すでにあちこちで高い評価を受けているけど、改めてこれは名著だと思う。北朝鮮問題について左派の立場から書かれたものとしては、全くアプローチは異なるけれど、脱北者の問題を扱った石丸次郎氏のルポルタージュ、『北のサラムたちasin:4901873016』と相通じるものを感じた。あえて言うなら、この二つの書物は、あくまでも「事実」の徹底的な掘り起こしを通じて、政治的対立のなかで翻弄される最も弱い立場の人々に最大限寄り添おうという姿勢において共通している。 在日朝鮮人の「帰国事業」は映画『パッチギ!』のモチーフの一つにもなっているが、その成立過程は今まであまりに謎につつまれてきた。一般的な理解としては北朝鮮と朝鮮総連ががっちり手を組んだプロパガンダであったというのが定着していると思うが、近年では日本赤十字と日本政府が一種の「厄介払い」として事業に積極的に関与する、という側面があったことも指摘されるこ