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ブックマーク / antimainstreameconomics.blogspot.com (264)

  • 日本経済の深層・真相を示す一統計 企業の内部資金と設備投資

    ここに法人企業統計から作成した図を上げます。 この図ほど、現在の日経済の状態を示すものはない、というと大げさかもしれませんが、少なくともいくつかの重要な側面は示しています。 1)企業は、内部資金をかなり蓄えているが、投資需要が減退しているため、設備投資額をずっと減らしている。 2)そのため企業には、余剰資金が生じている。 3)この余剰資金が生まれている時期と、日企業が在外子会社を作り・拡大するためのFDI(外国直接投資)を増やしている時期が一致している。 4)余剰資金の発生は、賃金圧縮の結果であり、それは賃金からの消費支出を抑制し、企業の製品売れ行きを悪化させている。 5)したがって企業の利潤は賃金圧縮をしてもそれほど増えない。 6)また消費支出が増加するという期待(予測)も生まれず、設備投資をしない。 7)日銀が「異次元の金融緩和」を行なっても、余剰資金を持っている企業への銀行貸付は

    日本経済の深層・真相を示す一統計 企業の内部資金と設備投資
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    gruza03 2015/07/08
    いずれにせよ、論より証拠、黒田日銀総裁・安倍首相コンビのリフレ策(アベノミックス第一の矢)は大失敗ということです。
  • 何故、安倍政権の下で円安になったか? その2

    為替相場を説明する理論は、いろいろ考案されてきましたが、実証的なテストに耐えることのできたものはほんとんどありません。このことは、米国の専門家、John T. Harveyの著書(下記)でも説明されているところです。比較的説得力のあるのは、<長期的なトレンドとしては>という限定がつきますが、購買力平価(PPP)説*です。しかし、あくまでトレンドであり、購買力平価とぴったり一致するわけではありません。 *2つの国を例にとると、A国とJ国の平均物価が等しくなるように為替相場が決まるという説。この説は、貿易収支が均衡するという傾向を持つことをを主張します。例えば両国でハンバーガーしか生産されていないとかりに仮定し、1個が日で360円であり、米国で3ドルならば、1ドル=120円となるはずです。 もう一つかなり確実に言えるのは、自国通貨(例えば円)売り、外国通貨(例えばドル)買いが行なわれば、自国

    何故、安倍政権の下で円安になったか? その2
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    gruza03 2015/07/08
    非実需取引とは何でしょうか? 言うまでもなく、投機のための外貨需要を満たすための取引です。もっと端的に言えば、マネーゲームです。
  • 何故黒田日銀は誤るのか? インフレやデフレの原因は通貨供給ではなく、・・・

    黒田日銀総裁が誕生するにあたり、次の3つの主張がマスコミに現れました。 1)現在はデフレ不況である。 2)インフレは、日銀が通貨供給を増やすことによって可能となる。 3)適度なインフレは景気をよくする。 一体どこからこのような奇妙な主張が出てくるのか不思議というしかありませんが、一時は社会全体の「常識」でるかのように広まりました。<景気がわるい。カネ回りが悪い。だから日銀がカネを増やすべきだ>などという床屋談義的な話が床屋で終わらずに、政策になってしまったわけです。 このうち1)はここではおいておき、2)ですが、せいぜい日銀が直接できることは、金利に影響を与えることと、市中銀行に対する貨幣供給、つまり日銀券と日銀当座預金を内容とするマネタリーベース(MB)を増やすことができるだけです。貨幣供給とは、市中銀行が人々(企業等)に貸し付ける通貨(日銀券または預金通貨)のことであり、これは人々から

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    gruza03 2015/06/22
    実際のインフレーションは、このように部門間や賃金・利潤間の複雑な関係と結びついており、したがって諸商品間の相対価格、実質賃金率/労働生産性の関係などの変化を伴っています。
  • 日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式購入

