ロンドンの政治顧問は夜、ドラァグクイーン「ナンシー」になるスコットランド国民党の最高ランクの政治顧問と、ロンドンで最も愛されるドラァグクイーン。どうやればひとりの人間が、このふたつになれるのだろうか? ロンドン南部、クラパムの狭苦しい白いベッドルームで、スコットランド国民党(SNP)で最も信頼される政治顧問のひとりが、口をとがらせながらブラシで深紅の頬紅を広げる。次にアイシャドーを塗り、眉にさまざまな色のアーチを重ねていく。だが睫毛には何もつけない。 「私はスニーカーを履いたドラァグクイーン。付け睫毛をつける必要なんてない」と彼は言う。 ネイサン・スパーリングは26歳。身長は195センチあり、お世辞にもスマートな体型とは言い難い。「僕のぜい肉は元気すぎるんだ」と皮肉の聞いたジョークを飛ばす。 彼の声はソフトでよく通り、スコットランド東部特有のファイフ訛りがチューバのような快活さで響く。政治