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ブックマーク / daen.hatenablog.jp (20)

  • デモクラシーの使用環境――イアン・シャピロ「民主主義理論の現在」がすごくない - 誰が得するんだよこの書評

    1.良いデモクラシーの評価基準 シャピロは民主主義(デモクラシー)の良し悪しを評価する基準として「不当な支配をどれだけか減らせるか」という基準を提示します。ここでいう「不当な支配」とは、自分の意思に反した拘束を強いられる状態です。たとえば、学校の先生が生徒に宿題を与えるような命令関係は形式的にみれば支配といえるかもしれませんが、生徒に退学する自由がある以上は、不当な支配とはいえません。 しかし僕はこの「不当な支配の最小化」の基準はあいまいすぎると考えます。真に支配を無くしたいのならば、デモクラシー(多数決)は必要ないはずです。結局、多数決で決めるということは、多数派が少数派を従わせることを認容することでしかありません。だから、すべての個人が自分に利すると思ったことだけに合意する、契約ベースの社会こそが、不当な支配の最小化の行き着く先となるはずです。 とはいえ、この社会では国家は何もしないの

    デモクラシーの使用環境――イアン・シャピロ「民主主義理論の現在」がすごくない - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2011/01/11
    あるべき姿はどうなるのでしょうか。まず中央集権国家は解体され、30万人くらいの自治体に強大な権限が付与されます。徴税権・法律制定権・司法権など、現在の国家が有している権力はすべて自治体が有します。
  • 誰が得するんだよこの本ランキング・2010 - 誰が得するんだよこの書評

    今年もやってまいりました、年間ベストを選出する企画「誰が得するんだよこのランキング」です。気持ちとしては「誰が損するんだよこのランキング」にしたいところですが、ブログ名との兼ね合いでこのタイトルになっています。実用書と小説それぞれベスト10を発表するので計20作です。 去年のランキングはこちら。 誰が得するんだよこのランキング・2009 実用書 第10位 佐藤優「国家の罠」 鈴木宗男と共に国策捜査で起訴された外務官僚の暴露。なぜ起訴されたのか、検察官との尋問でどのように議論したのか、そもそもこの捜査は国益にかなうものだったのか、など興味深いトピックが目白押しです。検察による役人の不当な起訴がなされ、検察の暴走だとか言われている今こそ読むべき一冊でしょう。また、ノンフィクションとしてすさまじい面白さがあり、文才を感じさせます。 実用書 第9位 リチャード・セイラー, キャス・サンステ

    誰が得するんだよこの本ランキング・2010 - 誰が得するんだよこの書評
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    gruza03 2010/12/17
  • 複数の自己たちのためのリバタリアン・パターナリズム - 誰が得するんだよこの書評

    法は誰かが誰かを拘束するものである。治者と被治者の自同性が認められれば、その拘束には正当性が認められる。この考え方の前提にあるのは「自分のことは自分が一番よく知っており、その自分が決めたルールのなのだから、自分は拘束される」という思想である。だがこの前提は正しいのだろうか? 少なくとも僕は自分のことがよくわからない。試験前に、よーしパパ今日は商法8時間勉強しちゃうぞーと意気込んでいたら、なぜかニコニコ動画でくだらない音MADを3時間見てる自分に気づき、愕然としたりする。そんなときは自分というものがいい加減な概念だなと思う。だが現在の自分が過去の自分の想像とは別物だからといって、人格の連続性が失われるわけではない。自己嫌悪することもあるが、なお人格の同一性は保たれている。 しかし、いったんここで人格というものを分解して考えてみたい。人格は、複数の異なる欲望を持つ「自己」の集まりにすぎない、と

    複数の自己たちのためのリバタリアン・パターナリズム - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/12/14
    飲酒規制・麻薬規制・売春規制・社会保障制度・教育制度などなど、どういった「自己」が望ましいかは判断が難しい。
  • 共生の作法 / 井上達夫 - 誰が得するんだよこの書評