    近年の株価上昇が「官製相場」、つまり日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による株式購入によるものであることは、様々なところで指摘されています。 今日は、日銀とGPIFの統計にもとづいて、両者の株式購入(日銀ETFとGPIFの株式運用)の拡大の様子を示しておきたいと思います。 日銀の株式購入(ETF)は次の通りです。2年半の間に3兆円ほど増加しています。 出典)日銀の営業毎旬報告のデータより作成。 一方、平成24年3月末から今年6月末までの2年とちょっとの間に13兆円ほどの公的年金基金が株式の購入にあてられており、年金基金の総額に対する株式運用の比率も12%弱から20%弱にまで8パーセント・ポイントほど増加しています。実に巨額の資金が投資信託を通じて株式市場に流れたわけです。 日銀ETFとGPIFの両者を合わせて株式市場に流れ込んだ巨額の資金が株価を押し上げないわけがありません。

    日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式購入
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    gruza03 2015/06/22
    (輸入インフレが経済にマイナスの影響を与えることは、1970年代の石油ショックの結果を見れば、よくわかります。)何としてでも株価だけは上げつづけて「アベノミックス」がうまく行っているという印象は維持したい
  • ユーロ圏における高失業を生み出したゼロ思考/単一思考 (1)

    EU総選挙で、特にユーロ圏の有権者がEUと通貨統合に拒否反応を示したことは、理由なくして生じたことではない。またルペンの率いるフランスの国民戦線(極右政党)などが票を伸ばしたことも偶然ではない(私自身は決して支持しているわけではない。念のため)。フランス社会党までが、これから説明する・国民大衆にとって好ましくない政策にのめり込んでしまったときに、それに反対する人々が取りうる選択肢は限られているからである。ちょうど1932年のドイツの総選挙で(失業政策を放棄した昼ファーディング率いる)SPDに多くの労働者が幻滅したようにである。 ヨーロッパでは、ユーロという単一通貨を創出することは、バンコールという世界貨幣を創出するという戦後通貨体制に関するケインズ案の精神にそうものだと主張する人々がいある。しかし、それはまったく誤りである。 そもそもケインズ案は、各国政府が「完全雇用」をめざして、それぞれ

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    gruza03 2015/06/20
    多くの国(特に中心国)は為替相場を固定化するために、緊縮的な財政政策と非常に引締的な金融政策を強要された。
  • 失業の諸見解

    そもそも失業とは何であり、何故生じるのか? 最も抽象的なレベルでは、一方に労働供給(働きたいと思う人、L)があり、他方に労働需要(企業が雇いたいと思う人の数、N)があり、両者の差 (U =LーN)が失業者である。 現在では、普通、15歳〜64歳の人が生産年齢人口が考えられているが、もちろん、この人口すべてが労働供給ではない。その中には、就学者、専業主婦、働きたくても働けない病人・ケガ人・障碍者がいる。また現在の統計では、会社を解雇されたのち、就職活動をあきらめた人(discouraged people)も労働供給から除かれている。これらの人々の数は、長期的には、歴史的要因によって大きく変化するが、ラフに言うと、短期的には一定と考えることができる。これが実質賃金率によって大きく変化することがないことは、以前のページで説明してある。 一方、労働需要は、企業が生産のために雇いたいと考える労働力(

    gruza03
    gruza03 2015/06/20
    マネタリストは、クラウド・アウトが生じるとはいわない。何故だろうか? 私が政府ではなく、民間人だからである。しかし、市場では、政府の支出したカネと民間人の支出したカネを区別するのだろうか?
  • 何故EU圏、特にユーロ地域は失業率が高いのか?

