「生きる意味や価値を考え始めると、われわれは気がおかしくなってしまう。生きる意味など、存在しないのだから」(ジークムント・フロイト) 書店に足をはこべば、「自分らしく働く」「やりがいのある仕事」「自己実現の方法」といったテーマの本がたくさん並んでいます。現代に生きる多くの人が、働くことの意味を探し求めていることのあらわれでしょう。 しかし、病気や事故で「働くこと」自体が難しくなることを想像したことがある人は少ないのでは? 今回取材したのは、書籍やラジオなどを通して文学作品を紹介する「文学紹介者」として活動し、『絶望名人カフカの人生論』など多くの著書を出版してきた頭木弘樹さん。2020年に出版した著書『食べることと出すこと』では、大学3年生のときに発病した潰瘍性大腸炎(※)によって食事も排せつも自分の意思で行うことが困難になり、人生が激変してしまった経験が素直な筆致でつづられています。 ※潰