経済学部の学生でケインズを知らない者はいないだろうが、シュンペーターの本を読んだ学生は少ないだろう。しかしグーグルで検索してみると、Keynesが1580万件なのに対して、Schumpeterは1730万件ある。財政政策がすっかり信用を失う一方、イノベーションや企業家精神の重要性が注目される今、シュンペーターが注目されるのは当然かもしれない。 本書は、シュンペーターの波乱万丈の人生と、その学問を丹念にあとづけたものだ。特に大恐慌の中で、主著『資本主義・社会主義・民主主義』を書く前後の状況が興味深い。当時、資本主義には自動調整力がなく、政府が経済を管理しなければだめだという意見が支配的だった。それに対してシュンペーターは、資本主義の本質は企業家精神にあり、政府はイノベーションを作り出せないと論じた。 いま読むと当たり前のことを言っているようだが、当時アメリカのインテリの間ではマルクスの影