「善からは善のみが、悪からは悪のみが生まれるというのは、人間の行為にとって決して真実ではない」。ドイツの社会学者、ウェーバーはこう指摘し、さらにこう戒める。「これが見抜けないような人間は、政治のイロハもわきまえない未熟児である」。名言であり、常識でもある。 ▼米国はこれまで北朝鮮という「だだっ子」のわがままに対し、善意で応じる失敗を重ねてきた。核開発凍結と引き換えの軽水炉建設への資金供与を主導し、核計画申告と抱き合わせでテロ支援国家指定を解除するなど、北朝鮮にあめを与えては裏切られた。 ▼揚げ句が、6日の4回目の核実験である。政治任用が徹底した米国では、政権が代わるたびに閣僚だけでなく幹部官僚も多くが入れ替わる。「北朝鮮についても、毎回初歩から説明しなくてはならない」。こんなぼやきを以前、外務官僚から聞いた。