    これぞ正義論。絶対的な正義などないのだから正義論なんて論じるまでもない、という冷めた価値相対主義は、実のところ正義に対する根的な批判ではない。それは善にたいしては有効な反論であるかもしれないが、正義にとっては致命的な反論にはなっていない。たしかに文化や習俗が異なる者がいくら話し合っても、有限時間内にそれぞれが納得のできる「正解」をすべての争点において導きだすことは不可能だろう。「正解」の確証可能性がないという意味では、たしかに正義論はたわ言なのかもしれない。しかしそれは正義論がまったく不可能であるとか、まったく使えないものであるということを意味しない。たとえ完璧な「正解」へと至ることはなくても、議論をすることで僕たちはよりマシな結論へたどり着くことはできる。この暫定的な結論を絶えずバージョンアップさせていく過程を正義論と名付けるならば、それは可能であるし有益である。では井上が語る正義はな

    共生の作法 / 井上達夫 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/12/13
    誰かが誰かを正義の名の下に強制するような暴力的状態ではなく、ゆるやかな対話の機会が保障されているような、そうした状態だ。
  • 2円で刑務所、5億で執行猶予 / 浜井浩一 - 誰が得するんだよこの書評

    刑法・刑事訴訟法について学ぶ人は読んで損はないです。刑事政策の専門家が、治安にまつわる神話をデータに基づいて検証した。まず「少年犯罪は減っており、むしろ高齢者の犯罪が増えている」のが意外でした。万引きについては1980年代には50%が少年、10%が高齢者でしたが、2006年には30%が高齢者になり少年を上回ります。また刑務所に入る人の大半が「悪い人」というよりも「経済力を失い、社会的に孤立した人」という実態があります。中高齢者の犯罪は年々増加している今、刑務所が身寄りのない老人のセイフティーネットとして機能している状態です。つまり監獄が一種のベーシック・インカム(BI)になっています。 個人的にBIには、公務員契約としての性質があると思っています。三・寝る場所という最低限の生活を報酬として与える代わりに、犯罪を起こさないという労務を課す、公務員契約です。そうすると、BI導入は国土の全体

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    gruza03 2010/12/08
    三食・寝る場所という最低限の生活を報酬として与える代わりに、犯罪を起こさないという労務を課す、公務員契約です。そうすると、BI導入は国土の全体を監獄にしてまおうというプロジェクトなのです。
  • 父として考える / 東浩紀・宮台真司 - 誰が得するんだよこの書評

    最近の僕は自由主義が世論の支持を得ることに悲観的で、経済的に効率な社会なんてものは夢だと諦めかけています。そうすると、貧しいながらも楽しい我が家、ではないけど、厚みのあるコミュニティができれば、とりあえず幸福は確保できるかな、ということになります。実際僕も物欲がないので月20万くらいあって、気の合う友達と議論できる時間があれば、ぜんぜん生きていけます。書は、子供受けしそうなリベラルな主張をしてきた二人がいざ自分に子どもができる段階になって、地に足つけて地域社会を語らざるを得なくなった、という対談。とくに東はこんなダメ親父でいいんだろうかという自虐を交えつつ、それでも真剣に家族・コミュニティと国家運営のはざまを語ろうとしており、なかなか共感できました。

    父として考える / 東浩紀・宮台真司 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/12/04
    本書は、子供受けしそうなリベラルな主張をしてきた二人がいざ自分に子どもができる段階になって、地に足つけて地域社会を語らざるを得なくなった、という対談本。
  • 安全保障の民営化がもたらす外交の変容―――P・W・シンガー「戦争請負会社」 - 誰が得するんだよこの書評

    1996年、A国中央政府は絶望的な状況にあった。太平洋に浮かぶ群島国家であったA国は、その経済を鉱山資源の輸出に依存しきっていた。その鉱山が反政府武力組織に占領されたのだ。しかし、国防軍にその奪回のための軍事力はなかった。旧宗主国からの援助も断られたA国は、それまで同盟関係になかったBに軍事援助を依頼した。Bは360万ドル(A国国防軍の年間予算の150%に相当する)の対価として最新鋭の攻撃部隊による反撃を約束した。この契約金の出所は未公認の予算削減と占拠された鉱山の国有化と売却である。 この取引は国民的な議論も議会への通知もなく行われた。この取引の過程で元国防大臣が50万ドルの賄賂を受け取り、行政府内の権力者に根回しをしていたことが後に発覚した。その後、軍の指導者がこのスキャンダルをもとに首相を批難する。取引の詳細が民衆に知らされると、軍を支持するデモがはじまり、文民政府は最終的に非を認め