    1990年代〜21世紀初頭にかけて経済学者に問いかけられた大きな問題があります。それは近年の諸地域、例えばヨーロッパ諸国(EU地域)、とりわけユーロ圏の失業率が高いのは何故かというものです。しばしば、これに関係して米国の失業率が相対的に低い理由は何かという問題も問いかけられていました。実際には、ヨーロッパにも失業率の低い地域があり、また米国でも常に失業率が低かったわけではありません。しかし、<ヨーロッパの高失業vs米国の低失業>という、いわば定型化された質問がしばしば投げかけられていました。 しかも、1994にOECDのEconomic Outlook に「職の研究」(Job Study)が掲載され、「統一理論」(Unified Theory)なるものが主張されるに至り、この問題は世界中の多くの経済学者の関心をひきました。 この「職の研究」(統一理論)によれば、ヨーロッパ諸国の高失業は、①

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    gruza03 2015/06/20
    それにヨーロッパ諸国の諸地域を詳しく見てみると、失業率の高いのは低賃金の地域であり、失業率の低いのは高賃金の地域であるという強い相関があることが分かっています。
  • 金融化 金融の支配する経済

    英国のエリザベス女王が2008年11月5日、つまりあのリーマン・ショックが起きたあと、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスを訪問したとき、「そんなに大きな出来事なら、どうして誰も気づかなかったの?」と質問したというのは有名な話しです。 それに対してどのような回答があったかは知りませんが、確かなことは女王の質問は精確ではなく、気づいている経済学者はかなり多くいたというのが事実です。

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    gruza03 2015/06/20
    規発行株式を購入する場合ならともかく、インカムゲイン(配当)やキャピタルゲイン(資産の売買差益)を得るために金融資産を購入するのを「投資」と呼ぶべきではありません。
  • 何故TPPに反対するべきか? 賃金主導型の成長のために

    ほとんどの経済が「賃金主導型」(wage-led type)となっていることは、今日、少なくとも専門家の間では、よく知られています。が、一般的には知られていないかもしれません。 賃金主導型というのは、労働生産性の上昇に応じて賃金率を引き上げる方が経済発展にとって有利だという意味です。それはまた、労働生産性の上昇があっても賃金を抑制すると、経済的な沈滞や高失業を招くということを意味しています。 このような意見は、いまや国民の「常識」ともなってしまった見解(思想、教義、信条)に反するかもしれません。というのは、高賃金(高負担)が企業の流出を招き、雇用と職の喪失を招いているという言説が流布されてきているからです。 しかし、それは誤りです。ちょっと検討してみましょう。 第一に、理論的に。賃金率の抑制(引き下げ)は、ただちに雇用の拡大を伴わない限り(そして実際には伴わない)、社会全体の賃金所得を抑制

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    gruza03 2015/06/20
    投資は消費需要が拡大しているときに、企業が招来も消費が拡大すると期待して、生産能力を拡大するために行うものです。
  • 賃金主導型の成長を擁護する

    マルク・ラヴォア(Marc Lavoie1)の編著になる『賃金主導の成長』(2013年)が ILO (国際労働機構)の支援を得て、出版されています。また今年、トニー・サールウォール(A, Thirlwall)の『ケインズ派とカルドア派の経済学』、パルグレイブ社から出版されています。 マルク・ラヴォアは、カナダの経済学者で、著名なポスト・ケインズ派の理論家。サールウォールもイギリス生まれの著名なポスト・ケインズ派の経済学者です。ここにポスト・ケインズ派というのは、ケインズの研究・問題提起を真面目に受け止め、それをさらに発展させた経済学を志向する人々の総称であり、出発点は、1930年代のイギリス、ケインズを中心に経済学研究をすすめてていた一群の人々(ケインズ・サーカス)にあるといっても間違いではないでしょう。具体的には、ハロッド、ジョウン・ロビンソン、カルドア、カレツキなどのそうそうたる経済学

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    gruza03 2015/06/20
    結論を言うと、経済は貨幣賃金を引き上げた方が活性化するように出来ている(つまり賃金主導)というのが、経済社会の実相だということです。(労働生産性の上昇率をはるかに超えるような極端な引き上げは別です。)
  • バートランド・ラッセル『怠惰への讃歌』(In praise of idleness)

