東日本大震災の発生から当分の間、この未曾有の災禍がもたらす日本社会の構造転換に、人々の不安と期待が集まっていた。しかし、発災から1年が過ぎたいま、むしろ社会の「変わらなさ」のほうが一段ときわだって見えることは、ここで多言を要しないであろう。僕たちは日々、日本社会の「変わらなさ」に辟易しているが、ひとたび視角を変えれば、それは微かな希望にも見える。 宇野常寛氏と濱野智史氏は東日本大震災を、ポスト戦後日本社会におけるダメ押し的な「でかい一発」と捉える。震災によって初めてもたらされた諸現象よりも、むしろ震災によって露呈され、浮き彫りになってきた事柄に目を向けることで、緩効的な「希望」の処方箋を提示しようというのが本書の企図である★1。 そこで、本書の随所で参照されているのが、先立って宇野氏の単著『リトル・ピープルの時代』で提起された「拡張現実の時代」というテーゼである★2。これは社会学者の見田宗
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