前回のBOOKSで『現代社会のカルト運動――ネオゲルマン異教(S・V・シューヌアバイン著)』(以下、『現代社会のカルト運動』と略記。)をとりあげた際、ドイツのエコロジー運動、とりわけ、[緑の党]について、同党がカルト宗教、ナチズムを本流とするかのような傾向を強調しすぎるきらいがあった。[現代ドイツの緑の運動=カルト集団]と誤読される心配も否めなかった。ドイツのエコロジー運動を歴史的かつ総括的に見直す必要を感じた。そのことが、今回本書を取り上げた動機の1つである。 70年代から1980年の「緑の人びと」の党結成に至るまでのさまざまな社会運動の発生は、多くの人びとにとってはやはり思いがけないものであったが、ともかく歴史家にとってはそれほど理解しにくいわけではない。19世紀から20世紀に至るドイツの産業化の過程を長い目で観察してみると、近代産業社会は幾度となく深刻な危機を迎え、そのあとに個々の社