    現代の経済では、(設備)投資によって技術が発展し、労働生産性が上昇します。したがって人々が前と同じ時間働けばモノがより沢山生産されるようになり、そこで人がより沢山消費しなければ、生産しても売れないという過剰生産(または過小消費)になります。それは一部の人々が過剰となり失業するという事態を招きますが、これは言うまでもなく不況というべき事態に他なりません。 では、どうしたらよいでしょうか? これに対するイギリスの高名な哲学者、バートランド・ラッセルの回答は簡潔明瞭で、一人一人が働く時間を減らせばよいというものです。つまり彼は(昨日のポール・ラファルグと同じく)「怠惰」(idleness)を賞賛したのです。 この単純な、しかし高遠な真理を理解しない人が経済学者の中にも多数います。 そして、そういった人たちは、失業の原因を「高い実質賃金」に求めたり、彼らが「高い実質賃金」の原因と考える政府の労働保

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    gruza03 2015/06/11
    失業の原因を「高い実質賃金」に求めたり、彼らが「高い実質賃金」の原因と考える政府の労働保護政策(最低賃金制度、失業保険制度、解雇規制、団体交渉権の容認など)を非難し、労働市場の柔軟化を推進します。
  • 万国の労働者よ、競争せよ!?

    今から20年ほど前に英国・ロンドンのハーゲート墓地にマルクスの墓を見にいったことがあります。 入口に中年の女性がいて料金を受け取り、かつ案内をしていましたが、別のある人から事前に言われていた通りでした。彼女は私のめあてがマルクスの墓であることを見抜き、「マルクス? この道をずっと行きなさい。途中左に曲がることがあっても、決して右に曲がってはいけません。」と注意してくれました。(この意味はお分かりと思いますが、・・・。) さて、墓には「万国の労働者よ、団結せよ!」(Workers of All Countries, Unite!)というスローガンが書かれていましたが、今私が思うのは、そのスローガンがいまやグローバル化の進展とともに、「万国の労働者よ、競争せよ!」(Workers of All Countries, Compete!)となっていることです。 実際、グローバルなメガ競争の条件下で

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    gruza03 2015/06/11
    もちろん、黒田さんがどんなに異次元の金融緩和をしても事態はかわりません。問題は貨幣供給(日銀当座預金)の不足にあるのではないのですから。
  • 怠ける権利 または労働(苦役)からの解放

    有名なマルクスの娘婿、ポール・ラファルグの著書に『怠ける権利』(Le Droit a la Paresse)という(パンフレット)があります。 これを見て、道学者はなんとふざけたことをと言うかもしれません。いや、道学者でなくても、多くの人もそう思うかもしれません。 しかし、私は決してそうは思いません。むしろ、その通りとさえ考えます。 また歴史上多くの著名な経済学者もそのように考えてきました。ただ「怠ける権利」という言葉を使う代わりに、別の言葉を用いているにすぎません。 マルクスなら「労働からの解放」(Befreihung von Arbeit)といったでしょう。彼の時代には多くの「労働貧民」(これは私の言葉ではなく、当時の用語です)が長時間労働を強いられていました。一日、16時間労働が普通だった時代です。そんなとき、苦役からの解放は(実際に苦役をしている人にとって)いかに人間的な要求だっ

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    gruza03 2015/06/11
    人々をより低賃金で長時間はたからせるべきと考える(主張する)人々が沢山います。J.K.ガルブレイスが皮肉ったように、新古典派の労働市場論はその典型的な「理論」です。
  • ふたたび経済学入門 あわせて主流派(新古典派)の経済学は何故科学ではなかったか

