対イラク戦争に際して、国連安保理におけるドイツ、フランス、そしてロシアがアメリカの参戦論に対して揃って反対票を投じたことは記憶に新しい。そして、残念なことに、わが国はいつものようにあわてて賛成の態度表明をしたことも。あらためてその存在感を示したシラク仏大統領だったが、彼の強硬とも言える姿勢を支えていたのが、エマニュエル・トッドの『帝国以後』における世界情勢の分析であったことをはじめて知った。 9.11のテロ事件以来、顕著になったアメリカの極度に単独主義的な対外軍事行動に対して多くの論者が批判を繰り返してきた。ノーム・チョムスキーに代表される反アメリカ的な論者に限らず、それらに共通する理解の基盤には「帝国」化する軍事的経済的超大国アメリカの姿がある。しかるに、トッドは言う。「世界を支配する力がないために、アメリカは世界が自律的に存在することを否定し、世界中の諸社会が多様であることを否定するの