    安全保障の民営化がもたらす外交の変容―――P・W・シンガー「戦争請負会社」 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/11/23
    国家が軍事力を独占した時代の終わり/「行政府が結果責任・説明責任を負わなくていい」/「暴力装置」の官から民へ。「暴力装置」が国家そのもので無くなることが、どれほどの恐怖をもたらすのだろう。
  • 実践 行動経済学 / リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン - 誰が得するんだよこの書評

    リバタリアン・パターナリズムという思想がある。リバタリアニズムは「市民はバカだが政府はもっとバカなので、市民の判断に任せるしかない」というものであり、パターナリズムは「政府はバカだが市民はもっとバカなので、政府が介入するしかい」というものだ。これほどかけ離れた思想がくっつくことなどないように思えるが、行動経済学者リチャード・セイラーはこう考える。「自由とは、人々が「選択の自由」を実感できることであり、実際に無限の選択肢を用意しなくともよいはずだ。そもそも無限の選択肢など幻想にすぎない。むしろ政府が恣意的に選択肢を用意することで、人々がより幸福になることもありうるはずだ」と。 たとえばカフェテリア(学)の料理の配列を変えるだけで、その消費量を25%もコントロールすることができるという統計がある。これは人々が、より近くの料理を取り、遠くの料理をとらない傾向があるためだ。では、カフェテリアの管

    実践 行動経済学 / リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/10/30
    僕たちは無数の目的をもつ組織の洗脳に絶えずさらされている。現実は常に何らかの意図により修正されている。
  • 平岡公彦氏・finalvent氏・とつげき東北氏のニーチェ解釈――永井均「これがニーチェだ」がすごい - 誰が得するんだよこの書評

    平岡公彦氏に紹介された永井均「これがニーチェだ」をようやく読みました。僕の感覚からすると非常にわかりやすかったです。紹介していただいてどうもありがとうございます。僕がどうしても理解できなかったのは「どうしてニーチェは健全だとか健康だとかにこだわっているんだろう?」ということでした。だから「健全さ」すらも相対化してありとあらゆる価値基準にとらわれることなく好き勝手に生きればいいという主旨のことを述べました。しかし、むしろニーチェの思想は「何が健全か」よりも「何が醜悪か」で考えた方がわかりやすいように思います。というわけで、永井均の解釈に沿って「何が醜悪か」について整理します。 1.第一の醜悪なもの――弱いもの・劣悪なもの 「優れた能力」というものについて考えてみましょう。 たとえば、「速く走れること」は、「速く走れないこと」よりも明らかに「よいこと」です。こうした価値観に対して、速く走ること

    gruza03
    gruza03 2010/10/20
    ニーチェの思想は「何が健全か」よりも「何が醜悪か」で考えた方がわかりやすい
  • 隷従への道 / ハイエク - 誰が得するんだよこの書評

    そろそろこの名著を紹介しておこう。 世界を上下に分けて下に味方するのが左翼、世界をウチとソトに分けてウチに味方するのが右翼 - Zopeジャンキー日記  でリバタリアニズムが支持されているのは「なにが正しいかはわからない。だから権力や暴力でなにかを強制するのでなく、自由にやってもらうしかない」という理由だった。 しかしさらに重要な理由は、何が正しいかについて大方の合意ができたとしても、そしてそれがみんなの善意に基づくものだとしても、人類はこれまで正反対の結果を量産してきたという事実だろう。たとえば格差のない福祉社会とか言われても誰も反対しないだろうが、そうしたスローガンのために国家権力が使われた結果は悲惨なものとなった。計画経済(計画化)を批判したハイエクによれば、全体主義は福祉国家をめざす純朴な人びとがまねいた予期せぬ誤りであった。 ハイエクは、全体主義を集産主義の一形態とする。それは、

    隷従への道 / ハイエク - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/10/20
    計画経済を批判したハイエクによれば、全体主義は福祉国家をめざす純朴な人びとがまねいた予期せぬ誤り。 福祉国家とは、目的未定のプロジェクトを強制的に行わせる建前を官僚に与える民主制とは相いれない理念
  • 自由からの逃走 / エーリッヒ・フロム - 誰が得するんだよこの書評

