対人サービス業の割合が拡大した現代社会では,労働者が外見や容姿を整えることは職務を遂行するうえで重要な要素の一つとみなされることがある。このような中で「美的労働」は,職務上必要とされる服装や化粧,立ち居振る舞いといった自己呈示の総称として提唱された。美的労働は労働者自身が容姿や言動を整えることを指すだけでなく,雇用者による労働者の外見やふるまいの統制なども示すという点で重要である。 こうした背景から,本調査は美的労働の存在や社会階層との関係を統計的に明らかにすることを目的に,美的労働研究プロジェクトの一環として実施された。