「わが社の技術や知的財産は,利益や企業価値の向上にどの程度貢献しているのか」,「莫大な研究開発投資を行ってきたわが社の技術・知的財産は,本当に増え強化されているのか」。こうした自社の取り組みに対する素朴な疑問に対して適切に答えられるビジネス・パーソンは,現状で一体どれだけいるだろうか。 2003年に知的財産戦略本部が設置されて以来,係争を含む様々な知的財産に関連するニュースが報道されてきた中で,日本の企業経営における知的財産に関した実務的な取り組みは,変化のきざしを見せている。しかし,まだ最初の一歩を踏み出したばかりであり,これから長い道のりを進んでいく必要がある。本稿は,広い意味での知的財産マネジメントが必要とされている背景と現状,さらに将来,企業価値の向上を目指す中で実践するべき具体的な課題を取り上げる。なお本小論における分析は,すべて公表情報に基づく私見であり,監査法人トーマツの公
経済産業省知的財産政策室は,知的財産人材に必要なスキル(知識,技能の範囲とレベル)の標準化策定に関する委託調査の最終報告書を公表した(関連ページ)。これは「知財スキルの標準化に関する研究会」(委員長:金沢工業大学院教授・杉光一成氏)が取りまとめたもので,特に企業における知財人材のスキル標準化を目的として,2005年9月から2006年3月までに有識者による意見交換や企業へのヒアリングなどを通じて実施した(関連記事)。 同報告書は,(1)企業における知財業務とその機能に関する全体像,(2)各機能を担う人材のスキルとレベル化,それぞれを「知財スキル標準」のサンプル・モデルとして提示した上で,実務的に知財スキル標準を設定・定義する上での課題を指摘している。 知的財産政策室は「今回の調査結果に基づいて,2006年度に具体的な知財人材スキル標準の策定作業に着手する」(同室長・由良英雄氏)としており
著作権制度の見直しは「デジタル化」,「経済的側面」が論点に 文化審議会著作権分科会・法制問題小委員会が報告書を取りまとめ 文化庁が主催する文化審議会著作権分科会・法制問題小委員会(主査:東京大学教授・中山信弘氏)は,将来的な著作権制度の見直しに向けた報告書を2005年12月1日に取りまとめた。同委員会は,緊急に検討を要する課題として,(1)特許審査手続きや薬事行政,図書館や学校教育機関などにおける著作権の権利範囲,(2)私的録音録画補償金制度,を挙げ,さらにデジタル化時代に対応した著作権のあり方などに関する課題が示された。ほとんどの課題が,デジタル化による複製に対する権利範囲の見直しを主要なイシューにしており,著作権法の将来的な改正に向けた論点の提起として注目すべき内容になっている。 表1:文化審議会著作権分科会・法制問題小委員会報告書の要旨
政府が策定した「知的財産推進計画2005」が指摘するように,放送・出版などエンターテインメント産業に関わる「経済的著作権」などは,特別法で保護する必要がある。ただし,そもそも著作権は,特許など他の産業上の財産権とは性格が異なるため,こうした基本的な部分では,例えばベルヌ条約や「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定)」などとの関係から,国際的な整合性をいかに図るかという問題が生じる。これに関し,日本の産業振興を優先して考えるべきであり,他国との協議などを通じて実現できるだろう。 米国は,「デジタル・ミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Acts)」注)を2000年10月に施行した。この制度は,デジタル化された情報の著作権保護やその取り扱いを規定し,コピー防止機能などの著作権保護対策の回避や無力化する可能性のあるプログラムの公表を禁じ
世界トップクラスの「デジタル・コンテンツ大国」を目指す 政府の知的財産戦略本部・コンテンツ専門調査会が施策の方向性を検討 政府の知的財産戦略本部が設置するコンテンツ専門調査会(座長:ウシオ電機会長・牛尾治朗氏),デジタル・コンテンツ・ワーキング・グループが2005年11月1日に第1回会合を開催し,(a)デジタル・コンテンツに関するユーザーの利便性向上,(b)デジタル・コンテンツ産業の保護・育成を今後取り組むべき課題として提示した。同ワーキング・グループは,日本を世界トップクラスのデジタル・コンテンツ大国にすることを目指して設置されたもので,(1)ユーザーが手軽に豊富なコンテンツを楽しめる「ユーザー大国」,(2)クリエータが能力を十分に発揮できる「クリエータ大国」,(3)2001年に2兆円規模だったデジタル・コンテンツ市場を2010年に7兆円まで拡大する「ビジネス大国」,を基本目標として
「特許をはじめとする知的財産権に関する処理の迅速化には,無効な権利が混入するなど権利の質が低下するリスクが伴う」。一橋大学大学院教授の土肥一史氏は,このように警鐘を鳴らし,知財権の質を保つ制度を整備することの重要性を強く訴えた。 本記事は,日本弁理士会・中央知的財産研究所が2005年7月1日に開催した公開フォーラムにおける,同氏の講演の要約である。 特許審査に求められるスピードと質の両立 「知的財産推進計画2005」は,「2013年に世界最高水準の迅速で的確な特許審査を実現する」とうたっている。審査におけるスピードと質の両方の向上が必要になるが,両者の向上は相反する関係にある。現実的には,審査の速さを重視する結果,権利としての特許の質が低下することへの懸念がある。 具体的には,本来は無効となるべき特許が権利を付与されて成立することが想定される。さらに,昨今の知的財産に関する権利行使が
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