    フロムによれば、近代人は自由になったが孤独になった。この孤独から逃れるために近代人は「個人的自己からのがれること、自分自身を失うこと、いいかえれば、自由の重荷からのがれること」*1  を望んだ。これが全体主義の起源であった。しかし、ここで問われている「自己」の定義がいまいちはっきりとしない。自分自身を失いたいのならさっさと首でも吊ればいいのである。そうはせずに思考停止に陥って全体主義の歯車と化したいというのだから、ここではやはりもっと正確な定義を与えるべきだろう。 僕は、「自己」は視線だと考える。それは、外部から存在としての「わたし」を眺める想像上の視線なのだ。まったく意味がわからないだろうけどもうすこし話をきいてほしい。この話はそもそも自己とか自我とか心なんていうものが、なぜ生まれたのかということにさかのぼる。はっきり言って意識・心なんてものは生きていく上で必要ない。ではなぜこんな心なん

    自由からの逃走 / エーリッヒ・フロム - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/10/20
    思考停止に陥って全体主義の歯車と化したいというのだから、ここではやはりもっと正確な定義を与えるべきだろう。僕は「自己」は視線だと考える。それは、外部から存在としての「わたし」を眺める想像上の視線なのだ
  • リバタリアニズムと同性婚に向けての試論―私事化の戦略― / 橋本祐子 - 誰が得するんだよこの書評

    アメリカ合衆国連邦最高裁判所は同性愛者の性行為を禁ずるソドミー法を、憲法修正第14条違反として無効とした。これを機に同性婚の是非についても論争がなされたが、リバタリアンであるポズナーの意見は、同性愛者の性行為は合法であるが、同性婚は認められないという現実主義的なものであった。 まずソドミー法の立法目的は「同性愛行為の減少によるエイズ蔓延防止」だとされている。しかし、それならエイズを伝染させる種類の同性愛行為のみ禁止すればいい。つまり、口腔性交も肛門性交も禁ずるのではなく、エイズ伝染の可能性が高い肛門性交だけを禁止して、口腔性交を奨励すればいいのだ。しかし同性愛者の肛門性交だけを取り締まる法というものは、異性愛者の膣性交を禁ずるのと同じくらい執行コストが高い。ならば、異性愛者の膣性交がエイズ感染の危険があるにも関わらず合法とされている以上、ソドミー法自体を廃止すべきだろう。 しかしポズナーは

    リバタリアニズムと同性婚に向けての試論―私事化の戦略― / 橋本祐子 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/10/06
    同性愛者の肛門性交だけを取り締まる法は、異性愛者の膣性交を禁ずるのと同じくらい執行コストが高い。同性愛者の性行為は合法であるが、同性婚は認めない現実主義的でも介入するという点でリバタリアンは納得しない
  • 鳩山由紀夫の政治を科学する / 高橋洋一・竹内薫 - 誰が得するんだよこの書評

    菅政権続投というわけで、なにやら支持率も上がっているみたいです。しかしへろへろだった鳩山政権と一体何が違うのか見えてこないので、なんとなく様子見という人が多いんじゃないでしょうか。というわけで、今問うべきなのは鳩山政権とは何だったのかであります。鳩山政権の支持母体はどこで、そのためにどんな政策をとっているかの分析するのが書ですが、元官僚というだけあって省庁関連の話は面白い。たとえば、なぜ財務省と経産省が優遇され、国交省・農林省あたりは叩かれるのかですが、これは保護産業への補助金を断つという全体最適の戦略でもあり、同時に自民党の影響力をなるべく削ごうという党としての合理性もある解なわけです。 うーん、ただ一般市民が鳩山政権の政策を評価するのに役立つかといったらあんまりですね。そもそも政策を評価するためにはその基準が示されていなければなりません。そしてその基準が他の数ある基準と比べてマシなも

    鳩山由紀夫の政治を科学する / 高橋洋一・竹内薫 - 誰が得するんだよこの書評
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    gruza03 2010/09/17
    なぜ財務省と経産省が優遇され、国交省・農林省あたりは叩かれるのかですが、これは保護産業への補助金を断つという全体最適の戦略でもあり~/内需を縮小して、格差を拡大し固定する。その意味もあるのだけどね。
  • 思考の整理学 / 外山滋比古 - 誰が得するんだよこの書評

