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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (18)

  • 『三体』の劉慈欣と並び称される作家・韓松による超ド級のSF長篇──『無限病院』 - 基本読書

    無限病院 医院 作者:韓 松早川書房Amazonこの『無限病院』は、中国SF四天王の一角にして『三体』の劉慈欣と並び称される韓松による〈医院〉三部作の開幕篇だ。帯の惹句には劉慈欣が『中国SFをピラミッドとするならば、私が書くような二次元のSFはその土台、韓松が書く三次元のSFはその頂点だ。』と寄せていて、読み始める前からハードルは上がりに上がっていた。 それが実際読み始めると冒頭130ページほどは正直いって何を言っているのかよくわからず、そもそも世界はおかしいのだが、同時におかしな登場人物たちが理屈が通るような通らぬようなことをばらばらに語っている。冒頭は不条理のカフカか幻覚のディックかといった間をふらふらとさまよいつつ、次第に物語は世における医療と未来を問う医療SFと化し、そのままSF的に展開するのかと思いきや、中盤以降は突然村上春樹的なメタファーとセックスに溢れた世界に突入し──と、

    『三体』の劉慈欣と並び称される作家・韓松による超ド級のSF長篇──『無限病院』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2024/10/24
    マイクラにはならなそうかな〜
  • どうすれば相手の意見を変えられるのか──『エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?』 - 基本読書

    エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか? 作者:リー・マッキンタイア国書刊行会Amazonこの『エビデンスを嫌う人たち』は、『「科学的に正しい」とは何か』の邦訳が先日刊行された気鋭の哲学者リー・マッキンタイアによる「科学否定論者を説得するための方法」についての一冊である。科学否定論者とは、たとえば人為的な気候変動は起こっていないと主張する気候変動否定者に、反ワクチン、反コロナ、果てには地球は平面だと主張する地球平面説を支持している人らのことを指している。 こうした科学否定論者に共通点は存在するのか。また、彼らにエビデンスを提供することでその考えを変えることができるのか。エビデンスを提供するといっても、どのように提供するのが最も効果的なのか。エビデンスで人の意見が変えられないのだとしたら、他に変える方法はあるのかを、様々な研究をもとにして紹介する──だけでなく、

    どうすれば相手の意見を変えられるのか──『エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2024/06/21
  • 男性が孤独に陥りがちな理由について──『男はなぜ孤独死するのか 男たちの成功の代償』 - 基本読書

    男はなぜ孤独死するのか 作者:トーマス・ジョイナー晶文社Amazonこの『男はなぜ孤独死するのか』は主に男性の孤独に焦点をあて、なぜ男性は孤独に陥りがちなのか。そして、(人が望まぬ)孤独をどう解消すればよいのかについて書かれた一冊である。「孤独死」というと日では一般的に「一人暮らしの人が誰にも看取られずに死ぬこと」を指すが、書の原題は『Lonely at the Top』で、あくまでも孤独それ自体がテーマであり、孤独死がテーマになっているわけではない。孤独死が良い/悪いという話はないし、家で一人で死ぬことに関する言及もない。 なぜ「男性の孤独」に注目する必要があるのか さて、ではなぜ「男性の孤独」に注目する必要があるのか。孤独に陥るのは何も男性だけの特権ではないのだから、女性も男性もひっくるめて論じればいいではないかと思うかもしれないが、これにはいくつかの理由が存在している。たとえば

    男性が孤独に陥りがちな理由について──『男はなぜ孤独死するのか 男たちの成功の代償』 - 基本読書
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    hachi 2024/06/07
  • 「読む」とき、何が起こっているのか?──『読めない人が「読む」世界:読むことの多様性』 - 基本読書

    読めない人が「読む」世界:読むことの多様性 作者:マシュー・ルベリー原書房Amazon読書は日常的な行為ではあるが、実はそのやり方は人によって大きく異なる。書かれている文字を読んで、その意味を理解したり解釈したりするっていうだけでは? と思うかもしれないが、そこに収まらない読み方をする人が多数いるのである。 書『読めない人が「読む」世界』(原題:Readers Block)は、型破りな方法で読む人を取り上げていく一冊だ。たとえば認知症の患者は、少しずつ記憶が抜け落ち、短期的な記憶力も低下していく。長篇がスラスラ読めた人であっても、認知症が進行するにつれ、一ページ分の記憶も持たなくなり、話の筋が追えなくなる。そうした人たちは単純に「読む」という営みから除外されるのかといえば、そうではない。 ある認知症患者は長篇を読む喜びを諦めた代わりに短篇をじっくりと読み、楽しむ方向に切り替え、物語の展開