    経済学は、人間の経済行動を明らかにする学問分野ですが、従来の経済学、特に主流派の新古典派経済学には致命的な欠陥があります。このことを抜きにして経済学の入門もありえないと考え、いくつかの事柄を書こうと思います。 来年度、私の所属する大学の経済学部で、現代政治経済学を久しぶりに講じるので、そのためのメモという意味もあります。 さて、経済学は経済行動を研究対象としますが、その際、人間の行動の中の一部分(一側面)を取り出して「経済行動」というだけであり、もちろん純粋な経済行動と言うものはありません。したがって以下で経済行動について述べることは、人間の行動全体について当てはまることが多いはずです。 1)人間行動の縁起性について 〜新古典派の前提の非現実性(現実離れ)を廃す〜 最初に述べたいのは次の点です。 人間の行動は、諸個人を実体と見る態度からは正しく把握できません。 諸個人を実体と見るとは、個人

    gruza03
    gruza03 2015/03/18
    そこで本質的には、マクロをまじめに学問的な研究対象として研究する必要はなく、諸個人の経済行動を説明するミクロ経済学こそが本質的・不可欠の分野ということになります。
  • 有権者の皆さん、「トリクルダウン」などないのですよ!

    「トリクルダウン」という言葉がしばしば口頭にのぼります。いや、この言葉自体は実際には使われることは多くないかもしれませんが、その考えは、政治家やエコノミストによって表明されることはよくあります。 トリクルダウンとは、難しい言葉で「均霑」、まず富裕な人々・企業が潤うと、次に何時かは所得の低い庶民にもおこぼれがしたたり落ちてくるというものです。例えばアベノミクスを続ければ、まず企業の業績が回復し、いつの時か(いったい何年後になるのでしょうか?)従業員の給与も上げられる、といった主張・説明・解説の類です。 今回の選挙でも、それを信じて自民党に投票した人たちが多かったのでしょう。 しかし、残念ながら、それが実現したためしはまずありません。 具体例はいつか話すことにしましょう。ここでは、何故か? を説明します。 最も簡単には次のように説明されます。 国民生産は「国民所得」を生みますが、その国民所得は

    gruza03
    gruza03 2014/12/19
    実際には、賃金所得が増えないと、国民大衆の所得も増えず、消費需要。消費支出も増えずに、スランプ状態が続きます。
  • 人口減少の若干の経済的帰結 ケインズ 3

    前回は、将来の人口減少がどのような経済的帰結(問題)をもたらすかという点について、ケインズの講義の要点を説明しました。 繰り返すと、従来の貯蓄率(投資率)を維持したままで資蓄積を進行させると、過剰投資(生産能力の過剰な成長)または過小消費(有効需要の不足)が生じ、景気が悪化し、悲観主義的な見方が広まることになる、と要約することができます。 数値例では、人口増加率がゼロ、貯蓄率が8パーセント、資係数(K/YまたはI/ΔY)が4の場合、資ストックは毎年(累積的に)2パーセント(I/K)の割合で増加するが、一方で、消費需要は生活水準の増加率(<1パーセント)でしか増加しない、といった具合になります。貯蓄率が15パーセントの場合は、両者の乖離はもっと激しくなります(つまり資ストックの成長率が4パーセント、産出量の成長率が1パーセント)。 この場合、もし資ストックの増加がすべて労働生産性の

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    gruza03 2014/12/10
    所得の高い人ほど、貯蓄性向が高いからです。実は、「抵抗勢力」というのは、ケインズの意味では、むしろ小泉氏の構造改革政策を支持する人々に対して用いられるべきでした。
  • 人口減少の若干の経済的帰結 ケインズ 2 

    ケインズの講演(ガルトン講義)は、雑誌に掲載された論文では全部で21段落からなっています。その全体を要約しながら、解説してゆきたいと思います。 最初の段落。この部分は、講演の導入部分であり、直接、人口の問題を論じているわけではありません。あえて要約すれば、「将来は過去に似ていない」けれども、私たちの想像力や知識が限られているため、しばしば「将来は過去に似ているだろう」と想定して行動すると述べています。もっとも、いま一つベンサム主義(功利主義)学派の導き出した奇妙な考案があるが、その理論にもとづいて行動した人は誰もいない、とも述べます。 ここでケインズが「(人々が)将来は過去に似ているだろう」と想定して行動することに対してどんな評価を下しているのか気になるところです。「将来は過去に似ていない」という最初の言葉からすると、ネガティヴに捉えているようにも思えます。しかし、必ずしもそうとはいえませ

