近年日本では「ジョブ型」の雇用管理や賃金制度が流行語となっているが,日本の歴史上雇用管理や労働政策において「職務」が注目されたのは1950年代から1960年代に至る時期であり,新しいテーマではない。この時期,経営者団体は年功的な生活給から職務給への移行を唱道していたし,政府も累次の経済計画等で同一労働同一賃金に基づく職務給や企業を超えた労働移動を推進しようとしていた。ところが,1970年代から1980年代には,職務よりもヒトに着目する日本的な雇用管理が賞賛されるようになり,賃金制度もヒトの能力に基づく(とされる)職能給が普及し,年功的な処遇が維持された。1990年代以降は,企業側が中高年層の過度な高賃金を是正するため成果主義を唱道する一方,非正規労働者の過度な低賃金を是正するための同一労働同一賃金が課題となり,日本経済の不振も相まって,半世紀ぶりに再び「職務」が注目されるようになっている。