    「読む」とき、何が起こっているのか?──『読めない人が「読む」世界:読むことの多様性』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2024/04/30
  • 入り組んだイスラエルの歴史、その問題を、解きほぐすように解説していくノンフィクション──『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』 - 基本読書

    イスラエル 人類史上最もやっかいな問題 作者:ダニエル ソカッチNHK出版Amazon2023年の10月7日に勃発した、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃。件については今なお目まぐるしく状況が動いていて日々ニュースが絶えないが、その背景には複雑な歴史や思想があって素人が理解するのは容易ではない。Web記事なども多数読んだが、まとまった情報がほしい時はやはり書籍に限る。 いくつか読んだが、中でもイスラエルの民主主義を達成させるためのNGO、「新イスラエル基金」のCEOの著者ダニエル・ソカッチによる『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』は今年(2023年)の2月に刊行されたばかりのノンフィクションで、現在の事態をフラットに、かといって事実を列挙するだけではない形でイスラエルーパレスチナ間の問題を説明していて、特におすすめの一冊だったので紹介したい。 著者は書を、ある特定の

    入り組んだイスラエルの歴史、その問題を、解きほぐすように解説していくノンフィクション──『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2023/10/31
  • 韓国SFに多大な影響を与え、現代韓国で「最もSFらしいSFを書く」といわれる作家のSF短篇集──『どれほど似ているか』 - 基本読書

    どれほど似ているか 作者:キム・ボヨン河出書房新社Amazonこの『どれほど似ているか』は韓国の作家キム・ボヨンのSF短篇集である。「文藝」に掲載されたされた「赤ずきんのお嬢さん」や「SFマガジン」に掲載された「0と1の間」など断片的に作品が紹介されてきたが、一冊丸々の翻訳はおそらくこれが初。 ペ・ミョンフンの『タワー』、チャン・ガンミョンの『極めて私的な超能力』など近年翻訳される韓国SF短篇集の質は非常に高く、作にもかなり期待をしながら読み始めたが、これが既訳の韓国SF作品群に負けず劣らずおもしろい! (翻訳されてくる)韓国SFの特徴の一つは韓国社会の苦境や実際の事件などが作品に反映されていることが多い点にあり、作でもそうした面は多々あるのだが、超能力/能力バトルものからAIを扱ったミステリといった多彩な題材がそうした社会問題的なテーマと鮮やかに結びついている。池澤春菜さんの解説で、

    韓国SFに多大な影響を与え、現代韓国で「最もSFらしいSFを書く」といわれる作家のSF短篇集──『どれほど似ているか』 - 基本読書
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    hachi 2023/06/06
  • 東京創元社のSF小説50%割引の電子書籍セールがきたので、オススメを紹介する - 基本読書

    創元SF文庫が創刊60周年ということで、創元SF文庫総解説などいろいろな企画が動いている。その流れのひとつで、ゴールデンウィークに合わせて創元SF文庫作品が中心にKindleで50%オフセールがはじまっているので、今回は僕の個人的なオススメを中心に紹介していきたい。このブログでは早川書房セールはよく紹介しているけど東京創元社セールの紹介ははじめてなので、掘り出し物もあるだろう。 Amazon.co.jp: 東京創元社: Kindleストア まずは豊富な海外のテーマ・アンソロジーから スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選 (創元SF文庫) 作者:ケン・リュウ,桜坂 洋,アンディ・ウィアー,デヴィッド・バー・カートリー,ホリー・ブラック,チャールズ・ユウ,チャーリー・ジェーン・アンダース,ダニエル・H・ウィルソン,ミッキー・ニールソン,ショーナン・マグワイア,ヒュー・ハウイー,コリ

    東京創元社のSF小説50%割引の電子書籍セールがきたので、オススメを紹介する - 基本読書
    hachi
    hachi 2023/05/03
  • インカ帝国「が」スペインを侵略した架空の歴史を描く、読む『シヴィライゼーション』とでも言うべき改変歴史長篇──『文明交錯』 - 基本読書

