映画『はやぶさ・遥かなる帰還』の中で、小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネジャーを演じた渡辺謙は、強力なリーダーシップがいかなるものかを平静に描き出した。モデルとなった「はやぶさ」のミッションを成功させた実在の宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)教授、川口淳一郎の指揮官としての手腕は、日本人の魂の反映だと渡辺は感じていた。 「『はやぶさ』が帰還するまでの7年間、川口先生が決して手放さなかったマインドがある。それは忍耐と意地です。予期せぬさまざまな苦難も諦めずに乗り越えた胆力。そして、過去の失敗さえも糧にして、何としても『はやぶさ』を地球へ返すんだと思い続けた頑固さ。宇宙工学博士には似つかわしくないですが、最高の技術力という土台の上には、こうした気質があった。僕は、そのことに心から感激しました」 科学者と俳優という、物事の尺度が違う仕事に就く2人は、互いに言葉を交