    面白アナロジーでなんとなくわかったような気にさせて、その実まったくなにも得るところがないという驚異の書です。一体何の研究をしている人なんだと思って肩書きを見たら文学博士で、こういうものを読むたびに早く文学部などというものは廃止しなくてはと義憤にかられてしまいます。話はそれますが、僕は文学自体は好きなのですが、それを学ぶ対象にするという発想がまったく理解できず、あげく教育の名の下に補助金までつけてあげる現状には憤死寸前です。

    思考の整理学 / 外山滋比古 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/09/08
    面白アナロジーでなんとなくわかったような気にさせて、その実まったくなにも得るところがないという驚異の書です。こういうものを読むたびに早く文学部などというものは廃止しなくてはと義憤にかられてしまいます。
  • TAP / グレッグ・イーガン - 誰が得するんだよこの書評

    究極の言語というものが、もしあるとするのならば、それはどんなものになるだろうか。それは「ことばでは言い表せない感動」とやらも、容赦なく言語化してしまうものになるだろう。人間が感じうるありとあらゆる感覚/情動、そのすべてのパターンを正確に言語のかたちに換言してしまうのだ。人間はほとんどの情報を体感するが、言語を通した情報だけは「体感を抜きにした認識」ができる。すばらしい風景の描写を読み、そのイメージに酔いしれることもできる一方で、その描写が言わんとしていることをただそのまま理解するという乾いた認識もできる。究極の言語を手にした人は、ありとあらゆる経験を正確に認識してしまうのだろう。しかしその正確性ゆえに誤解や誤読が一切できなくなってしまうのだから、今までなあなあでやってきたところができなくなってしまい困るかもしれない。 表題作はいつものイーガンです。安心の面白さ。似たような話では長谷敏司「あ

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    gruza03
    gruza03 2010/08/27
  • 西の魔女が死んだ / 梨木香歩 - 誰が得するんだよこの書評

    思春期の女の子がちょっと不思議な場所で居候するという「千と千尋の神隠し」的なストーリーです。まあファンタジーではないんで不思議っていってもそこまでではないんですが。しかし、これはねえ。なんというか、あまりにも安易。安易に決着をつけすぎてる。主人公の女の子はクラス内政治に失敗していじめられており、なおかつ「ダイの大冒険」におけるポップのように「人はいつか死んで消滅する」という生の有限性に気づいてボロボロになっているのです。こんな状況を覆すには、森絵都「カラフル」ぐらいの冴えた一撃をもってこないといかんのですよ。書はなにやら小学校の課題図書になっているらしいですが、頭のいい子なら逆に絶望するんじゃないか、ていうレベル。

    西の魔女が死んだ / 梨木香歩 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/08/18
    本書はなにやら小学校の課題図書になっているらしいですが、頭のいい子なら逆に絶望するんじゃないか、ていうレベル。
  • 僕たちは愚民である――ブライアン・カプラン「選挙の経済学」がすごい part3 - 誰が得するんだよこの書評

    5.「合理的な非合理性」理論において集計の奇跡がおきない理由 合理的選択理論は、実証的に反例が見つかっている。有権者が利己的に投票するならば、金持ちほど金持ち優遇の政党に投票し、老人ほど老人優遇の政党に投票するはずだ。しかし現実において、金持ちが社会保障の強化を掲げるアメリカ民主党に投票するケースがあるし、若者が老人優遇の政党に投票しないかといったらそんなことはない。 年長者だからと言って、他の世代の人々よりも社会保障やメディケアを強く支持しているわけではない。高齢者はそれらの政策の強く支持しているが、若者も実はそうである。(中略)国民全体と比較して、失業者は政府が保証する雇用をせいぜい少しだけ多く支持しているにすぎないし、保険未加入者も国民健康保険をせいぜい少しだけ多く支持しているにすぎない。自己利益の尺度からは、経済政策に対する信念をほとんど予測することができない。たとえ利害が生死に関

    僕たちは愚民である――ブライアン・カプラン「選挙の経済学」がすごい part3 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/07/16
    5.「合理的な非合理性」理論において集計の奇跡がおきない理由6.デモクラシー原理主義と市場原理主義/問題は、バカは確率的にランダムに分布してバカなわけではなく、偏ったバカだということだ。
  • 僕たちは愚民である――ブライアン・カプラン「選挙の経済学」がすごい part2 - 誰が得するんだよこの書評