    文明交錯 (海外文学セレクション) 作者:ローラン・ビネ東京創元社Amazonこの『文明交錯』は、スペインがインカ帝国を征服した史実を反転させ、逆にインカ帝国がスペインを征服していたら世界はどう変わっていったのかを描き出す歴史改変長篇だ。著者は『HHhH――1942年』などで知られるローラン・ビネ。 『HHhH』はメタ歴史小説とでもいうべき傑作で、作もその設定のキャッチーさからかなり期待して読み始めたが、期待以上のおもしろさだ。普通に考えたら資源にも装備にも劣るインカ帝国がスペインを征服できるはずはないのだが、何が起こったらそれが起こり得るのか? を追求していく手付きはまるでノンフィクションを読んでいるかのよう。そして、征服の過程、また征服を終えた後、反乱を抑え周辺諸国と渡り合っていくために内政をいちから整えていく様はまるでゲーム『シヴィライゼーション』をプレイしているかのようなスピード

    インカ帝国「が」スペインを侵略した架空の歴史を描く、読む『シヴィライゼーション』とでも言うべき改変歴史長篇──『文明交錯』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2023/04/15
  • 会話にはルールがある──『会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか』 - 基本読書

    会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか (文春e-book) 作者:ニック・エンフィールド文藝春秋Amazon書『会話の科学』は、会話全般に光をあて、そこにどのようなルールや傾向があるかを分析していく一冊だ。我々は会話をしている時、無意識的にそうしたルールを遵守していて、(ルールを)守らないと……とがんばっていることはそうそうないが、書を読めば確かに自分がルールを無意識的に遵守していることに気がつくだろう。 あるいは、会話がうまくいかないと感じている人は、自分が認識していない会話のルールが存在することに気がついて衝撃を受けるかもしれない。ルールや会話の傾向自体は記載されてみれば、「相手が「肯定」を返しやすい質問をする」など「いわれてみればそうだな」と思うものばかりで意外なものはないのだけど、あらためて意識すると、自分がいかに複雑なことを簡単そうにやっているのかがよくわかる。

    会話にはルールがある──『会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2023/04/12
  • 今まで意識したこともなかった領域に言葉で触れる方法を教えてくれる、期待の新進アメリカ作家のSF短篇集──『アメリカへようこそ』 - 基本読書

    アメリカへようこそ (角川書店単行) 作者:マシュー・ベイカー,田内 志文KADOKAWAAmazonこの『アメリカへようこそ』はアメリカの新進作家マシュー・ベイカーの初の短篇集の邦訳である。どうやらアメリカでは「注目すべきストーリーテラー10人」に選ばれるなど注目の作家のようだが僕は聞いたことがなく、SFの短篇集らしいという前情報だけで読み始めたのだけど、これが読んだらたまげてしまった。 扱っている題材はマインドアップロードから犯罪をおかすと記憶を消される世界の男の話まで奇想系まで様々なのだが、とにかくその筆致、語りは誰かに似ているようで似ていない、オリジナルなもので、他で体験できない心地よさが残る。「これまで意識したこともなかった領域に言葉で触れた」とでもいうような短篇群で、その良さがうまく表現できないのだが、だからこそたまげたのだ。単純明快でわかりやすい作品ではないが、その分、文の

    今まで意識したこともなかった領域に言葉で触れる方法を教えてくれる、期待の新進アメリカ作家のSF短篇集──『アメリカへようこそ』 - 基本読書
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    hachi 2023/04/07
  • 習慣はどうやって形成されるのか?──『習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか』 - 基本読書

    習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか みすず書房Amazonいつも通勤や通学につかっている道は、何も考えずにも動けるぐらいには「習慣」になっているものだ。むしろいつものルートとは別の方角に行く必要がある時、そのことを忘れて「習慣」に引っ張られたりする。われわれは家の鍵をしめる動作をする時に、いちいち右手でかばんの右ポケットから鍵を出して差し込み右に回し──などと意識することもなく、習慣的動作によってほとんどを無意識にこなしている。 もし、習慣を脳に形成する力がなかったら、生活は面倒くさいものになるだろう。一方で、タバコや薬物のように、悪い習慣が形成されてしまう危険性もある。こうした習慣は、脳のどのようなプロセスによって形成されるのか? また、その仕組がわかるのなら、習慣を変えることもできるのではないか? そうした問いが連続していくのが、書『習慣と脳の科学――どうしても変

