? 他と比べて制限主義的な移民政策を維持するだろうと見込まれる国々もある。だがそうした国々では、人口がますます減っていく一方で、若い世代に課せられる税金は、高齢者の年金や医療費の支払いに充てられることもあり、ますます高くなっていくだろう。 その高い税金が今度は生活水準を下げることになり、そうなる
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