<ひとことで言えば「重喜劇」──高潔なのに卑小、賢いのにバカな主人公は人生にもがきながらどんどん堕(お)ちる。それだけでなく登場人物のほとんどがクズだ。でも映画はそれを肯定する> これだけ連載が続いた今頃になって書くことではないけれど、どちらかといえば邦画はそれほど観ない。これまでの生涯で観た映画の量としては、圧倒的に洋画が多いはずだ。 でもせっかくこの連載を与えられたのだから、今はできるだけ観るようにしているし、古い記憶を必死に振り絞って書いてもいる。 でも記憶を振り絞ろうにも、邦画が黄金期だった昭和20年代から30年代の映画は、(時おり名画座で特集上映されていた)黒澤明や小津安二郎、成瀬巳喜男などは別にして、ほとんど観ていない。見逃している面白い映画はたくさんあるはずだ。 そう考えて、骨の髄からの映画フリークである脚本家・監督の井上淳一に相談した。 何かおすすめある? ああ、いくらでも
![クズは人の基本型? 姑息で卑小な人間を『競輪上人行状記』は否定しない](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/5d965905cc054820fba216d145d4cc14b8e4a52d/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.newsweekjapan.jp%2Fmori%2Fassets_c%2F2022%2F03%2Fmagmori220325_top-thumb-720x480-396564.jpg)