    前回のエントリで説明したように日常生活においては明晰な僕たちも、こと投票箱の前ではいかんなく愚民っぷりを発揮する。だが、その愚かさにもかかわらず民主主義は一応機能しているように見える。この理由はなんだろうか。 3.集計の奇跡 そこで思考実験だ。ここにバカな投票者で100%みたされた選挙区があるとしよう。小選挙区制で二大政党制である。この場合、バカはランダムに投票するので、政党Aに50%、政党Bに50%の票が入る。つまり、政策は適当に選ばれる。バカに民主主義をやらせることはできない、という寓話だ。 さてここに、バカ99%、まともな人1%の選挙区があるとする。この場合も、バカはランダムに投票するので、政党Aに49.5%、政党Bに 49.5%の票が入る。すると、1%のまともな人がキャスティングボードを握ることになり、1%のまともな人が選択したまともな政策が、全体で選ばれることになる。仮に大半がバ

    僕たちは愚民である――ブライアン・カプラン「選挙の経済学」がすごい part2 - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/07/16
    3.集計の奇跡4.合理的選択理論において集計の奇跡がおきない理由/バカな有権者でも、そのうち一握りさえまともな人がいれば、民主主義は衆愚政治に陥らずにすむのだ。これは集計の奇跡と呼ばれている。
  • 僕たちは愚民である――ブライアン・カプラン「選挙の経済学」がすごい part1 - 誰が得するんだよこの書評

    鳩山政権がほぼ何もしなかったに等しい8カ月を終えた後、管政権になったとたん支持率が急回復して、一体この国の人たちは何を考えているんだと不安になった。経済政策のダメさ加減では鳩山も管もどっこいどっこいなのに、いくら期待をこめての支持とはいえ、ちょっとひどい。こうした状況にたいして「政治にもっと民意させろ」と説く人もいる。しかし書では皮肉なことに「民意を反映させても国民の利益にならない」とデータで示している。 1.合理的選択理論(Rational Choice Theory) 「投票者はすべて利己的である。よって自己の利益を最大化するという選好をもっている。投票行動においても、すべての有権者は利己的=合理的に行動する」という理論。利己的投票者仮説が元になっている。政治学者の多くがこのアプローチを採用している。この合理的選択理論からは2つの仮説が導き出される。 1.合理的棄権仮説 小選挙区1区

    僕たちは愚民である――ブライアン・カプラン「選挙の経済学」がすごい part1 - 誰が得するんだよこの書評
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    gruza03 2010/07/16
    1.合理的選択理論/2.「合理的な非合理性」理論/経済政策のダメさ加減では鳩山も管もどっこいどっこいなのに、いくら期待をこめての支持とはいえ、ちょっとひどい。民意を反映させても国民の利益にならない」
  • 利己的なサル、他人を思いやるサル―モラルはなぜ生まれたのか / フランス・ドゥ・ヴァール - 誰が得するんだよこの書評

    なぜ僕たちは合理的(利己的)でないのか。新古典派経済学では、ヒトはすべて合理的(利己的)に行動するとされている。政治学の合理的選択理論(Rational Choice Theory) においても、その前提は共有されている。しかし、ヒトは合理的(利己的)なホモ・エコノミクスではない。非合理的(利他的)なホモ・サピエンスなのだ。 動物は決して利己的な存在ではなく、さまざまな利他的な行動をとることが明らかにされている。その理由は、そうした利他的な性質が、環境に適応する上で有利だったからだ。利他的な性質の起源として、2つのメカニズムが考えられる。 1.血縁淘汰(kin selection) (生物学者)ハミルトンによれば、利己的な遺伝子の乗り物である生物も利己的であるとは限らない。進化的エゴイズムと習俗的エゴイズムを混同して、利己的な遺伝子をもっているから動物はすべて利己的な存在だとする仮説は、実

    利己的なサル、他人を思いやるサル―モラルはなぜ生まれたのか / フランス・ドゥ・ヴァール - 誰が得するんだよこの書評
    gruza03
    gruza03 2010/07/16
    1.血縁淘汰(kin selection)2.群淘汰(group selection)3.バイアスの起源
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