『デクステリティ』 巧みさとその発達 2006.8.5. 本書『デクステリティ』が世に出るまでには、政治と民族の問題にかかわるドラマがあった。 「本書が書かれたのは、約半世紀前。ソビエト社会主義共和国連邦をスターリンが統治していた時代だ」(訳者あとがき) ベルンシュタインが一般向けの科学書としての本書を執筆していたころ、ベルンシュタインは気鋭の生理学者だった。1947年には『動作の構築について』という本を出版し、「動作障害の治療に携わる外科医たち」から高い評価を得たことで、スターリン賞という国家的な賞を受けた。 ところが、ベルンシュタインがパブロフの条件反射説を批判したこと、ソ連国内に反ユダヤ主義の風潮広がっていたことが重なり、ユダヤ人であったベルンシュタインは「パブロフを貶める非国民的研究者として共産党の機関誌「プラウダ」誌上で公然と批判される」ようになってしまう。 ベルンシュ