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    gruza03 2014/12/08
    ケインズの本意は、長期にわたる「繁栄の均衡条件」が自動的に整うわけではないことを明らかにし、また他方では、それを確実なものとするための条件を調えることが重要であることを示すことにありました。
  • 人口減少の若干の経済的帰結 ジョン・メイナード・ケインズ

    最後にブログを書いてからだいぶたちます。久しぶりにブログを更新します。 さて、近年の日では、しばしば「少子高齢化」という言葉が口にのぼります。 しかし、藻谷浩介氏(『日の地域力』、『デフレの正体』、『里山資主義』など)が述べるように、この言葉によって示されている事態は必ずしも正確に理解されているとは言い難いようです。が、この点については、後日詳しく触れることとして、ここでは、さしあたり次の二つのことを指摘しておきたいと思います。 1)日では、戦後、ある時期から出生数(births)(出生率ではなく、絶対値です)が急激に減少し、その後、第二のある時期から現在まで出生数は急激ではありませんが、徐々に減少してきました。ここで「ある時期」というのは、いわゆる団塊の世代の出生数がピークに達した1947年以降であり、その後、20年以上が経って団塊の世代が子供をもうけるようになったとき、出生数は

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    gruza03 2014/12/07
    ガルトン講義で指摘したことは、人口(正確には生産年齢人口)の減少に実際に直面している日本の経済社会を考えるときに、きわめて重要と考えられます。
  • 現実世界の経済学 Globalization and Society: アベノミクスを採点する

    投票日が近づいてきました。 自民党・安倍首相は、「アベノミックス」なるものをさかんに宣伝しています。 しかし、それが如何にデタラメなものか、その要点を簡単に指摘しておきます。 1)「異次元の金融緩和」、2%のインフレが「デフレ不況」を克服するという主張 しかし、実際は、 ・実質賃金の低下 物価上昇は上昇しましたが、民間大企業でさえ今春のベースアップは、せいぜ    い2千円程度。これは実質賃金が低下したことを示しています。 おまけに、先日発表されたように、前四半期のGDPは大幅マイナス。 ・マネタリーベースとマネーサプライ 「異次元の金融緩和」によって日銀から市中銀行への貨幣供給(マネタリーベ    ース)は、2013年春から現在まで大幅に増加しました。しかし、市中銀行から     人々(個人、企業など)に対する貨幣供給(貨幣ストック)、特に貸付額はほと    んどまったく増えていません。

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    gruza03 2014/12/07
    もしデフレを物価水準の低下という意味で用いるならば、日本経済はデフレではありませんでした。しかし、着実に低下してきたものがあります。それは日本社会全体の賃金総額(貨幣賃金)の持続的低下です。
  • ジョン・メイナード・ケインズ「国民的自給」(1933年)を訳す

    1933年にケインズは「国民的自給」という論文を執筆し、発表しました。 John Maynard Keynes, "The National Self-Sufficiency," The Yale Review, Vol.22, no.4 (June, 1933), pp.755-769. この論文は、ケインズがいわばグローバル化と自由貿易主義に決別を告げた宣言書とでもいうべきものです。 原文は、私が出会った中でもかなり難解な英文で書かれていますが、一読の価値ある論文と考えて日語に訳してみました。間違っているところがあるかもしれませんが、以下に紹介します。なお、公表から50年以上過ぎており、著作権の問題はありません。 私は、ほとんどの英国人と同様に、自由貿易は理性的で教養のある人ならば疑ってはならない経済学上の教義であるばかりでなく、またほとんど道徳律の一部として尊敬すべきものと教育され

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    gruza03 2014/05/17