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ブックマーク / magazine-k.jp (5)

  • 聖なるテクノロジー〜『テクニウム』の彼方へ

    60年代の米西海岸のカウンターカルチャー全盛期に、トム・ウルフの『クール・クールLSD交感テスト』の主人公ケン・キージーがスチュアート・ブランドに連れられて、マウスの発明者として有名なダグラス・エンゲルバートが開発していたNLS(oN Line System)というシステムを見学しに来たときのことだった。 当時エンゲルバートは、コンピューターとネットワークを駆使して、人間の能力を高める研究をしていた。キージーはメリー・プランクスターズ時代にマリファナ所持で逮捕されて数年経っており、オレゴンの酪農牧場に引退しようとしている最中だった。デモを見たキージーは驚きのあまり眼を見開いたまま、「これこそ、LSDの次に来るものだ」と言うと、大きくため息をついた。コンピューターが作り出す情報のバーチャル世界に圧倒され、これが脳を破壊してしまうドラッグを使わなくても、LSDのように人間の意識を高める何かであ

  • 読書という〈遅い文化〉を守るために投じた一石――幻戯書房・田尻勉さんに聞く

    今年の4月2日、ある出版社の公式ブログにこのような記事が投稿され、大きな話題になった。 出版流通の健全化に向けて 小社の刊行物をご購読いただきありがとうございます。 日のほとんどの出版社は、読者の方々への販売を取次会社(卸売会社)と書店(従来の売り場をお持ちの書店、インターネット書店あわせて)に、販売面で助けられています。ほとんどの読者のみなさまは書店で小社のをお求めいただいているものと存じます。昨今、出版物全体の販売が落ち込むなか、書店の経営も厳しくなり、小社のを店頭においていただける書店も限られております。すべての書店に小社のが配されることはむずかしいのが現状です。しかし、手にとってお求めいただく機会を小社としては維持していただきたいと思っております。ただのコンテンツとしてだけでなく、手にしていただいた時の手ざわり、装幀も、書店店頭で、ご覧いただきたいと思っております。 そう

    読書という〈遅い文化〉を守るために投じた一石――幻戯書房・田尻勉さんに聞く
  • 民主主義を支える場としての図書館

    図書館」という言葉から最初に連想するものはなんですかと問われたなら、の貸出、新聞や雑誌の閲覧、調べもの、受験勉強……といったあたりを思い浮かべる人が多いのではないか。もしそこに「民主主義」という言葉が加わったら、はたして違和感はあるだろうか。 図書館を舞台にしたドキュメンタリー フレデリック・ワイズマン監督の映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を、先月の終わりに試写会で観た(5月18日より東京・岩波ホールほか全国で順次公開)。約3時間半にわたる超長尺のドキュメンタリー作品であるにもかかわらず、不思議なことにいつまでも観つづけていたい気持ちにさせられた。その理由はこの映画のテーマと深く関わっている。 『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』の主題は、図書館を題材にしていることから想像されがちな「」や「読書」ではない。あえてキーワードを挙げるとすれば、「コミュニティ」「文

    民主主義を支える場としての図書館
  • ジャーナリスト・惠谷治さんの死と蔵書大頒布会

    引っ越したアパートの床が蔵書で埋まってしまった——というシーンから始まるエッセイ『で床は抜けるのか』をサイトに掲載したのが2012年。それ以来、蔵書をめぐるルポを書き続け、2015年には同名で書籍化、2018年には文庫化された。この連載や書籍の印象から、僕のことを“蔵書問題ライター”だと思っている方は多いかもしれない。 しかし、それは僕の一面でしかない。かつて「日」だった国や地域、日の国境の島々を回る、旅系・辺境系のライターとして僕のことを認識している読者もいるだろうし、僕自身、どちらかというと、そのように自負している。 今回の記事は、その双方の要素が入り交じっている。旅系・辺境系ライターとしての僕が最も憧れるジャーナリストの死とその蔵書の行方について記してみたい。 惠谷治さんはロシア革命を成し遂げたレーニンさながらの強面な風貌と、細かな分析による北朝鮮論評、アフリカやアフガニスタ

    ジャーナリスト・惠谷治さんの死と蔵書大頒布会
  • サイファーパンクの爆弾工房

    ウィキリークスの「ケーブルゲート」事件は、かつてないほどの興奮と関心に満ち満ちたハッカースキャンダルだ(ウィキリークスのミラーサイトはここなど)。私はその手の話についてはよく書いている方だし、ネット上にはこの現在進行形の一大ドラマを根掘り葉掘り知りつくそうと躍起になっている知り合いが山ほどいる。だから、自分がこのきわめてニュース性の高い出来事を前にして、まるでエドガー・アラン・ポー的な憂にも似た、こんなに寒々しくげんなりした気持ちでいっぱいになるのはなぜなのかを説明するには、まだしばらく時間がかかりそうだ。 だが、この気分は誤魔化しようがない。 思うにこの悪寒の一部は、この事態が生じるまでにうんざりするほど時間を要したことであるに違いない。ついに——これほどの歳月が経った挙げ句に——サイファーパンクの古びた爆弾工房の自家製ニトロが火を噴くに至ったわけだ。そう、他でもないあの“サイファーパ

    サイファーパンクの爆弾工房
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