たとえば1000万年後、宇宙人の地質学者が地球にやってくるとしよう。そのとき彼らは、地層の中に人類の痕跡を見つけられるだろうか。ジュラ紀や白亜紀が「恐竜の時代」と呼ばれるように、「ホモサピエンスの時代(人類の時代)」と称される地質学的な時代区分は生まれるのだろうか? この「人類の時代」に対して、オゾンホール研究で1995年にノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェン氏は、「アントロポセン(Anthropocene)」という新たな造語を提唱している。 人類の繁栄がどれほど長く続くのかは分からない。しかしクルッツェン氏は、1つだけはっきりしている事実として、単一の生物種が地上の形態や化学物質の分布、生物学的な環境を急激に変え、しかもその事実を自覚しているという事態は、約47億年の地球の歴史の中でも過去に例がないと指摘する。