    習慣はどうやって形成されるのか?──『習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか』 - 基本読書
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    hachi 2023/02/17
    "ドーパミンは快感に直接関わっておらず、関わっているのは「動機づけ」なのだ"
  • ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』 - 基本読書

    平和という名の廃墟 上 帝国という名の記憶 (ハヤカワ文庫SF) 作者:アーカディ マーティーン早川書房Amazonこの『平和という名の廃墟』は、前作『帝国という名の記憶』で長篇デビュー作ながらもヒューゴー賞を受賞したアーカディ・マーティンの第二作にして二部作の後篇となる。前作は書名に「帝国」と入っているように、宇宙をまたにかける銀河帝国と、その宮廷で繰り広げられる皇帝の跡継ぎ問題なども関わってくる陰謀劇を中心に描き出す、いわばスペース・ポリティカル・サスペンスとでもいう作品であった。 著者は大学でビザンツ帝国史の博士号を取得し、別の大学で都市計画の修士をとるなど専門的背景のある人物だが、まさにそうした専門性や知識を活かして、前作では宇宙帝国とその在り様を生き生きと、美しく描き出していた。宇宙帝国ならではの特殊な文化・概念の書き込み、帝国とそれが実質的に植民地支配した周辺諸国との微妙な力関

    ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2022/10/20
  • 『三体』三部作の裏側で起こってきたことに光を当てる、まさにこれが読みたかった! と思える公式スピンオフ──『三体X 観想之宙』 - 基本読書

    三体X 観想之宙 作者:宝樹早川書房Amazonこの『三体X』は、劉慈欣による中国SF最大の話題作である《三体》三部作の、宝樹による公式外伝(スピンオフ)である。公式外伝といっても種類はたくさんあるが、作が描き出すのは基的には『三体』の第三部で起こっていたことの裏側になる。 三体の第三部はそれまでの第二部とは異なって極めてスケールが大きくなったこともあって、小さなことは置いてけぼりに物語が進行していった。作(『三体X』)はそのあたりの拾われなかったSF設定を広げたり、キャラクタ間のありえたかもしれないやりとりを補完したりといった、二次創作的な色の強い作品となっている*1。扱い的にも正史の中に組み込まれているわけではなく、あくまでもパラレルワールドだ。 《三体》三部作は楽しんだけど二次創作はええかな〜という人もいるだろうし、僕も読み始める前はその気持ちがあったが、読み終えてみればそうも

    『三体』三部作の裏側で起こってきたことに光を当てる、まさにこれが読みたかった! と思える公式スピンオフ──『三体X 観想之宙』 - 基本読書
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    hachi 2022/07/15
  • 初心者から再読者まで、森博嗣の多様で自由な世界を示す10冊を紹介する! - 基本読書

    の雑誌に寄稿した「森博嗣の10冊」原稿を転載します。ちょこちょこブログ用に書き換えてます。あと、そんなにひねったラインナップにはなってないかと。強いていえば『スカイ・クロラ』が入ってないことぐらいかな。大好きな作品ですが、『ヴォイド〜』と迷ってこちらを選択しました。 はじめに 森博嗣は一九九六年にミステリィ作品『すべてがFになる』で第一回メフィスト賞を受賞してデビューし、その後破竹の勢いでシリーズ作品を刊行。デビュージャンルのミステリィの枠を超え、エッセイ、日記シリーズ、SF、幻想、絵、詩集、趣味の庭園鉄道やジャイロモノレールについて書かれたノンフィクションまで、数多のジャンル・テーマの作品を開拓し続けてきた。総作品数は文庫化などの重複を除いてさえも二〇〇を超える。そんな作家なので一〇冊の選定は困難を極めるのだが、今回はできるかぎり間口を広く、森博嗣の多様な側面を紹介してみたい。 ミス

    初心者から再読者まで、森博嗣の多様で自由な世界を示す10冊を紹介する! - 基本読書
    hachi
    hachi 2022/03/07
  • 謎の信号によって人類のDNAがハッキングされ、「終局」に至る様をノンフィクションとして描き出す、ファーストコンタクトSF──『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』 - 基本読書

    ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日 (竹書房文庫) 作者:キース・トーマス竹書房Amazonこの『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変』は、2023年に銀河系のはるか彼方から届いたパルスが人類にぶちあたり、そこから一部の人々が重力波を見ることができるようになったり、知的能力が向上したりといった、一種のアップデート、進化(誤用)が行われてしまった世界について描かれたファーストコンタクトSFである。 特徴的なのは、作はそうした状況を誰かの目を通してリアルタイムで体験していくのではなく、2023年からはじまった一連の騒動が終わり、「終局」を迎えたあとの2028年に刊行されたノンフィクションという体裁で進行していくところにある。このノンフィクションは、元大統領からジャーナリスト、研究者まで様々な立場の人間の証言を元に構成されていて、読み進めていくうちに、「終局」とは何を

    謎の信号によって人類のDNAがハッキングされ、「終局」に至る様をノンフィクションとして描き出す、ファーストコンタクトSF──『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』 - 基本読書
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    hachi 2021/11/09
  • ヒューゴー、ネビュラ、ローカスと主要SF賞を総なめにした、エモーショナルな往復書簡時間SF──『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 - 基本読書

    こうしてあなたたちは時間戦争に負ける (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:アマル・エル=モータル,マックス・グラッドストン早川書房Amazonこの『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』は、アマル・エル=モータル、マックス・グラッドスト二人の共作による、詩的な時間SFである。英語圏における小説の長さの基準的にはノヴェラ(中編)で、書も240ページほどとコンパクトだ。 エモエモ往復書簡時間SF 作がぱっと見で凄いのは、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、英国SF協会賞と賞的な評価が異様に高いところにある。賞の評価がどれほど高かろうが作品の中身の質の保証にはならないわけだけれども、それなりに期待して読み始めたら、これがたしかにおもしろかった。あらすじとしては、《エージェンシー》と《ガーデン》という二大勢力が時空の覇権をかけて争う──といった感じで、何の新鮮味もない。 だが、実際には

    ヒューゴー、ネビュラ、ローカスと主要SF賞を総なめにした、エモーショナルな往復書簡時間SF──『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 - 基本読書
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    hachi 2021/06/18
  • ケン・リュウによる、中国、日本、米国の歴史と文化を横断的に取り込んだ珠玉のSF短篇集──『宇宙の春』 - 基本読書

    宇宙の春 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:ケン リュウ発売日: 2021/03/17メディア: Kindle作『宇宙の春』は、中国と米国、作家と翻訳家を股にかけて活躍する作家ケン・リュウの日オリジナル短篇集第四弾である。独立した話の短篇集なので、もちろん書から読んでも問題ない。第二弾、第三弾の短篇集が分厚かったことの反動か、今回は300p全10編とコンパクトになったが、その分シンプルに質の高い作品が揃っている。第一〜から第四冊までを並べた時に、第一と並ぶぐらい好きな巻となった。 作品の発表年としては2011〜20年のものが揃っている。全体をざっくり紹介しておくと、詩的に宇宙の壮大なスケールを歌い上げるような作品もあれば(「宇宙の春」)、未来のシミュレーションを行うSFプロトタイピング的な作品あり(「充実した時間」)、731部隊を「過去に起こったことを一度だけ実体験できる」特

    ケン・リュウによる、中国、日本、米国の歴史と文化を横断的に取り込んだ珠玉のSF短篇集──『宇宙の春』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2021/04/02
  • この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書

    サハリン島 作者:エドゥアルド・ヴェルキン発売日: 2020/12/22メディア: 単行このエドゥアルド・ヴェルキン『サハリン島』は、ロシアのメディアで、この10年で最高のロシアSFと評されているSF長篇である。「この10年で最高」というのは、気軽に使うにはリスキィな褒め言葉だ。何しろ、これでつまらなかったら他のこの期間に発表されたロシアSFはいったいなんなんだ、という話になってしまう。 なので、話半分というか……、勢い余って言い過ぎちゃった人がどっかのメディアにいたのかな? ぐらいの心持ちで読み始めてみたのだけれども、いやはや……。これはたしかに、この10年で最高のロシアSFかどうかはわからないがめちゃくちゃおもしろい! 表面的な題材だけ抜き出してみれば、ゾンビ的な感染症に第三次世界大戦による終末世界化、変容してしまった世界を二人の男女が旅をするという、ありきたりなポストアポカリプス物

    この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書
    hachi
    hachi 2020/12/31
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