軍事を軸にして中世以降のヨーロッパ史を概観する一冊。約1000年間について、単なる戦争史としてではなく、社会の変化と関連付けながら記述している。 著者がイギリス人だからなのか、ナポレオンやプロイセンを俯瞰して見ていたり、海軍力についての記述に一定の割合を割いているのが効いているように思う。大英帝国の盛衰についても(ややアイロニカルに)距離を置いているように見える。 これを文庫版230ページ強に収めた力業がすごい。逆に、このくらいに収めないと散漫になる気もする。 とはいえ、そのために前提知識を必要とする面はある。私は中世ヨーロッパに関する記述で特にそれを感じた。まあ仕方ない。 前提知識なのかわからないが、文中で2回、ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』の内容が引かれているのでびっくりした。脚注もなく、さも知ってて当然のように登場するのだが、イギリス人にとってはそれほどの常識なわけ?